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神田 憲行(かんだ・のりゆき)

ノンフィクション・ライター

神田 憲行

1963年、大阪市生まれ。関西大学法学部卒業。大学卒業後、ジャーナリストの故・黒田清氏の事務所に所属。独立後、ノンフィクション・ライターとして現在に至る。著書に、『ハノイの純情、サイゴンの夢』(講談社文庫)、『横浜vs.PL』(朝日文庫)、『ベトナム・ストーリーズ』(河出書房文庫)、『「謎」の進学校 麻布の教え』(集英社新書)など。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

今だから知りたい 憲法の現場から

改憲の論点3:抑止力としての憲法裁判所の意義

2017年1月20日(金)

 本日(2017年1月20日)、通常国会が招集される。自民党は衆参両院の憲法審査会の場で、改憲項目の絞り込みを進めるという。

 憲法改正を論ずるとは、この国の望ましい統治機構の在り方を模索することでもある。憲法改正の必要はあるかないかという入り口の議論ばかりではもったいない。具体的な論点についての議論を重ねれば、たとえ改正に至らなくても、国民の憲法に対する意識や「この国のかたち」について考えが進むはずだ。

 政治家たちが憲法問題を政局化せず正面から論じ、国民はその議論を追いつつ、自らの見識を深めていく。憲法改正論議は私たち国民にまたとない政治教育の場となるだろう。

 各党・議員の発言の中には、興味深い憲法改正の論点が含まれている。いずれも改正するかしないかは別として、そのような議論そのものが議会制民主主義の発展に資するものである。

 前々回の「参議院の合区解消」、前回の「内閣の衆議院解散権の拘束」に続き、今回取り上げる論点は「憲法裁判所の創設」だ。

(前回記事「改憲の論点2:歯止めなき衆院解散権の是非」から読む)

2015年9月に参院を通過し、成立した安保法案。憲法審査会があれば、その結果は違うものとなったかもしれない。(写真:ロイター/アフロ)

憲法裁判所と司法裁判所の違い

 「憲法裁判所の創設」という論点も興味深い。

 この論点が浮上してきた背景には2015年の、集団的自衛権の一部を容認をする新・安保法制の成立がある。その背景を説明する前に、まず憲法裁判所とは何か説明する。

 憲法裁判所とは具体的な事件を前提としないで、法律など国家行為が憲法に適合しているか否かのみを判断する裁判所である。日本の裁判所は具体的争訟事件の解決を目的としており、これは司法裁判所と呼ばれて憲法裁判所とは区別される。

 憲法裁判所はフランス、ドイツ、韓国にもある。アメリカにはなく、日本と同じく司法裁判所が違憲審査権を持っている(というか、日本がアメリカ型なのたが)。

 憲法裁判所が司法裁判所と大きく違う点はふたつある。

 まず、具体的争訟事件によらず、法律の合憲性を審査することができる。具体的な争訟事件とは、要するには自分が損をしたとか、人権が侵害されたということだ。

 日本の裁判所では、例えば、具体的な紛争の中で訴えた側(原告)から法律の違憲性が主張され、裁判所が憲法判断なしに解決ができないと判断したとき、法律の合憲性が審査される(「一票の格差」訴訟は特別な訴訟形態をとっている。後述)。たとえ原告がいくら「この法律は憲法違反だ」と主張しても、憲法判断せずにその訴訟について解決できると裁判所が判断したときは、その法律について裁判所は合憲・違憲を示さなくて良い。このような違憲審査制度を「付随的違憲審査制」という。

 一方、憲法裁判所は「この法律は違憲の疑いがあるから調べてくれ」という争い方が成り立つ。具体的な紛争がなくても、憲法裁判所はその法律が合憲か違憲か判断することができる。これを「抽象的違憲審査制」という。

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