2006年4月に実施されたトーメンとの経営統合によって、豊田通商の事業規模と事業領域は大きく拡大した。同社は、そのビジネスの将来を見据えた長期ビジョン「VISION2015 − LEAD THE NEXT −」によって、価値創造企業としての道筋を示している。
VISION2015が描く将来像で注目されるのは、事業構造の変革である。トヨタグループの商社として自動車分野の強みを生かしつつ、自動車以外の分野をさらに強化する方針だ。現在、自動車分野と非自動車分野の収益バランスは80対20程度だが、2015年にこれを50対50にする。そのためには、非自動車分野の飛躍的な成長が不可欠であり、食料事業は大きな期待を背負っている。
売上高1000億円規模だった豊田通商の食料事業は、トーメンとの合併で3600億円規模にまで膨らんだ。食料本部はいま、拡大した事業領域を整理し、個々のビジネス間でシナジーを最大化するための施策、得意分野をより強くするための施策に取り組んでいる。
同社の食料事業には飼料と食糧、食品という大きく3つの柱がある。
まず、飼料分野で特筆されるのは、サイロを備えた4つの拠点を国内臨海部に持っていること。サイロに隣接した岸壁には大型船が横付けされ、荷揚げが行われる。サイロの後背地には飼料や製油などのメーカーが工場を構えており、一種のコンビナートを形成している。4つのサイロを合計した保管能力は50万トン、年間の取扱量は360万トン。いずれも国内商社トップクラスの規模である(写真1)。
次に食糧分野では小麦やデンプン、米、糖類など食品産業の基礎原料を扱っている。そして、食品分野。水産物や畜産物、野菜など多様な食材を原料として扱うだけでなく、加工も含めて一貫した事業展開を行っている。メーカーなどに商品企画を提案し、海外拠点で加工した上で輸入することも多い。
以上3つのビジネスユニットにより、豊田通商の食料事業は成り立っている。食料本部は関連グループ会社とも連携しながら事業を展開しており、全体の戦略や企画といった機能も担う。
そのグループ会社の中でも、基幹子会社と位置づけているのがトーメンフーズである。同社は10月1日に社名を豊通食料に変更し、従来は本社で行ってきた水産加工品やごま、もやし原料、玄そばの輸入販売などの事業を継承することになった。
豊通食料に移管されるのは、それぞれが長年の蓄積を持つビジネスである。例えば、国内の輸入販売においてごまは約20%、もやし原料は約25%、玄そばは約10%という高いシェアを獲得している。本社から継承する事業は、売上にしてトータル約360億円。豊通食料は約540億円の売上規模を持つ会社になる。この事業再編を機に、豊田通商の食料事業の成長戦略も加速しそうだ。
食料事業では、リテール戦略も注目される。近年、大手商社の間では小売業への進出という大きな動きが相次いだが、豊田通商は高級飲食店向けにユニークなアプローチでリテール商品展開を実現している。
例えば、ワイン事業では、ブルゴーニュやシャンパーニュなどの優良小規模生産者とのネットワークを築いた上で、こだわりのワインを輸入販売している。最近では、農薬に頼らない有機農法による自然派のワインも取り扱い、注目を集めている。またこうした輸入だけでなく、直営ワインショップ「マルシェ・ド・ヴァン銀座」で個人向けの販売も手がけている。今年12月には、トヨタグループのオートモール複合型商業施設「トレッサ横浜」内に2店目の小売店舗を出店する予定だ(写真2)。
ワイン事業だけでなく、ベルギーチョコレートとして有名な「グランプラス」も、豊田通商のグループ企業である。グランプラスの小売店は東京・品川駅構内「ecute 品川」に設置されており、この10月には2号店が東京・有楽町に開設される予定だ。
こうしたリテール向け事業は、川上事業とも密接な関係を持っている。小売店で収集したマーケットニーズが川上事業で生かされることは少なくない。商品企画の提案をより充実させる、あるいは市場の先行きをにらんだ適切な原料調達を実現することもできる。組織内の様々な事業を連携させることで、豊田通商はそのビジネスをさらに成長させようとしている。
トーメンフーズはこの10月に本社から事業の移管を受け、社名を豊通食料に変更して再スタートを切りますが、豊田通商の食料事業における基幹子会社として、非常に重要な位置を占めることになります。これにより、豊通食料の売上規模は約540億円に拡大します。食料本部のグループ戦略全体の立案、及び新規大型案件の推進は本社、営業前線からのフィードバックをベースとした顧客視点の着実な戦略推進は豊通食料が担うという役割分担が明確になりました。
今回の事業再編の狙いはいくつかあります。現トーメンフーズの事業と移管事業の垣根を取り払い、全社が一体的に動く組織体制を構築していきます。その上で、マーケットの変化に素早く対応し、きめ細かくお客様に対応できるようにします。本社よりも子会社のほうが機動的に動けるケースも多いだろうと思います。商品の企画提案機能をさらに強化し、扱う食品のラインナップの拡充も目指しています。