岡部 直明

岡部 直明

ジャーナリスト
武蔵野大学 国際総合研究所 フェロー

岡部直明「主役なき世界」を読む 「弱者の恫喝」対「強者の恫喝」の行く末

米朝合意を「核兵器なき世界」にどうつなげるか

  • 2018年06月19日(火)
6月12日、昼食前に並んで散策するドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金大恩委員長(写真:ロイターアフロ)

 歴史的であるはずの米朝首脳会談の評価が割れている。朝鮮半島の完全な非核化では合意したが、そのプロセスが依然、不透明であるからだ。世界に「核保有の優位」があるかぎり、北朝鮮は簡単には核放棄せず、「弱者の恫喝」に戻るという疑念が払しょくできないからでもある。

 米朝協議を通じて非核化へのプロセスを確かにするのは当然だが、それだけではすまない。「核兵器なき世界」への道に踏み出して初めて朝鮮半島の非核化は実現する。とりわけ朝鮮戦争の終結にかかわる米ロ中には徹底した核軍縮が求められる。米朝合意を「核兵器なき世界」にどうつなげるか、唯一の被爆国である日本の役割は決定的に重要である。

緊張は緩和されたが

 米朝首脳会談は、「弱者の恫喝」と「強者の恫喝」が対峙するなかで実現した。トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長がともに緊張しきって見えたのはそのためだろう。

 超大国である米国と貧しい北朝鮮の経済力の差はとてつもなく大きい。韓国の研究者の推計では韓国は北朝鮮の48倍の国内総生産(GDP)がある。米国はその韓国の12倍の経済力があるから、米国と北朝鮮の経済力は600倍近くの格差がある。それどころか1000倍の格差があるという説もある。

 そんな超大国から「対等の首脳会談」を引き出したのだから、北朝鮮による「弱者の恫喝」がいかに大きかったかを物語る。北朝鮮の核・ミサイル開発は北東アジアのみならず、世界の脅威になっていた。

 その北朝鮮に対して、軍事行動も選択肢としたトランプ米政権の「強者の恫喝」もまた大きかった。国連決議による経済制裁と合わせて、北朝鮮を窮地に追い込んだといえる。

    著者プロフィール

    岡部 直明

    岡部 直明(おかべ・なおあき)

    ジャーナリスト
    武蔵野大学 国際総合研究所 フェロー

    1969年早稲田大学政治経済学部を卒業し、日本経済新聞社に入社、東京本社編集局産業部、経済部記者、ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、経済部次長、金融部次長、論説委員などを経て、取締役論説主幹、専務執行役員主幹、コラムニストを歴任。早稲田大学大学院客員教授、明治大学国際総合研究所フェローをつとめる。2018年より現職。「ベーシック日本経済入門<第4版>」(日本経済新聞出版社)、「応酬 ─ 円ドルの政治力学」(同)などのほか以下の著書・編著がある。

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