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白井 咲貴(しらい・さき)

日経ビジネス記者

白井 咲貴

2017年3月大学卒業、大学では国際政治学を専攻。同年4月、日経BP社に入社。日経ビジネス編集部に配属され、旅行・レジャー・ホテル業界、家具・雑貨専門店を担当している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

企業研究

メガネスーパーが挑む「負けグセ」脱却

2018年4月19日(木)

倒産寸前だったメガネスーパーの業績が急回復している。投資ファンドから派遣されたトップは、370店以上をくまなく行脚して、意気消沈していた社員を熱血指導。時代遅れになりかけた事業モデルをどう再生させるか。環境激変に苦慮する多くの企業に示唆がある。

(日経ビジネス2018年2月19日号より転載)

新宿中央東口店、初売り前の「出陣式」の様子。中央のピンクの法被姿が星﨑氏(写真=竹井 俊晴)

 2018年1月1日午前9時半。元旦の静けさが広がるJR新宿駅前に、赤い法被姿の集団が立ち並んだ。異様な光景に外国人観光客が思わず足を止め、不思議そうに見つめる。

 「メガネスーパー心得。一つ、毎日が勉強であることを心得ます」──。メガネスーパー新宿中央東口店の宮田永士店長の発声が静寂を破った。周囲のスタッフが祭りのように太鼓を鳴らし、祝い酒が振る舞われる。

 「出陣式」と呼ばれるこの行事を、メガネスーパーは16年から毎年、実施している。今年は社員とその家族約180人が参加した。百貨店などの初売りは正月2日以降が一般的。働き方改革が叫ばれる昨今、外部から見れば“ブラック”的なイメージを抱きかねないが、意外にも集まった社員の表情は生き生きとしていた。

 決して順風満帆の急成長企業ではないのに、この活気はどこから来るのか。約10年前に赤字に陥り、一時は経営の継続さえ危ぶまれるなど、長い苦悩の時代を経て、ようやくトンネルから抜け出る途上にあるからだ。

8期連続営業赤字という最悪期を脱した
●メガネスーパー(現ビジョナリーHD)の売上高と営業損益の推移

 上のグラフにあるように、17年4月期まで2期連続で営業黒字を確保できたとはいえ、数億円規模の水準。まだ再生物語は緒に就いたばかりだ。ただ

 4年半前、再建請負人として外部から起用された星﨑尚彦CEO(最高経営責任者)の奮闘によって、「負けグセ」がついていた社員の意識は着実に変わりつつある。

SPAに負け上場廃止の危機

 メガネスーパーは2017年11月に、持ち株会社ビジョナリーホールディングスを設立し、現在はその中核子会社になっている。1973年に創業し、個人による小規模経営が主流の時代に、チェーンオペレーションによる多店舗展開を進めた。大型店舗に商品を大量陳列し、大量仕入れにより値下げを実現するという、典型的な「量販店」の経営手法で成長した。ダイエーなど大型スーパーが元気だった時代、まさに社名の通り眼鏡のスーパーとして業界を塗り替えたのだ。ピークの2007年には店舗数は500店超、売上高も400億円近くに達した。

 だが、この快進撃に待ったをかけたのが“眼鏡業界のユニクロ”の台頭だ。10年ほど前から、「JINS(ジンズ)」や「Zoff(ゾフ)」など、SPA(製造小売り)型の企業が急成長。商品企画から生産、販売まで自社で管理することでコストを大幅に低減。別料金が一般的だった眼鏡フレームとレンズをセットで1万円以下という圧倒的な安値で売り、若者を中心に顧客の心をつかんだ。

 これを機に、メガネスーパーなど量販店は守勢に回った。ちょうど1990年代後半、ユニクロが急成長して、ダイエーなどスーパーが苦境に陥ったのと同じ構図だ。

 メガネスーパーも対抗値下げに走ったが、太刀打ちできず、2008年4月期に営業赤字に転落。11年4月期には債務超過に陥り、上場廃止が現実味を帯びていた。

 経営に限界を感じた創業家一族が、投資ファンドのアドバンテッジパートナーズに経営権を譲り渡したのは11年のこと。同ファンドの下で再建が始まったが、民事再生法などの法的整理を回避したため、過去の負債の重荷は残り、苦戦が続いた。そこで抜本的な再建に向けて13年に起用されたのが、星﨑氏だった。

 同氏は三井物産に約10年勤務した後に退社。宝飾品の会社の社長のほか、アパレルなど複数の社長を務める中で、事業の立て直しを経験してきた。

 メガネスーパーに来た星﨑氏は不採算の約50店舗を閉鎖するなど、黒字転換への土台を整備した。社長就任前から始まっていた450人規模の人員削減も完了。コスト削減にはめどがついたが、根本的な問題が残っていた。

社長が常に問いかける

 「社内の誰もが考えることをやめていた」。星﨑氏は、当時の社内の雰囲気をこう振り返る。

 長年のオーナー家によるトップダウン経営の弊害に、業績の低迷が重なり、社員の創意工夫の意欲は喪失していた。そして、経営判断に必要な現場の情報がトップまで上がらず、逆にトップからは現場が何をやっているのかまったく見えない。コストカットの後、本当の再生戦略を描くには、こうした組織風土の刷新が不可欠と考えた星﨑氏は、ひとつの大方針を掲げる。

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