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井上 孝司(いのうえ・こうじ)

テクニカルライター、軍事研究家

井上 孝司

日本マイクロソフトを退職後、1999年にテクニカルライターとして独立。主に技術解説記事を手掛け、IT分野から鉄道・航空・軍事まで幅広くカバーしている。

◇主な著書
戦闘機事典』(イカロス出版) 2017年
戦うコンピュータ (V)3』(潮書房光人社) 2017年
ドローンの世紀 - 空撮・宅配から武装無人機まで』(中央公論新社) 2015年

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

トレンド・ボックス

防衛予算が5兆円超えても国内還元は少ない

2017年12月18日(月)

年末年始の特別企画として、日経ビジネスオンラインの人気連載陣や記者に、それぞれの専門分野について2018年を予測してもらいました。はたして2018年はどんな年になるのでしょうか?

(「2018年を読む」記事一覧はこちらから)

イージス装置一式を装備した海上自衛隊のこんごう型護衛艦「ちょうかい」(写真:井上 孝司)

軍事分野におけるトレンドの変化

 軍事分野では冷戦崩壊後、平和維持活動をはじめとするMOOTW(Military Operations Other Than War)、つまり「戦争以外の任務」が重視される傾向にあった。その後、2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロ事件から後は、国際テロ組織や各種武装勢力といった、国家ではない各種の武装集団を対象とする「対テロ戦・不正規戦」を重視する傾向が続いていた。しかし、ここ数年ほどの間に、こうした流れに変化が生じてきている。

 1つのきっかけは、2014年に発生したロシアのクリミア併合と、その後に発生した欧米諸国とロシアの関係悪化。もう1つは、南シナ海の島嶼を対象とする領有権争いと中国の動向。中国が、すべての島嶼を自国の領土と主張した上に、人工島の造成や軍事施設の建設によって着々と既成事実を積み重ねているのは御存知の通りだ。

 そして、厳しい制裁措置にもかかわらず核開発や弾道ミサイル開発を続行して、「核抑止力の確立による体制維持」を目指す北朝鮮の問題については言うまでもない。

 こうした状況から、「国家の正規軍同士が武力衝突する事態」を想定する状況に、いくらかベクトルが戻りつつあるのではないか。すぐにヨーロッパやアジアで大規模な正規軍同士の衝突が起きる可能性は低いにしても、「紛争への備え」による抑止や示威を図る方向に進んでいるのは確かだ。

日本の防衛予算は「過去最高要求」となってはいるが...

  それでは、こうした状況は我が国にどういった影響をもたらしているか。冷戦崩壊後は防衛予算の削減傾向が続いていたが、第2次安倍政権が編成した2013年度(平成25年度)以降は増加に転じている(下のグラフ参照)。底となった2012年度(平成24年度)の4兆6500億円と比べると、2018年度(平成30年度)の概算要求金額は5兆219億円なので約4000億円増えている。しかし、グラフをよく見れば分かる通り、2000年代の水準に"回復"したに過ぎない。これが、もっとも見えやすい変化だ。何割、あるいは何倍といったオーダーで防衛費が増額する事態は考えられないが、小さいながらも無視はできない変化である。

防衛予算の推移
防衛省の資料を基に本誌作成。金額は歳出ベース(2018年度は概算要求)。SACO関係費、米軍再編関係経費のうち地元負担軽減分及び新たな政府専用機導入に伴う経費を除く

 また、日米安保体制だけでなく、他国との防衛交流・防衛協力の動きが進んでいるのも近年の特徴と言える。米国以外の国と合同訓練・合同演習を行う事例が増えているのは、その一例だ。

 そうした流れの延長線上に、「武器輸出三原則」に代わる「防衛装備移転三原則」の策定もある。期待されていたオーストラリア向けの潜水艦輸出は実現しなかったが、海上自衛隊の中古練習機をフィリピンに供与する話は実現した。このほか、2016年11月の半ばに日本経済新聞が「日本とイギリスによる空対空ミサイルの共同開発」について報じた。その後、12月14日の日英2+2会合の後でリリースされた声明には、「試作研究と発射試験を含む次の段階の作業を、早期に推進することへの期待を表明」という趣旨の記述が盛り込まれた。米国以外の国との間で装備品を共同開発するのは、以前には考えられなかった話である。

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