
ウェブ活用が大きなアドバンテージだった時代は過去のものになった。ウェブを活用する多くの企業が“価格競争の泥沼”に引きずり込まれつつある。しかし明確なビジネス戦略に基づいてウェブ活用を見直せば、価格競争を回避することも決して不可能ではない。
このアプローチによって収益拡大への取り組みを進めているのが、AV機器販売・ホームシアター設計・施工の株式会社アバックだ。同社は、ホームシアター業界の老舗企業として知られている。
「ホームシアターは北米が先進市場なのですが、私どもは毎年北米で行われる展示会『CEDIA』を日本に紹介するなど、常に最先端のシアターをお客様に提案しています」というのは、株式会社アバック 通販営業部 部長 兼 通販センター長の加藤政弘氏。1997年にはインターネット通販にもいち早く着手しており、現在では通販のうち6割がウェブ経由になっているという。「最近では価格比較の上、最も安いサイトにお客様が流れる傾向があります。しかし私どもは単なる“安売り店”にはなりたくない。お客様に十分ご満足いただける、価値あるホームシアターをご提案し続けたいのです」。
そのための取り組みのひとつが、機器販売から「インストールビジネス」へと軸足を移すことだった。これは顧客の要望を聞いた上で機器をアレンジし、それらの設置や調整までカバーするというもの。アバックでは5年前からこのビジネスを強化しており、現在では全売り上げの2割を占めるまでに成長させている。

ここで大きな課題になったのが、通販の6割を占めるウェブをいかにしてインストールビジネスの武器にするかだった。
「インストールものはお客様に細かい商品説明が必要な上、お客様のご要望も聞き出さなければなりません」というのは、株式会社アバック 情報システム部 部長の詫摩武彦氏。アバックではウェブ上で詳細な機器情報を提供しているが、インストールビジネスではさらにきめ細かい対話が必要になるのだという。「ウェブは情報提供の手段としては優れていますが、お客様と対話する手段としては不十分な点もあるのです」。
そこでアバックは2007年6月から「ウェブdeコール」の活用を開始する。最初はホームシアターの情報提供サイトに設置。その後、予約サイトやウェブショップ、オーディオ専門サイトへと活用領域を拡大しているのだ。
「導入当初は社内の反応が大きかったですね」と加藤氏。自分で「ウェブdeコール」で通話を行い、「これは面白い」というスタッフが多かったという。その後、顧客による利用も着実に増えていった。「お客様もこの仕組みを面白がってくださいます。なかにはボタンをクリックして電話がかかってくることに、驚く方もいらっしゃいました」。
その一方で詫摩氏は「どのページを見てコールされたのか、フリーダイヤルではわからない情報が得られる点も大きなメリット」だと指摘する。導入は既存のHTMLファイルに「ウェブdeコール」用のタグを数行追加するだけ。2〜3時間ですべての作業が終わったという。「お客様とのコミュニケーション手段にはメールもありますが、細かい内容は直接お話しした方が早い。お客様が気軽に電話をかけられる環境を整えるのは、ネットビジネスでも重要なポイントになると思います」。
アバックのケースを見ると、高付加価値ビジネスへのシフトに電話活用が有効であることがわかる。しかし「ウェブdeコール」が役立つのはそれだけではない。他にも様々な可能性が考えられる。
そのひとつとして挙げたいのが、商品購買やサービス申し込みサイトの“離脱防止”である。利用者の入力項目が多いサイトは、途中で面倒になって“離脱”するケースが少なくない。そこで各ページに「ウェブdeコール」のボタンを配置し、ボタンを押したらコールセンターなどに直接つながるようにするのである。JavaScriptと連携させれば、申し込みフォームを途中でクローズしたときに、自動的に「ウェブdeコール」の画面をポップアップさせることも可能だ。
「ウェブdeコール」なら「どのページからコールされたのか」のログも残るので、ウェブページの効果測定にも活用できる。ウェブの構成や情報内容について、利用者から直接話を聞く手段としても利用できるだろう。メールマガジンを配信している場合には、HTMLメールに「ウェブdeコール」のボタンを貼り付けることも可能だ。この手法を活用すれば、顧客との対話のハードルをさらに下げることができる。
このように「ウェブdeコール」の活用は、実に幅広い可能性を秘めている。アイデア次第で様々な活用方法が考えられるはずだ。