物流をベースにした新事業を展開 目指すのは「ソリューション提案企業」

世界的な景気悪化が深刻化し、ビジネス環境はますます厳しさを増している。そこから活路を見いだすには、個別のニーズに柔軟に対応していくことが重要だ。こうした考え方に基づき、ヤマトグループは昨秋から「宅急便」で培ったノウハウをベースにLT(物流)、IT(情報)、FT(決済)の機能を融合させた新事業を展開。消費者視点に立った「ソリューション提案企業」へと大きく舵を切った。ヤマトホールディングス代表取締役社長の瀬戸薫氏に、同グループが目指す事業戦略、今後の展望などを聞いた。

― 世界経済が急速に冷え込む中、企業には何が求められるのでしょうか。

難局を乗り切り、企業が持続的に成長していくには、変革、すなわちイノベーションが不可欠。ヤマトグループとしても、顧客企業がイノベーションを実現するうえで、どのような貢献ができるかが重要だと認識しています。そこで、現在を「路線便事業」、「宅急便事業」への変革に続く、第三の変革期と捉え、顧客企業のイノベーションを支援する取り組みをグループ一丸となって推進しています。

5つの新サービスを提供

― 顧客企業のイノベーションへの貢献として、ヤマトグループではどのような取り組みを行っているでしょうか。

顧客企業のイノベーションに貢献するには、自らがイノベーションを体現しなければなりません。ヤマトグループは宅急便で成長してきましたが、現在は、そこで培ってきた経営資源をベースに、きめ細やかな配送を実現する「LT」、荷物のトレーシングなどを可能にする「IT」、確実かつ利便性の高い代金回収を支える「FT」、という3つの機能を融合。お客様の課題に包括的に対応した“物流イノベーション”を加速しています。

― “物流イノベーション”とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

一言で表現すれば、「消費者の立場に立った新しいビジネスモデルの創出を通じて、顧客企業のイノベーションに貢献すること」。こうした考え方のもと、すでに5つの新しいサービスを提供しています(図)。例えば、「Today Shopping Service(TSS)」は、ネット通販のゴールデンタイムである22時〜24時までに受けた注文を、最短で翌日の午前中にお届けするサービス。24時間・365日稼働の自動倉庫システム「オートピックファクトリー」を整備し、流通の簡素化を図ることで、配送のスピードアップとコスト削減を実現。消費者に驚きと感動を与えることを通じて、ネット通販の売り上げ拡大にも貢献します。

“物流イノベーション”を促進する5つの新サービス

一方、「ネットスーパーサポートサービス」は、ネットスーパー※の運営に必要なLT、IT、FTの機能を、ヤマトグループがトータルにサポートするサービス。これにより、小規模なスーパーでも短期間で、しかも大きな初期投資をすることなく、ネットスーパー事業に参入することを可能にすると同時に、消費者の快適な生活を支援することもできます。

※ネットスーパー:実際の店舗で扱う生鮮食品、日用品、雑貨などを、ネット上で購入した消費者の自宅まで配送するサービス

― こうした新しいサービスのベースとなるノウハウや経験は、どのような形で蓄積されてきたのでしょうか。

ITに関しては宅急便が始まる前からコンピュータ室を立ち上げており、35年以上の歴史があります。今では年間12億個もの宅急便を24時間、365日常時監視し、それが今どこにあって、どういう状態になっているかをWeb上で追跡確認できる仕組みを確立。それを支える技術、システムの運用管理ノウハウには一日の長があると自負しています。

FTに関しては以前からコレクトサービスなどを提供しており、宅急便お届け時の代金引換やカード決済など多様な決済手段に関する実績とノウハウがあります。

シーズからニーズを発掘

― 新しいサービスを普及させるために重要なポイントは何でしょうか。

5つのサービスは定型のパッケージサービスとして提供するわけではありません。顧客企業のニーズに個別に対応し、実用的なソリューションにカスタマイズ化した形で提供していきます。こうした「ソリューションの種(シーズ)」は常に現場にあります。それをきちんと形にするためには、宅急便のセールスドライバーが顧客企業の社員の方とお話をする中で、新たな課題を見つけ、それを踏まえた上で専門の営業スタッフが最適な提案をしていくことが重要です。そこで、全国70カ所ある配送拠点に、グループ各社のスタッフを集めた「JST(ジョイントサポートチーム)」を組織。グループ一体となって、サービスの開発・販売にあたっています。

― 今後の展望をお聞かせください。

足りない機能や技術力の補完、海外における配送網の拡大を視野に、これまで以上にパートナー戦略やアライアンス、M&Aなどを積極的に推進。5つのサービスだけにとどまらず、ソリューションの種を新たな事業化につなげていき、物流イノベーションをさらに加速していく方針です。


TSSを支えるオートピックファクトリー

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