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髙瀬 文人(たかせ・ふみひと)

フリージャーナリスト/編集者

髙瀬 文人

1967年宇都宮市生まれ。法政大学法学部卒業後、三省堂で六法全書や出版社PR誌の編集と出版宣伝、日本評論社で心理・精神医学雑誌、法律雑誌、単行本の編集に携わり、世田谷一家殺害事件や神戸連続児童殺傷事件などで搦め手からのスクープを発表、『リーガル・リサーチ』で新しい法律書のジャンルを切り拓く。2008年独立。月刊『FACTA』で司法や事件の記事を、『東京人』にルポルタージュから趣味性の高い記事までを執筆。著書に『鉄道技術者 白井昭』『1点差で勝ち抜く就活術』『ひと目でわかる六法入門』。現在、雑誌『外交』の編集にも携わる。

◇主な著書
鉄道技術者 白井昭』(平凡社) 2012

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

「シン・ゴジラ」、私はこう読む

妄想:ゴジラが来た東京都はこう動く(後編)

2016年9月27日(火)

日経ビジネスオンラインでは、各界のキーパーソンや人気連載陣に「シン・ゴジラ」を読み解いてもらうキャンペーン「「シン・ゴジラ」、私はこう読む」を展開しています。
※この記事には映画「シン・ゴジラ」の内容に関する記述が含まれています。

 1954(昭和29)年11月に封切られた『ゴジラ』は、同年3月、マーシャル諸島ビキニ環礁での水爆実験による放射性物質(死の灰)を浴びた「第五福竜丸事件」をモチーフに作られたことはよく知られているが、ゴジラはまた、当時まだ生々しい記憶が残る、太平洋戦争のメタファーでもあった。

 オリジナルのゴジラのストーリーの中で直接それに触れるシーンは非常に少ないが、通勤電車の乗客が「また疎開か」と話題にする短いシーンがある。また、銀座を破壊するゴジラから逃げ遅れた子ども2人を母が抱き寄せて「これからお父ちゃんのところに行くのよ」と震えるシーン(もちろん、お父ちゃんは戦死したのだ)は、観客それぞれの戦争の記憶を揺さぶり、大いに涙を誘ったと思われる。

 2016年の『シン・ゴジラ』で暗に「脅威」のメタファーとして暗示されているのは巨大地震、原発事故、そして、きな臭さを増している朝鮮半島や東シナ海の問題が連想させる戦争への不安であろう。

(c)2016 TOHO CO.,LTD.

 私たちは実際に3.11を体験した。それだけに、生半可な仕掛けではリアリティを感じることはもうできない。これは歴代ゴジラ史上一番の難関であった。そこで庵野秀明総監督が考え出したのが、現実の危機管理に関する法制度を元に、日本政府がゴジラにどう立ち向かうかというシミュレーションだった。

 前半では、「東京都地域防災計画」をもとにシミュレーションを行い、ゴジラが来た場合、東京都をはじめとする自治体は即応体制に従ってもっと活躍するであろう、という話をしてきた。

 ゴジラという架空の設定に対して、現実の危機管理・即応体制をあてはめてみたわけだが、ここからは、現実の脅威である震災に対して、実際に東京都がどう対応してきたか、さらに、現実の震災から汲み取られた教訓が、どのように首都直下型地震の際の即応体制整備に生かされているのか。つまり、「3.11というゴジラ」と対峙した東京都が当時どのように対応し、その後この知見をどう生かしているのかを見ていこう。

 このようなシミュレーションを自治体が有していることを私たちが知ることは、有事の際の行動に、大いに役立つはずだからである。

 本稿で扱う題材は、前編でも触れたが月刊『東京人』2011年7月号特集企画の取材に基づいている。

東京の震災対策「震度6弱」が即応のポイント

 2011年3月11日。午後2時46分から少し遅れて。48階建ての新宿・東京都庁本庁舎がゆっくりと横に揺れ始めた。次第に揺れは大きくなり、27階の生活文化局ではキャスターつきの椅子が床を動き出してどよめきが広がった。

 防災センターでは緊急地震速報の警報に続き、都内各地の震度が、次々にディスプレイに表示される。100人ほどの防災部員が集結。大型スクリーンのスイッチが入れられ、情報収集にかかった。この日在庁していた石原慎太郎知事(当時)も防災センターに入っている。

 東日本大震災では、東京の最大震度が5強だった。都庁では、震度6弱以上で自動的に立ち上がる災害対策本部ではなく、危機管理監をトップとした「災害即応対策本部」として対応。警視庁では「被害が発生している」という情報を得て、対策本部が立ち上がった。また、東京消防庁では震度5強で「震災非常配備体制」が取られ、全職員が集められた。

 都内上空を警視庁と東京消防庁のヘリが飛び、情報を収集。町田市のスーパーで駐車場の車路が倒壊、火災が33件、化学工場の事故などが発生したが、通常の消防力で対応できると判断された。

 

 大地震の即応体制でポイントになる指標は「震度6弱」である。東京都地域防災計画(震災編)では、震度6弱以上で都庁に災害対策本部(本部長=知事)が自動的に立ち上がるように定められている。その後の動きは、ゴジラのシミュレーションで描写したのと同様に、情報収集、分析、都、警視庁、東京消防庁、自衛隊に分かれての対処方針策定が行われる。

 警視庁では震度6弱かつ大規模な災害が発生した場合、「震災警備実施計画」に基づき、桜田門の本庁と10ヵ所の方面本部、102の警察署に災害警備本部が設置され、9つの機動隊、レスキュー車などが配備されている特科車両隊が出動準備態勢に入る。

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牛島 信 弁護士