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宇野 隆史(うの・たかし)

楽コーポレーション社長

宇野 隆史

1944年、東京生まれ。早稲田大学を中退し、飲食業の道に入る。78年、楽コーポレーションを設立し、東京・経堂に大皿総菜料理店の草分けとなる居酒屋「くいものや汁べゑ」や「極楽屋」を開く。81年には東京・下北沢に「くいものや楽」を出店。88年には個人経営だった楽コーポレーションを株式会社に改組し、社長に就任。現在は、首都圏に約20店を展開する。

◇主な著書
トマトが切れれば、メシ屋はできる 栓が抜ければ、飲み屋ができる』(日経BP) 2011
笑う店には客来たる 楽しむ人には福が舞う』(日経BP) 2013

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

楽コーポレーション 宇野隆史社長の「若者よ、一国一城の主になれ!」

お客の心をつかむ発想は誰でもできる

2017年8月2日(水)

 居酒屋運営、楽コーポレーション(東京・世田谷)の宇野隆史社長の下には、独立して自分の店を持ちたい若者が続々と集まる。楽グループの店を訪れ「こんな楽しい店をつくりたい」と考えるようになるのだ。そんな若者たちに対し、宇野氏は「楽しい店をつくるのは難しくない。お客の心をつかむためのヒントは身の回りのどこにでもある」と語る。その接客の極意はどこにあるのか。

 「なんで、オレたちが花のことなんか覚えなきゃいけないのかな」――。
 金沢で関わっている居酒屋でね、この間、店に置いてある花をもっと活用しようよって話をしたら、みんなキョトンとした顔をしていてさ。

 店では定期的に、花屋にすごくきれいな花を持ってきてもらって生けているんだけどね。ただ、飾っているだけだったんだ。いくつかある系列店すべてに持ってきてもらっていて、月何万円もかかっているのに全く活用していないわけ。飲食店は、食べ物だけがお客さんにアピールする武器じゃないでしょ。店にあるものはなんでも生かさなきゃね。

 城下町だから華やかな生け花の文化が根付いていて、配達に来た花屋が、花器にきれいに花を生けてくれているの。でも、「これは何の花?」って店の子に聞いてみたら、みんな知らないと言う。もったいないよね。

 だったら、生けた花の横に小さな黒板でも置いて「今日の花はトルコキキョウです」なんて書いておけばとアドバイスしてね。花言葉も添えたらって話した。そのほうがお客さんが見ていて楽しいでしょ。オレが次に行った時にはさ、生けてある花材について聞いたら、店の女の子がうれしそうに「利休草とシャクヤクです」などと教えてくれた。

 そうやって花の名前を覚えればさ。お客さんが来た時に「入り口の花きれいだったでしょ。あの青い花なんだか知ってます?」なんて風に自然な会話ができる。3種類ぐらいの花を使っているから、「お客さん、全部当てたら一杯おごりますよ!」って遊びにしてもいいよね。

宇野氏がアドバイスする金沢の居酒屋のカウンターに置かれた生け花。花の種類や花言葉を書いた荷札を付けて、会話のきっかけをつくる

 小さなことで、それがすぐ売り上げに結び付くわけじゃないけど、「ああ、この店はこんなことにまで気を配っているんだ」「面白いな」とどこかで思ってもらえるはず。たとえ5人に1人でも10人に1人でも、何もやらないより絶対、誰かの心に引っかかってくれて、お店のファンになってくれる。そうした小さなことの積み重ねが、ボディーブローのようにお客さんの心にじわじわと伝わって店の繁盛に結び付くんだよね。

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