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細川 昌彦(ほそかわ・まさひこ)

中部大学特任教授(元・経済産業省米州課長)

細川 昌彦

 1955年1月生まれ。77年東京大学法学部卒業、通商産業省入省。「東京国際映画祭」の企画立案、山形県警出向、貿易局安全保障貿易管理課長などを経て98年通商政策局米州課長。日米の通商交渉を最前線で担当した。

 2002年ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。2003年中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ」構想を提唱。2004年日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長。2006年経済産業省退職。現在は中部大学で教鞭をとる傍ら、自治体や企業のアドバイザーを務める。著書に『メガ・リージョンの攻防』(東洋経済新報社)

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

ニュースを斬る

中国が海外の先端技術を買いあさる「軍民融合」

2017年12月7日(木)

中国の「軍民融合」戦略に対する警戒感が高まっている。企業買収や貿易を通じて先端技術を獲得し、軍事転用する可能性があるからだ。先進諸国は法改正などで脅威への対応を急ぐが、中国は今や世界を「規制する側」に立とうとしている。
中国企業によるドイツの産業用ロボットメーカーKUKAの買収は、先進諸国の当局者に大きな衝撃を与えた(写真:ロイター/アフロ)

海外の先端技術に狙いを定めた軍民融合戦略

 中国の軍民融合の脅威が確実に押し寄せている。

 中国は「製造強国」を目指して、2015年5月に「中国製造2025」計画を発表した。そこに明記されているいくつかの戦略の中で、最も警戒すべきは「軍民融合戦略」だ。すなわち、軍事・民間の融合を促進して、製造業の水準を引き上げる戦略である。そして、そのターゲットとして次世代IT、ロボット、新材料、バイオ医薬など、10の重点分野を掲げている。

 露骨に、軍事力強化のために、海外の先端技術を導入した民生技術を活用することをうたっているのだ。

 炭素繊維や工作機械、パワー半導体など、民生技術でも機微な(センシティブな)技術は広範に軍事分野に活用されており、「軍民両用(デュアル・ユース)」の重要性が世界的に高まっている。例えば、炭素繊維は、ウラン濃縮用の高性能遠心分離機やミサイルの構造材料に不可欠だ。そういう中で、中国の場合、海外の先端技術に狙いを定めているから特に警戒を要する。

 海外の先端技術を狙う中国の手段が、対外投資と貿易だ。ターゲットとなる日本や欧米先進国は、まさに守りを固めるのに躍起になっている。

中国による海外企業買収を巡る攻防

 近年、資金力に任せた中国企業による外国企業の買収が急増している。世界のM&A(合併・買収)における中国の存在感は年々大きくなってきている。その結果、日本や欧米各国は軍事上の観点で、機微な技術が中国に流出することを懸念しなければいけない事態になっている。

 そこで、このような事態を安全保障上の脅威と捉えて、各国は相次いで投資規制を強化する動きになっている。地理的に離れていることから、これまで中国に対する安全保障上の懸念には無頓着だったドイツなど欧州各国でさえそうだ。英国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)では早々に中国に接近したものの、原発へ中国資本が投資したこともあって、懸念が高まり規制強化に動いた。

 2016年5月に中国の美的集団がドイツの産業用ロボット・メーカーであるKUKAを買収して実質子会社化するとの発表は、世界に衝撃を与えた。KUKAは世界4大産業用ロボットメーカーの1社である。

 当然、KUKAは欧米各国で軍需向けにもロボットを提供している。美的集団の傘下に入ってからは、中国での生産能力を4倍に拡大する計画で、中国は一挙にロボット大国になることを目指している。

 そのほかにも、米国の半導体メーカーの買収やドイツの半導体製造装置メーカーの買収など、何とか阻止できた案件もいくつかあったが、KUKAのケースで各国の警戒度は一気に高まった。その後も、中国による海外企業の買いあさりはとどまることはない。欧米の工作機械の多数のブランドが中国資本の傘下に次々入っている。

 日本も機微な技術の流出を阻止しようと、この秋、改正外為法が施行された。これまで無防備だった日本も安全保障上の危機感から、国の安全を損なう恐れが大きい技術分野を規制対象になるように拡大した。

 今後、中国の攻勢はますます増大すると予想され、先進各国における先端技術を巡るせめぎ合いは一層激しくなるだろう。

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