総合商社の中で、豊田通商は積極的に「価値創造ビジネス」に取り組んでいることに特徴がある。
豊田通商は主に自動車分野である「金属本部」「機械・エレクトロニクス本部」「自動車本部」と、非自動車分野の「エネルギー・化学品本部」「食料本部」「生活産業・資材本部」を抱える。いずれの事業でも、単にモノを右から左に流す「トレーディング機能」だけでなく、生産準備、加工、組み立て、物流、リサイクルなど、国、地域ごとの事情と顧客企業のニーズに合わせた機能・価値を加えることに注力している。
その際、トヨタグループの一員として培ってきた「トヨタ生産方式(TPS)」を活用できることが最大の強み。TPSはモノ造りから末端の販売に至るまで「必要な時に必要なモノを必要なだけ造り、お客様に良いモノを安くタイムリーに供給すること」を狙いとする。豊田通商は、サプライヤー、ユーザーとの間で、このTPSの考え方を取り入れたバリューチェーンの構築に努めている。
例えば、金属本部が手掛ける鋼板事業では、40年にわたってTPSのノウハウを蓄積してきたグループ会社の豊田スチールセンターがバリューチェーンの中核的な役割を担っている。高炉メーカーから出荷されたコイルを自動車メーカー、部品メーカーなどユーザーのニーズに合う形状に加工し、保管し、ジャストインタイムで納入しているのだ。さらに、豊田スチールセンターが独自に企画・開発を行い、実用化したCVT(コンテナバンニングテクノロジー)は在庫の削減、梱包費の低減等に寄与する輸送技術の効率的手段の一つで、特に海外では効果を出している。非鉄金属事業でも、インゴット(塊)での納入が一般的だったアルミ材料を再溶解が不要な溶湯の状態で供給しはじめた。これにより、ユーザーは溶融炉設備の設置、維持、管理やその燃料が不要になり、コスト負担が減るという大きなメリットを享受できる。
こうしたノウハウを持つ豊田通商は、自動車関連では自社で数十箇所に及ぶ生産拠点を新たに展開し、立ち上げ前の工程設計段階からTPSを織り込んでいる。
さらに、豊田通商は自動車分野で培い、提供してきたTPSを軸としたバリューチェーン構築を非自動車分野にも横展開しつつある。その先導役となるのが2004年に設置した業務本部。300人ほどの社員を抱え、物流、生産準備、海外事業などの営業支援を手掛ける、商社には珍しい組織だ。
2006年4月、この業務本部内の物流部にあった改善推進室を生産改善推進部に格上げした。主に自社の生産工場の立ち上げ支援を行う生製準支援室(生産準備+製造準備の意味の造語)と、豊田通商自体の改善やグループ会社、取引先企業の改善を支援する改善支援室を置く。トヨタ自動車からの転籍者など、TPSを体得した社員がグループ内外の企業に出向き、現場に入り込んで、無駄なく生産・販売するための知恵を絞る。豊田通商のグループ会社でのTPSを取り入れたバリューチェーン構築のみならず、最近は資本関係のない取引先にも対象を広げている。
2005〜2006年には、旧トーメン時代から長年取引がある大手食品メーカーの生産効率改善に取り組んだ。食品メーカーは、1つのラインで複数の商品を作るケースが多い。その都度、段取り替えが発生する上、細心の注意を払って機器を洗浄しなくてはならない。この段取り替え、洗浄時間中に生産ラインがストップすることが生産性向上のネック。豊田通商のチームは、工場で働く人たちと一緒にビデオカメラを持ち込んで段取り替えや洗浄の様子を撮影し、「どの作業に無駄があるか」を討論したという。そして、生産ライン中に散在し、清掃の度に開け閉めに時間がかかっていたボルト締めの蓋をワンタッチ式で開閉できるものに変えたり、重い装備を遠方へ運んでいたのをチェーンを付けて上からぶら下げるといった改善を施した。地道な改善を積み重ねた結果、大きな原価低減に効果があったという。
十分な成果を見たこの大手食品メーカーでは別の工場への改善活動も開始。これも豊田通商が支援している。他にも、取引関係の深い繊維メーカーの改善支援などに乗り出している。こうして取引先企業との連携を深めることで、双方がWin-Winの強力な関係を築く考えだ。
トヨタグループの海外進出拡大に伴い、生製準支援室の存在がますます重要になることは間違いないが、改善支援室の活躍の場も広がりそうだ。豊田通商は今後、生産改善推進部の人員を増やして体制を強化する方針だ。
豊田通商は長期経営計画「VISION2015 -LEAD THE NEXT-」を掲げ、2015年に非自動車分野の収益比率50%達成を目指す。生産改善推進部をはじめ、様々な業種業態でTPSを活用したバリューチェーン構築への新たな挑戦が続く。
トヨタ生産方式(TPS)の目的は単なるコスト削減ではなく、お客様に満足される商品を必要な時に必要なだけ提供できる仕組みを作ることです。だから、必要であれば資金を投入し新たな工程や物流の設計・開発も行います。その核になるのは「人」。TPSの「哲学」に則って、その会社に合った改善方法を社員一人ひとりに考えてもらい、実行してもらいます。
大それたことをやるわけではありません。「重いモノを運ぶ」とか「遠い所まで道具を取りに行く」といった無駄な作業を減らしていくことで、誰にでもたやすくできるようにする、売り上げに直結しない在庫は持たない、造らない──など、地道に、愚直に実行するだけです。仕組みができれば異常が分かり、異常が分かれば知恵が出てさらに改善が進みます。
TPSは、あらゆる製造業分野に活用でき、流通業も巻き込んだ形で成果を出すことができると思います。当社がその改善のお手伝いができれば幸いです。
| 本社所在地/〒450-8575 名古屋市中村区名駅4-9-8(名古屋本社) TEL.052-584-5000 URL.http://www.toyota-tsusho.com |