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地域経済の活性化に向けた取り組みが各方面で行われています。この分野の現状をどのようにお考えですか。
伊藤 地域がテーマだから仕方ないとはいえ、問題をミクロな視点から捉えがちなことが気になります。産業や観光の振興といった戦術も大事ですが、社会の大きな変化と自分たちの地域の関係ということを、まずは念頭に置いた方がいい。地理的にも時間的にも視野を広げて、大きな戦略を練るというスタンスが必要でしょう。例えば、企業誘致が妙策となる地域もありますが、どこでもうまくいくかと言えばそんなことはあり得ません。製造業のGDPシェアは低落の一途をたどり、もう2割を切ろうとしている時代ですからね。
もう1 つ、今のままだと日本の人口は減る一方だということも重要な前提です。これを押さえておけば、現状のコミュニティーすべてを活性化しようという考え方には無理があると分かる。ならば、人口を集約した新たなコミュニティーを再構成してはどうか、それまでに過疎地の人たちをどう支援しようか…といった、より建設的な議論ができます。むろんそう簡単には答えが見つからない、難しい問題ではありますが。
みんなが同じことをしてもうまくいかないのは確かですが、参考になるケースもあると思います。伊藤さんが今、注目されている事例をお教えください。
伊藤 ひとつには、旅行客を誘致するために九州全体が連携しているケースです。各県と経済団体、観光関連企業などが結集して九州観光推進機構という組織を作り、国内のほか中国や韓国からの観光客を増やそうと頑張っています。例えば、福岡や長崎が同じ目的のために別々に動く非効率を考えたら、ノウハウもアイデアも共有して利益を分け合った方がいいに決まっていますよね。いわゆる地域ブランドなどもそうですが、県を超えた広域で連携すると可能性が見えてくるということはほかにもあるのではないでしょうか。
小さなエリアで言えば、九州・大分の湯布院。さほど魅力的な観光インフラがあるわけでもないのにここが成功したのは、「自然」「やすらぎ」「人の和」といった観光地としてのしっかりしたコンセプトやビジョンを、地元の人たちが30 年も前から作り上げてきたからです。さらには外部にネットワークを構築していること。例えば、湯布院映画祭には、毎年日本中から映画ファンや関係者が集まってくるんです。旅館や料理屋が勉強会を開くなどして、互いに協力し合っているということもある。長期的なビジョンと広範なネットワーク、そして地域のライバル同士が手を携えることなど、ヒントに満ちた事例だと思います。
地域再生の切り札として、クラスターの形成、産官学の連携といったことが期待されていますが、いかがでしょう。
伊藤 私が思うのは、地域の活性化を目指すのであればクラスターの対象を工業に限定しない方がいいということです。例えば、ワインを切り口にクラスターを作るといった柔軟性があってもいいと思います。ワイナリーのほか、ワインの歴史や文化に関わる施設、飲食関連企業を集めたりしてはどうかと…。町工場がひしめいている東大阪市のような下地があれば工業寄りのクラスターをイメージできますが、そういうエリアばかりではありませんからね。
産官学の連携も、手法としてはいいと思います。ただこれも地域性ということを無視できないでしょう。東京なら都と東大、そして大企業が組んで大きなビジネスを創出するといったこともできるかもしれませんが、地方となるとそうはいかない。私はまず、大学を核として集まっている若者たちを地域のコミュニティーに引きずり込むことから始めたらどうかと思います。大げさなビジネスじゃなくてもいい。どんな形でもいいから大勢の若者との接点ができればそれだけで街が活気づきます。地域のコミュニティーと彼らの間に何らかの絆ができれば、卒業後もそこに残る人も出てくるでしょうし、いずれは地域発のビジネスが育つかもしれません。学生はもちろん先生たちも含めて、地域が大学というリソースを有効活用することは1 つの突破口になるのではないでしょうか。
最後に地域活性化に向けたNIRAの活動をお教えください。
伊藤 以前から続けているのは、海外からの観光客を呼び込むための取り組みです。
各都道府県の担当者を集めて、どうすれば観光客が集まるかを議論したり、持ち寄った情報を分析したりしてきました。その成果は既にマニュアルのような形でまとめています。観光客誘致については各都道府県がそれぞれノウハウや悩みを抱えていますから、それらを集約することには大きな意味があるのです。
今後の課題は地域活性化に向けた長期的なビジョンについて、さらに議論を深めていくこと。人口の減少や産業構造の変化といった日本の現状を踏まえれば、東京のほかに7つ、あるいは8つの独立した経済圏を作って、それぞれの持続的な成長を目指すという考え方が現実的なのではないかと思っています。