NBonline SPECIAL 新・日本的経営の姿

株式会社 NTTデータ ビジネスコンサルティング

改革のリーダーは発想の転換から
〜 CIO は経営改革の旗手であれ〜

日本企業のCIOは十分に機能しているかというと、一般には辛口の評価が多い。その大きな理由は、日本におけるCIOの位置づけにある。では、日本企業がCIOの力を存分に引き出し、競争力を向上させるためにはどのような取り組みが必要だろうか。NTT データビジネスコンサルティングの宋修永氏が、日韓でのビジネス経験をもとに提案した。


ITに責任を持つCIOは同時に企業改革の責任者でもある

株式会社NTT データ ビジネスコンサルティング ヴァイスプレジデント 宋 修永 氏
株式会社NTT データ ビジネスコンサルティング
ヴァイスプレジデント
宋 修永 氏

 日本では、大企業であってもCIO職を置いていない企業が多い。また、CIOがいても十分な権限と責任を与えられていないケースもある。日本企業のCIOが十分に機能し、成果を上げるためにはどのような取り組みが必要だろうか。NTT データ ビジネスコンサルティング ヴァイスプレジデントの宋修永氏は、冒頭、そんな問題意識を明らかにした上でスピーチを始めた。
「私はCIOと会うことがよくありますが、その役職を確認すると恥ずかしそうにする方もいます。おそらく、CIOにふさわしい権限や責任を与えられていないと本人が感じているからでしょう。CIOという肩書きであっても、実際にはIT責任者というケースが日本では多いように思います」
 ITが限られた業務の効率化だけに使われていた時代は過ぎ、それは経営全般に欠かせない存在になった。そんな時代のCIOの役割を、宋氏は「企業における改革全体を担う責任者」と定義する。経営を改革するツールとしてITほど強力な道具はない。だとすれば、そのIT責任者が改革をリードするのは当然なのである。
 しかし、宋氏の考え方は日本企業の現状とは距離があるかもしれない。「そうはいっても、現場がついてこない」「現場の抵抗が大きい」と悩んでいるCIOも多いのではないか。宋氏自身、かつて韓国のメーカーで経営改革に取り組んだとき、同じように悩んだことがあるという。
「いくら説得してもシステムを使ってくれない部署があったのですが、そのとき私の上司だったCIOは『この部署がなくてもプロセスは動く』といって、その組織を廃止してしまいました。現場との話し合いは重要ですが、どうしても前に進まないときには別のやり方もあります」と宋氏は言う。
 そもそも現場が納得し歓迎するような改革であれば、現場が独自に進めればいい。コンサルタントを雇ってプロジェクトを組む必要はないのである。

CIOはCEOと同様に、企業業績で評価されるべき

 では、CIOにとって現場を従わせる腕力が重要かというと、そうではない。宋氏は「たとえ現場が不承知であっても、全社的な視点で業務を変えなければならない場合はあります。そんなときには、現場が変わらざるをえないような仕組みをITで作る。それがCIOの役割です」と強調する。そんな役割を果たしているCIOは、日本では少数だろう。
 その背後には、CIOの評価という課題もある。
「IT投資の成功例などがメディアで紹介されていますが、厳密な意味でIT投資効果を測定することはできません。その投資が効果を上げるためには、組織や社員などの様々なサポートがあったはずですが、それでは正確なROIは測れないのです。それでもCEOが数値を求めるというのなら、CIOは都合のいい数値を作ることばかりを考えるでしょう」と宋氏は指摘する。
 数値が当てにならないとすれば、どのようにしてCIOを評価すべきか。
「CIOはCEOと同じように、企業業績そのもので評価すべきです。CEOとCIOは1つの経営チーム。CEOが辞めるときにはCIOも一緒に辞めるくらいの覚悟が必要だと思います」と宋氏は提案する。CIOに期待されているのは企業改革なのだから、CEOと同じレベルで評価されるのは当然のことなのである。
 ここまで宋氏が説明したように、CIOは本来企業の将来を左右する重要なポジション。そのCIO職にふさわしい人物像を、宋氏は次のように表現する。
「単にITに詳しいだけではCIOは務まりません。ITのことよりも、むしろ現場の業務をよく知っていることが重要。もう1つ、改革の方向を打ち出す能力も求められるでしょう」

CIOがITを握っているからこそ、CIOが経営改革の責任者になるべきである

改革の推進者は発想の転換によって生まれる

 こうした能力を持つCIOを見出すのは、CEOの責任である。そして、CEOは自ら任命したCIOに権限を与えて、経営改革を任せる覚悟を持つべきだ。
 韓国のメーカー時代、宋氏にはこんな経験がある。
「16年前だったでしょうか、家電部門で在庫が増えてしまい、それが会議のテーマになったことがあります。グループの会長が『トヨタのジャスト・イン・タイム(JIT)について誰か説明してくれ』と尋ねられると、電気部門のCIOが非常に詳しく解説しました。会長は『それほど知っているのに、なぜJITを実行しないのか』と責めると、CIOは『権限を与えられていないからです』と答えました」
 ここまでは、ありふれた展開かもしれない。だが、その後の会長の言葉はいまも宋氏に強い印象を残している。会長は「ITを握っているからこそ、あなたがやるべきなのです」と言った。その日から、電気部門CIO は改革の責任者になった。このCIOが、先に触れた宋氏の元上司である。
「CIOはITの責任者から改革の責任者になり、会長はそれを強力にサポートしました。CIOはこれまでの発想を大きく転換し、部下に聞くことの内容も劇的に変わりました。例えば在庫が増えたとき、かつては『なぜ増えたのか』と聞いていましたが、以後は『いつ在庫増に気づいたのか』、『そのときどんな対応をしたか』と質問するようになりました」
 質問の内容がこんな風に変わるだけで、部下たちの目の色が変わった。CIOはマネジメントの仕組みや評価方法も変えた。全社的な業務プロセス改革がスタートし、その改革はいまも継続しているという。
「大事なのは、CEOとCIOが発想を変えることです」と宋氏は強調する。マネジメントの発想を転換することによって、経営改革のリーダーは生まれるのである。

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