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久保 健一(くぼ・けんいち)

NHKエデュケーショナル・シニアプロデューサー

久保 健一

1972年、千葉生まれ。平成9年NHK入局。「プロジェクトX~挑戦者たち~」「プロフェッショナル仕事の流儀」などの制作に携わる。現在、NHKエデュケーショナルにて「アナザーストーリーズ~運命の分岐点~」や「世界入りにくい居酒屋」などを担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

時効スクープ ~今だから、聞けた

オグリキャップ、あなたは特別な存在でした

2017年3月21日(火)

オグリキャップ。通称「芦毛の怪物」。逆境をものともせず、ただひたむきに走る姿に人々は心を打たれた。(©︎JRA)

 卒業アルバムの後ろのほうのページには、在籍した3年間に起きたことが写真付きでまとめられている。が、最後の年の1月以降については触れられていないことが多い。その時期にはたいてい、アルバムは印刷過程に入っているからだ。締め切りは12月中旬、という学校も多かったのではないか。

 ところが、1990年12月末、印刷所に「このこともアルバムに載せてほしい、1ページ追加してほしい」と駆け込んだ高校3年生がいた。くじで負けて卒業アルバム委員になった彼が手にしているのはスポーツ新聞。一面は、有馬記念を勝ったオグリキャップが飾っている。

 出版関連の仕事をしている方ならご存じのことと思うが「1ページ追加」というのはなかなか受け入れがたい申し出だ。書籍や雑誌などの印刷物は、その制作過程の都合上、ページ数は4の倍数(たいてい16ページ)で増減させるのがセオリーだからだ。

 そんなルールを知るはずもない彼は「この『大事件』は自分たちの卒業アルバムに載せるべきだ」と思い、大学受験を間近に控えているにも関わらず、いやいや引き受けた仕事をぎりぎりまで全うしようとした。

 たしかにそれは、大事件だった。

無名の血筋、中央6連勝、過酷な戦い

 血統がものをいう競走馬の世界で、ほとんど無名の血筋。地方競馬で実績を上げて1988年に中央競馬へ移籍すると、デビューから6連勝し、有馬記念をも制した。最後方から末脚一閃、並み居る良血馬たちを鮮やかに抜き去るオグリキャップは“怪物”と賞され、押しも押されもせぬスターとなった。

1988年、中央デビューしたオグリキャップは6連勝、有馬記念も制した(©︎JRA)

 翌年は前半を捻挫と炎症でほぼ休み、後半から過酷なスケジュールで戦いに挑み、ほとんどのレースで1番人気となり、6戦3勝。その名は老若男女に知られ、ぬいぐるみまで作られ、ゲームセンターではUFOキャッチャーの景品に芦毛の小さな馬が積まれた。

 競馬はオジサンだけのものではなくなり、高校生にも身近な存在になった。日本中央競馬会がJRAというスマートな略称を名乗り、テレビCMにも力を入れた影響も大きい。ルール上、勝ち馬投票券こそ買えないものの、背伸びをしたい高校生にとって、競馬馬の名前や血統、戦績を知っていることは、大人びたカッコいいことになっていた。かの卒業アルバム委員のクラスメイトの中には、修学旅行で京都へ行き、自由行動日に滋賀まで足を延ばし、栗東トレーニングセンターを見学した者までいた。

 その人気を牽引したのがオグリキャップだった。

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