どのような組織であれ、人によって構成されている以上、リーダーの力次第によって、そのパフォーマンスは大きく変化する。 それでは、次世代リーダーには何が求められるのだろうか。 こうした問いに対する回答として開催されたのが、「新春! 次世代ビジネスリーダーフォーラム」だ。 このフォーラムではリンクアンドモチベーションの小笹芳央氏、サイバーエージェントの藤田晋氏をはじめ、第一線で活躍するビジネスリーダーを迎え、チーム力を向上するための情報共有やモチベーションアップなどについて様々な講演が行われた。 ここではその内容について紹介する。

ビジネスリーダーに求められる真の「リーダーシップ」とは一体何か。企業の組織変革コンサルティングを展開するリンクアンドモチベーション代表取締役社長・小笹芳央氏は、基調講演の中で、リーダーの条件とモチベーションマネジメントの重要性について語った。
「リーダーシップとは、(1)ある目的に向けて、(2)人々に影響を与え、(3)その実現に導く行為、のことです」。講演の冒頭、リンクアンドモチベーションの小笹芳央氏は、リーダーシップを明確に定義した。
小笹氏によれば、「(1)ある目的に向けて」とは、明確にビジョンを示し、未来構想図を語ることだという。「迷っているリーダーの下で100%のエネルギーを捧げることはできない。したがって、ビジョンを持ち、語り続けることがリーダーの最低条件です」
とはいうものの、考え方も感じ方も違うメンバーを、1つの目的に向けて束ねることは容易ではない。そこで、「(2)人々に影響を与え」られるかどうかが、次の問題となる。
「メンバーに影響力のあるリーダーを選出すれば、影響力の使われ方次第で、偉業を成し遂げることも不可能ではない。リーダーシップは、最終的には“影響力”というキーワードに突き当たるのです」
しかし、やみくもに影響力を行使しても人心をまとめることはできない。なぜなら、仕事に対する人の動機づけは一様ではないからだ。そこで講演では、自分のモチベーション特性を知るためのエクササイズが行われた。小笹氏は3つの質問を聴衆に問いかけ、回答によって以下の4つのグループに分類した。
「達成支配欲求」が強いグループは“勝/負”や“敵/味方”といったキーワードに反応し、「論理探求欲求」が高いグループは“真/偽”、“優/劣”等にモチベーションを刺激される。「審美創造欲求」が高いグループは“美/醜”や“好/嫌”といった動機で動き、「貢献調停欲求」が高いグループは“善/ 悪”や“愛/憎”等に反応するチームワーク重視型だという。
「このように、リーダーは様々なタイプの人々に影響を与えなければならない。人それぞれに動機づけされるポイントが違うため、それぞれのモチベーション特性に合ったマネジメントが必要となるのです」
だが、どれほど壮大なビジョンを描き、影響力を行使したとしても、成果を出せなければリーダーの存在意義はないに等しい。では、ビジョンを「(3)実現に導く」ためにはどうすればいいのか。キーワードは、「変えられるものにエネルギーを集中すること」だと、小笹氏は話す。
「できることに集中し、変えられることにエネルギーを注ぐ。このスタンスをどれだけ持てるかが、成果を出せるかどうかに大きく関わってきます」
「思考」や「行動」は自分次第で自由自在に変えられるが、「感情」や「生理反応」を変えることは難しい。だからこそ、考え方や行動を変えるよう努力することが大切だと小笹氏は話す。
「我々は他人をコントロールすることはできない。自分を変えることはできるが、他人は変えられない。他人を変えるためには、自分を変えるしかないのです」
「他人」や「感情」「生理反応」、そして「過去」は変えられないが、「自分」や「思考」「行動」、そして「未来」は変えることができる。
「変えられないものに溺れて足踏みしてはいけない。変えられるものに粛々とエネルギーを集中させてください」と、小笹氏は話し、降壇した。

