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宇野 隆史(うの・たかし)

楽コーポレーション社長

宇野 隆史

1944年、東京生まれ。早稲田大学を中退し、飲食業の道に入る。78年、楽コーポレーションを設立し、東京・経堂に大皿総菜料理店の草分けとなる居酒屋「くいものや汁べゑ」や「極楽屋」を開く。81年には東京・下北沢に「くいものや楽」を出店。88年には個人経営だった楽コーポレーションを株式会社に改組し、社長に就任。現在は、首都圏に約20店を展開する。

◇主な著書
トマトが切れれば、メシ屋はできる 栓が抜ければ、飲み屋ができる』(日経BP) 2011
笑う店には客来たる 楽しむ人には福が舞う』(日経BP) 2013

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

楽コーポレーション 宇野隆史社長の「若者よ、一国一城の主になれ!」

商売で「何にしましょう?」は禁句

2017年5月18日(木)

 居酒屋運営、楽コーポレーション(東京・世田谷)の宇野隆史社長の下には、独立して自分の店を持ちたい若者が続々と集まる。宇野社長は、料理が売れないと嘆く若者の気持ちがまるで分からないと話す。言葉の掛け方一つで、料理の出数は大きく変わるのだという。料理をしっかり売る秘訣とは何か。

 オレの娘が洋服屋でアルバイトをしていたことがあるんだけどね。「お似合いですよ」なんて言って頑張ってお客さんに薦めても、簡単には買ってくれないという。

 そもそも、店に入ってきたお客さんがみんな商品を買ってくれるわけじゃないでしょ。それからすると、オレたち飲食店はすごく恵まれているよね。だって、店に入ってきたお客さんは絶対商品を「買って」くれるわけでしょ。みんな、食べたり飲んだりするために来てくれるわけだからさ。だから、飲食店で料理が売れないっていうのは、オレ、本当に分からないんだよね。

売るということの本質

 この間、オレが今、色々とアドバイスをしている店で、おでん鍋に蓋がしてあったの。「どうして?」と聞くと、あまり売れなくて数を仕込んでないので、見栄えがよくないから蓋をしているという。蓋を開けてみたら、どこにおでん種があるの? ってぐらい、鍋はすかすかだ。

 おかしいよね。本来おでんっていうのはさ。客席から温まっているおでん種が鍋いっぱいに見えて食欲をそそる、最高の商売の武器なわけじゃない。それを蓋をして料理を見せないなんて、売ることを放棄しているに等しい。あまり数を仕込めないというならさ。鍋の底に石を入れるとかして底上げすれば、数が少なくてもこんもり種が入っているように見えて、食欲もそそられるわけでしょ。

おでんが煮える大鍋は、注文を増やす最大の武器だ(写真:高橋久雄)

 だいたい本当に売ろうと思ったらさ。各席に置いたメニューと一緒におでんだけの注文票を用意してもいいわけじゃない。1つ150円ぐらいでおでん種をリストにして、お客さんが注文数を書き込めるようにしてね。それでリストの最後に盛り合わせなんかも書いておけば、何もしないより絶対に売れるでしょ。

 うちのある店でお薦めメニューの紙を丸めて立てている客席のコップにおでん専用の注文票を一緒に挿しておいたら、いきなりダイコンのおでんが一晩で20個も出たんだよね。しかも、お客さんはおでんを1つ頼んだらそれだけではなかなか終わらなくて、じゃあ盛り合わせも頼もうか、なんてことになる。売るってのはそういうことだと思うんだ。

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