header
button
button
<略歴>
1963年千葉県柏市生まれ。88年北海道大学工学部卒、90年北海道大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了。同年外資系コンサルティング会社入社、現在、アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス パートナーとして、CRM関連プロジェクトを中心にコンサルティング業務を担当。

 CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)は、簡単に言えば顧客とのつき合い方をどうするかということだ。アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービスでCRMサービスを担当する浅野智也(42歳)は、このつき合い方が急速に進化するITによって、ひと昔前とはかなり変わってきていると指摘する。

 「以前ならばCRMは営業や販売の部門が推進の中心でしたが、最近ではお客様と一緒にモノを作ろうと、マーケティング部門との連携が活発になっています」

 例えば、ある自動車メーカーでは顧客参加型の商品開発を行ったという。約40万人の既存顧客に開発参加を募集し、様々な意見を聞いた。意見が反映されていくと、顧客の新車に対する愛着もわいてくるものだ。その結果、約3万件もの事前注文を獲得し、宣伝費も抑制できたという。また、口コミサイトを利用した新商品のマーケティングも盛んになっているという。「インターネットによって、お客様の考えていることがダイレクトに、瞬時に、大量に、そして安価に得られるようになっています。そこで企業では、こうしたお客様の生の声を事業戦略にどう取り込むかが、より重要になってきているのです」(浅野)

 どの企業にとっても、より顧客志向の商品やサービスを作り出していくことが従来にも増して求められる時代だ。顧客が真に必要とし、他社が真似できない独自の発想が必要となり、新たな発想を提案してくれる貢献者の登場が期待される。

 浅野は、その貢献者の中でも重要となるのはやはり顧客だと断言する。顧客とのつき合い方を変えることによって、企業のイノベーションを支えるより強い味方の一人になるというわけだ。

 「世界中のトップ企業のCEOたちは、商品やサービスに留まらず、ビジネスモデルのイノベーションが今後はより重要な経営課題になると考えています。そして、そのイノベーションは社内から発生するのではなく、外部との連携や協業によって生まれると見ているのです。

 つまり、ビジネスパートナーやお客様などといった社外とのコラボレーション能力を高めることが、これからのビジネスパーソンには、より一層求められるのです。CRMについても、こうした外部とのパートナリングをいかに進めていくかがテーマになっていくと思います」

 冒頭ではCRMのテーマがマーケティング連携に移ってきたという話を聞いた。だが、先進的な企業はさらに先を走っており、今後は外部と協力し、従来にないビジネスモデルを築くことにCRMが活用されるという。CRMは企業戦略の根幹に関わる新しい段階を迎えていくというわけだ。

 浅野は、CRMのテーマの変遷を以下の4つの段階に分けて説明する。第1段階は顧客接点機能の強化が中心のテーマ。コールセンターの効率化やWEB構築が盛んに宣伝された時代だ。第2段階は、チャネルミックスモデルの実現がテーマ。WEB、電話、営業といったチャネルをミックスさせて、顧客の満足度向上や営業力強化、コスト削減などを実践していった時代だ。そして、第3段階がマーケティング連携。顧客参加型商品開発やネットコミュニティとの連携が試みられているのである。さらに第4段階は、新バリューチェーンの構築やさらには外部企業とのサービス会社設立なども視野に入れた外部とのパートナリングの時代になるという。

 「企業によって、どの段階をテーマにしているかは、かなり差があります。また、『CRMを実行している』といっても、お客様の情報をうまく吸い上げ、それが必要な部署にきちんと伝わる仕組みができているかとなると、まだ達成できていない企業が少なくありません」(浅野)

 CRMのテーマがどの段階であろうと、顧客の情報を滞留させず、売上増や新製品開発、そして新しいイノベーションの創造など企業価値を高めることに、CRMを活用するという意識を徹底させることが、従業員一人一人に求められているのだ。

 「最近のお客様は製品に関する様々な知識や情報を得ており、"プロ化"しています。ビジネスパーソンはこれに負けない知識をつけることは言うに及ばず、さらにお客様の一歩先を行くようにしなければなりません。お客様とのいい意味での競争がいよいよ本格化しているのです」

(敬称略)



当サイトの内容・画像等の無断コピー・転載をお断りします。
Copyright(c) Nikkei Business Publications Inc. 2002-2006