次世代ビジネスリーダーが求められるスキルの1つに、有効なアイデアを生み出すチームマネジメントが挙げられる。そのためには、活発な議論を通じて「知的交配」を起こすための技術が必要となる。 この点について、ワークショップも交えながら、アクティブラーニング代表取締役社長・羽根拓也氏が講演を行った。
「学ぶ技術を習得している人はどんどん伸びていく。成長加速化のポイントとは、『なんとなく』成長している状態を可視化できるかどうかにかかっています」
アクティブラーニング代表取締役社長・羽根拓也氏はこう切り出す。羽根氏はハーバード大学の語学講師として、「優秀指導証書」を授与された経歴の持ち主。現在は「成長する力を育成する」独自の教育プログラムにより、指導やコンサルティングを行っている。
羽根氏によれば、次世代リーダーの役割とは、「知的交配を社内文化に育て上げる」ことにあるという。つまり、組織を進化させるためには、知的交配を起こしていいアイデアを生み出すような仕掛けを作らなければならない。この組織成長の原理原則を「C2理論」という。
「Construction(構築)とChange(変化)という、2つのCを意識すれば、持続的・継続的な成長が可能になります。あるフォーカスを決め、それを繰り返していけば『構築』になる。しかし、構築は同時に硬直を引き起こすので、成長を続けるためには『変化』を起こさなければならない。構築と変化を意図的に起こすような仕組み作りをしなければ、長期的・継続的な進化は望めない。これがC2理論です」と羽根氏は語る。
それでは、知的交配の場である会議において、構築と変化を起こすためにはどうすればいいのだろうか。そのために有効なのが、「フォーカスアウト」という生産的会話術だと羽根氏は語る。会議ではたまたま出てきたアイデアに引きずられ、迷走して知的交配が起きにくいことが往々にしてある。このときに効力を発揮するのが、「ここだけは、ぶれてはいけない」という会議のエッセンスを決め、議論を進めるフォーカスアウトの手法だという。
続いて、マインドマップ作成ソフトMindManagerでの実演を交えながら、ワークショップが行われた。
まず、ペットボトルの形状を変えることでヒット商品を生んだ飲料メーカーの成功事例を紹介した後、聴衆がペアを組んで、“否定的常識”を覆す商品のアイデアを検討。次に、出てきた素案を「競争」させることで、知的交配の作業を進めていく。複数のペアがグループになり、持ち寄ったアイデアを比較。あちこちで議論が交わされた。
「知的交配を起こす第1のポイントは、フォーカスをはっきりさせることです」と羽根氏。まずは会議のエッセンスを固め、そこから出てきた意見を育てていくことの重要性を、羽根氏は指摘する。
「第2のポイントは、フローを可視化すること。知的交配が起こったのは、プロジェクターにMindManagerを映し出し、全員の頭に共通素材を作ったからです。フローを可視化しなければ皆の思考にズレが生じ、交配が起きない。皆の思考をそろえて可視化し、それを回転していくことによって、きわめて生産性の高い知的交配が起きるのです」
ワークショップを通じて知的交配の技術を実地に体験し、場内は熱気に包まれた。

仕事では常にモチベーションが維持できるとはかぎらない。理想的な環境でなくともモチベーションを高く保つためには、どうすればいいのか。サイバーエージェント代表取締役社長・藤田晋氏が、自らの経験と自社事例を交えながらモチベーションアップの方法について解説。講演後は小誌編集長の村上広樹とのトークセッションや会場からの質疑応答も行われた。
「経営側からみれば、モチベーション維持能力とは、営業力やコミュニケーション力に匹敵する重要な能力。好きな仕事ができて、社会的な意義も感じられ、周囲から期待されて十分な評価と報酬が得られる……。そんな環境で仕事ができるのは全体の5%にすぎません。モチベーションのセルフマネジメントができる人材が求められているのです」
サイバーエージェント代表取締役社長・藤田晋氏はこう語る。
藤田氏自身、26歳で会社の東証マザーズ上場を果たすなど、類まれなモチベーション維持能力を発揮してきた。起業前の藤田氏は「週110時間労働する」という目標を立て、平日朝9時から深夜2時まで、土日も10時間ずつ働いたという。
「モチベーションが下がるのは暇なとき。暇だとネガティブなことばかり考えてしまう。最初のうちに頑張って成果を上げれば、周囲からも評価され、いい仕事が回ってくる。それをこなすうちに新しいスキルが身につき、インフレスパイラルが生まれる。最初のスタートダッシュで、よい波に乗せていくことができるのです」
では、モチベーションを維持するためのポイントとは何か。藤田氏によれば、ポイントは「ポジティブな環境に身を置くこと」「目標を明確化すること」「平常心を保つこと」の3点だという。
「ポジティブな環境に身を置くこと」が重要なのは、周囲にネガティブな人がいると影響を受け、モチベーションを維持することが難しくなるため。場合によっては、転職や異動をしてでもポジティブな環境を選ぶことが大事だと藤田氏は述べる。
また、目標を持たないまま組織にいると、不満をためやすくモチベーションを維持できない。「テニスをやりたい」という明確な目標がないのに大学のテニスサークルに入るようなもので、人間関係などで少しでも躓くと嫌になってしまう。だからこそ、「目標を明確化」することが重要になる。
一方で、いくらモチベーション維持が大事だとはいえ、普通の人が常に高いモチベーションを持ち続けることは難しい。そこで、平時は「平常心を保ち」、勝負時にモチベーションを一気に高めるなどして自らマネジメントすることが必要、と藤田氏は指摘する。
続いて藤田氏は、サイバーエージェントにおけるモチベーションマネジメントの実例について紹介した。
同社では、将来的な異動を希望できる「キャリ・チャレ(キャリア・チャレンジ)」制度を実施。半年に1度の社員総会ではレッドカーペットを敷き、アカデミー賞のように表彰式を行うことで、社員への動機づけを行っているという。また、ロールモデルの創出にも心を砕いており、2年に1度の役員交代制度を 導入。こうした施策が功を奏し、モチベーションアップという点でも効果が出始めているという。
「経営者としては、業績や利益を上げて、社員に十分な対価を払えるように頑張らなければいけない。とはいえ、モチベーション維持も最後はセルフマネジメントだと思います」と藤田氏。講演後は、トークセッションや参加者とのQ&Aタイムも設けられ、活発な質疑応答が交わされた。
