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荻島 央江(おぎしま・ひさえ)

フリーランスライター

荻島 央江

食品販売会社在職中に映画紹介・評論記事の執筆活動を開始。2002年からフリーランスライターとなり、情報誌や女性誌などで取材・執筆を手掛ける。現在はビジネス誌を中心に活動しており、「日経トップリーダー」や「日経メディカルオンライン」などに執筆。著名経営者へのインタビューや中小企業のルポを得意とする。

◇主な著書
「社長、辞めます! 」 ジャパネットたかた 激闘365日の舞台裏』(日経BP) 2014
なぜか「クセになる」ホテル 東横インの秘密』(日経BP) 2017

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

ベンチャー最前線

片道1時間以上の顧客とは取引しない町工場

2017年8月17日(木)

「片道1時間以上の顧客とは取引しない」――。産業用自動機械の設計・製作を手掛けるスズキ機工(千葉県松戸市)の事業戦略だ。同社の鈴木豊社長が体験した「ある事件」をきっかけに始めたこの戦略。結果として同社の取引先は半減したが、売上高は4倍以上になった。「真面目に働いているのに、ちっとも利益が上がらない。誰かにその理由を教えてほしい」。そんな鈴木社長の悩みを一気に解決し、町工場の働き方改革にもつながった「距離」で取引先を絞る戦略とは。
自社(スズキ機工)から1時間以内の取引先に絞るスズキ機工。鈴木豊社長は2代目。第二創業を実現した(写真/菊池一郎)

 「当社から片道1時間以上かかる場所にあるお客様からの仕事は、お引き受けしません」。産業用自動機械の設計・製作を手掛けるスズキ機工(千葉県松戸市)は、自社の事業戦略をこう掲げる。

 車で1時間以上かかる企業からの仕事は丁重に断る。移動時間が1時間以内の顧客なら、密接な関係を構築することができ、ライバル企業の追随を許さない商品、サービスの提供が可能になる、というのが鈴木豊社長の考えだ。

「現在はさらに営業エリアが狭まり、移動時間は実質40分以内くらいかもしれない」と鈴木社長は話す。この非常にユニークな方針を掲げたのは2010年頃からで、ある事件がきっかけだった。

図面を盗まれた

 「大至急で対応してほしい」

 2010年のある日、取引先の大手メーカーから大型装置の設計・製造を依頼された。懇意にしている先からの頼みとあって、鈴木社長はほかの予定をすべてキャンセルし、片道2時間半かけて先方の元に駆け付けた。現状確認や採寸の後、その日のうちに図面と見積もりを提出した。

 翌日、大手メーカーから「申し訳ないが、計画は中止になった」と断りの連絡が入る。前にも似たような経験があったので、鈴木社長はそれについては大して気に留めなかった。

 1カ月後、別件でまた大手メーカーを訪問したとき、鈴木社長は言葉を失った。以前、計画中止になったはずの装置が据え付けられていたからだ。

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