壇蜜の「知りたがりビジネス最前線」

コンビニのくじはゲーム感覚

壇蜜「お金を出してもいいや」の罠にはまる

2016年6月8日(水)

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(写真:清水真帆呂、以下同)

 「コンビニに毎日通っている」と言う壇蜜さんは、コンビニで売っている商品の熱烈なファンであると同時に、店の運営や商品開発などについての探求心も旺盛です。実は、壇蜜さんのこうした好奇心は、経済や経営の勉強をするにはうってつけ。身近なコンビニの商品や店頭には、その背景にあるビジネスの仕組みや慣習が透けて見えてくるからです。

 日経ビジネスベーシックの「壇蜜の知りたがりビジネス最前線」は、こうした壇蜜さんの疑問・質問に次々と答えていく連載コーナーです。

 お相手を務めるのは、日経ビジネスベーシックの編集長、谷口徹也です。「ベーシック先生」として壇蜜さんとのQ&Aを進めていきますが、「コンビニ愛」が強くてマニアックな壇蜜さんの深い知識や質問にたじたじとなる場面も。

 テーマはコンビニ限定商品からスタートしますが、壇蜜さんの興味に従って今後、消費財や小売業の話題などへと広げていく予定です。果たしてどんな展開となりますことやら。では、珍問答シリーズの始まり始まり…。

ベーシック先生(以下、べー先):さあ、いよいよ始まりました「壇蜜の知りたがりビジネス最前線」。ちょっとしたご縁があって、壇蜜さんとご一緒させてもらうことになりました。知ってることは何でも答えますから、どしどし質問してください。

 それにしても、壇蜜さんがコンビニ好きとは意外でした。今みたいに顔や名前が売れる前から、しょっちゅう通っていたのですか。

コンビニの方が魅力的に見えてきて…

壇蜜:実は、コンビニに頻繁に通い始めるようになったのは30歳を過ぎてからなんです。その頃に仕事が増え始めて、毎日クタクタになって自宅と職場を行ったり来たりするだけの生活が始まりました。

 時間的に忙しいだけではありません。グラビアの撮影でロケに行きますとか、テレビでバラエティー番組の収録がありますとか、仕事の範囲が広がってきて、これまであまり馴染みがなかったものを見聞きする必要が出てきたのです。

 すると、自分の時間がなくなる。結果、24時間営業しているコンビニに頼るしかなくなってくるんですね。

 最初は、それまでスーパーで買っていたものが営業時間に買えなくなるから、コンビニで済ませようとか、補助的な要因だったのです。ところが、通い始めたら、プライベートブランド(PB)商品が充実しているとか、実はものによってはスーパーより安いじゃないかとか、スーパーにはないおいしさが見いだせるとか、様々な発見があったのです。すると、コンビニの方が魅力的に見えてきて…。

「ベーシック先生」こと、日経ビジネスベーシック編集長の谷口徹也

べー先:読者のために補足すると、PBとは、小売業者や流通業者が企画して販売している商品のことですね。

 セブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」や、イオンの「トップバリュ」などがあります。これの反対の意味になるのがナショナルブランド(NB)で、メーカーのブランド名やマークがついています。

壇蜜:ご説明ありがとうございます。

 コンビニにあるPBはテレビCMや雑誌を通じた情報発信との相性もいいです。新しいものが出たよといった情報が分かりやすいですよね。スーパーは、セールとか低価格を打ち出すしかないですが、コンビニは「ホットスナック、今月はこれがおいしい」とか、特定して攻めてくる。そうするとこちらも購入意欲がそそられます。

べー先:お薦めとか、新しさをお店側から言ってほしいと。

そこでくじを引いている自分がいる

壇蜜:そう、分かりやすくていいんです。例えば、スーパーに「冷凍食品10%オフです」と言われても詳しい商品や売り場が目に浮かびにくい。コンビニの宣伝はそこにどーんと商品が見えてくるから、「お金を出してもいいや」と思う頻度が高いように思います。

べー先:必ずしも安くなくても、ストーリー、打ち出しがあるものや、それを演出しているところで買い物をしたいと。

壇蜜:そうですね。

 あと、コンビニは年間を通じて、行事を使い回すのが上手ですよね。セブンイレブンは、毎年タイミング良く「おでんの季節がやってきた」。ファミリーマートは、アニメやアイドルと連動したキャンペーンをやって、ある一定額以上の商品を買うとくじを引けるとか。

 くじに当たってもらえるものは在庫処分品かもしれないと思っていても、そこでくじを引いている自分がいる(笑)。もはやゲーム感覚です。

 最近、ケータイの課金制ゲームにはまる人の気持ちが分かる。私はコンビニで700円以上買い物をすると引けるくじに、何らかのギャンブル性というか充足感を求めていると思うのですよ。

べー先:壇蜜さんは若いなあ。そのノリは、10代の感覚ですね。

壇蜜:そうですね。おそらく、自分なりに堅実な生活をしなければと思って身を正している反動が、コンビニでの買い物に出ていると思います。結果、堅実になっていないという…。

 コンビニでいろいろなものを迷いながら買うようになってから、通信販売で目に付いたものをパッと買うことがなくなりました。自分の底なし沼みたいな購入欲が、コンビニで満たされている気がします。

べー先:一度は便利な通販に流れたものの、また、リアルな買い物に充足感を覚えるようになった。

壇蜜:そうですね。おっしゃる通り、独自のストーリーがにじみ出ている商品が欲しいと思うのは、そのストーリーを共有したいんでしょうね。

 もっと言うと、ストーリーにも必ず隙間みたいなのがあって、それを埋めていくのが消費者の作業なのかなと思います。その作業が楽しいんですね。消費者の性なんだと思います。

「限定商品」はコンビニから持ちかける

べー先:さて、壇蜜さんがコンビニについて、すごく深い思い入れがあるのは、よーく分かりました。そこで、今回の質問ですね。「コンビニにある限定商品」について、ですね。どんなところを知りたいですか。

壇蜜:一番聞きたいのは、コンビニチェーンと商品を作っているメーカーが、どういういきさつで契約しているのかです。最初に、どちらが話を持ちかけるのか。

 おそらくメーカー側だと思うのですが、声をかけるにしても「メーカーとコラボしてもいい」という意欲があるチェーンを探さないといけないですよね。その意向をどうやって知るのか、具体的な商品企画などの話をどう擦り合わせているのか…。

べー先:のっけから生々しい質問ですね(笑)。ケースバイケースではありますが、どちらかと言えば、むしろコンビニの方から持ちかけることが多いですね。

壇蜜:えー、コンビニの方から…。思っていたのと反対でした。

べー先:壇蜜さんは、「このチェーンに行こう」と決めてコンビニを探すことがありますか。その時は何を決め手にチェーンを決めますか。

壇蜜:私はPBの品揃えかな。もっと言うと、私の家の近くでは、PB商品が多い時間帯がコンビニによって違うのですよ。

 特にお弁当類や総菜類は、わっと入ってくる時間帯がありますよね。それを何となく把握していて、例えば、今日は帰宅が夜9時を回りそうだな、と思ったら、自宅近くのコンビニAだと品切れが多くなってるから、コンビニBにしようとか。

べー先:これまた、使いこなしのレベルが高いな(笑)。いずれにせよ、PBが関係してますよね。

 究極的には、各コンビニはメーカーに、自分のチェーン専用のPB商品を作ってもらいたいのですよ。セブンイレブンならセブンイレブンにしか置いてない商品が欲しい。「それが好きだからセブンに買いに行くんだ」というお客さんを増やしたいわけですね。

どのコンビニも「PBで勝負したい」と思う

壇蜜:PBで勝負したいという思いは、どこのコンビニでも同じですか。

べー先:はい。できる、できないはチェーンの実力によりますが、PBがコンビニの戦略的な商品であることに変わりはありません。壇蜜さんが感じているように、お客さんがコンビニに足を運ぶ動機が価格でなく商品であるとすれば、自社のチェーンでしか置いてない商品を増やしたいというのは、コンビニに共通した思いなんです。

 ところが、メーカー側には別の考えがある。飲料メーカーにしても、お菓子メーカーにしても、本当は、自分のブランドをつけたナショナルブランド(NB)商品を全国津々浦々で売りたいと考えているのですね。

 そこで、両者の折り合いを付けたのが、チェーンを特定しない「コンビニ限定商品」というわけです。

壇蜜:なるほど。じゃあ、ちょうどそのお互いの立場をすりあわせた結果が、コンビニ限定商品。いわゆるウインウインの結果というわけですね。本当に「ウインウイン」かは分かりませんが(笑)。

べー先:「PBは作りたくないけれど、このコンビニチェーンとはちゃんと付き合いたい」と考えて、妥協点、折り合いを付けたのがコンビニ限定商品というわけです。

壇蜜:それから、こんなのもありますよね。チェーンのブランドと、メーカーのブランドや商品名を並べている商品。これもPBですよね。

べー先:これも一つの妥協点ですよね。「両論併記」みたいな(笑)。ただ、メーカーにとっても、コンビニの言うことを聞いて協力することには意味があるのですよ。

 壇蜜さんはよくご存じの通り、コンビニの店頭は商品の入れ替えが速いですよね。発売から3カ月くらいで棚から消えてしまうことは珍しくありません。

壇蜜:コンビニにずーっと置いてある商品って、ほとんどないような気がします。乾燥春雨と、ランチパックのピーナッツ味くらいじゃないですか。

べー先:そのランチパックだって、シリーズの中でどんどん中身が変わっていますよね。ご多分に漏れず、期間限定とかもあります。ところが、それを逆手にとって、「短期間のテストマーケティング」という動きも最近はあるのです。

PBに付き合ってNBへの協力も求める

 (雑誌を広げて)これは、日経ビジネスの2015年11月2日号の特集で紹介したカルビー「じゃがりこ」のケースです。定番の味がある一方、コンビニ4社とイオン向けで別々の商品を出したわけです。これをテストマーケティングとしてデータを集めて分析して、翌年に「期間限定商品」を出しました。これはまだ、ごく一部のメーカーの戦略ですけど。

壇蜜:(記事にあるじゃがりこのラインアップを見て)あーっ! これは定番じゃないですよ。じゃがりこはコンビニに行っても、2~3種類しかありません!

べー先:(苦笑して)もちろん、定番がいつも全部、コンビニに並んでいるわけではありませんし、季節による限定商品もあるということです。

壇蜜:そうすると、メーカーが限定商品に付き合うメリットは、テストマーケティングやデータというわけですか。

べー先:他にもありますね。PBや限定商品に付き合うことによって、メーカーのNBも扱ってくれるという思惑があります。

壇蜜:すると、ものすごくロングランで売ってる定番商品か、短い期間でどんどん入れ替えられる商品かで二極分化されていくのですね。

(以下、次回に続きます)

「壇蜜の「知りたがりビジネス最前線」」のバックナンバー

一覧

「コンビニのくじはゲーム感覚」の著者

谷口 徹也

谷口 徹也(たにぐち・てつや)

日経ビジネスベーシック編集長

日経ビジネス、日経情報ストラテジーの記者などを経て、2002年日経ビジネス香港支局特派員、07年日経ビジネス副編集長、09年日経ビジネスオンライン副編集長。12年日経エコロジー編集長。14年ビジネス局長補佐。16年1月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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