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「それ、手嶋龍一じゃなくて寺島実郎さんです」

ウィキに頼ると失われるもの

2017年4月6日(木)

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先週掲載した「インテリジェンスのいま」をめぐる池上彰さんとの対談(こちら)は、手嶋さんの近著『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師 インテリジェンス畸人伝』がきっかけでした。

汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師-インテリジェンス畸人伝』(マガジンハウス)
世界のVIPを震え上がらせた「パナマ文書」、告発サイト「ウィキリークス」の主宰者アサンジ、CIAの国家機密を内部告発したスノーデン、詐欺師の父を持ち、スパイからベストセラー作家に転身したジョン・ル・カレ、銀座を愛し、ニッポンの女性を愛した、20世紀最高のスパイ・ゾルゲ…古今東西、稀代のスパイはみな、人間味あふれる個性的なキャラクターばかり。人間味あふれるスパイたちが繰り広げるドラマチックなストーリーは、同時に、今の時代を生き抜くために欠かせない、インテリジェンスセンスを磨く最高のテキストだ。巻末には手嶋龍一氏が自らセレクトした、「夜も眠れないおすすめスパイ小説」ベスト10付。

 本で描かれるのは、告発サイト「ウィキリークス」の主宰者ジュリアン・アサンジをはじめ、CIAの国家機密を内部告発したエドワード・スノーデン、スパイからベストセラー作家に転身したジョン・ル・カレ、20世紀最高のスパイ、リヒャルト・ゾルゲ……と、古今東西の人物。稀代のスパイたちが織りなす世界は、さながら「インテリジェンス万華鏡」の趣です。手嶋さんがこの本を執筆された動機は何だったのでしょうか。

手嶋:池上彰さんとの対談でも触れましたが、情報の核心はヒューマン・インテリジェンスです。「ヒューミント」と呼ばれる情報の重要性をインターネット時代に育った若い方々にもっと知ってもらいたかったのです。

 情報過多の現代を生き抜くには、どれが真に必要とされる情報なのか、それを判断する自分のセンサーを磨き抜いておくことが大切です。宝石のような情報は、人と人が直に触れ合う中からしか出てこないのです。そのことを具体的な例を通じて伝えたかった。

 いまの人たちは人に会いに行くとき、条件反射のように、パソコンの検索サイトを叩いて事前の知識を得ようとします。ウィキペディアがその筆頭格です。

それ、寺島さんのご経歴です

どきっ。しかし、デジタルネイティブの世代は、人と会う前どころか、会っている最中に、その相手のことをウィキしています。

手嶋 龍一(てしま・りゅういち)
外交ジャーナリスト・作家。1949年、北海道生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。元NHKワシントン支局長。2001年の9.11テロ事件では11日間にわたる24時間連続の中継放送を担当。自衛隊の次期支援戦闘機をめぐる日米の暗闘を描いた『たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て』、湾岸戦争での日本外交の迷走を活写した『外交敗戦―130億ドルは砂に消えた』(共に新潮文庫)は現在も版を重ねるロングセラーに。NHKから独立後の2006年に発表した『ウルトラ・ダラー』(新潮社)は日本初のインテリジェンス小説と呼ばれ、33万部のベストセラーとなる。2016年11月に書下ろしノンフィクション『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師-インテリジェンス畸人伝』を発表。(写真:大槻純一、以下同)

手嶋:老婆心ながら、あれだけはやらないほうがいい。理由はあきらかです。まず、その情報に間違いが多い。以前、経団連の夏期セミナーで講演したのですが、事務局が読み上げたぼくのプロフィールが傑作でした。それによると、ぼくは最初に三井物産に入社し、それからNHKに入局したことに。卒業した学校も間違い。当時のウィキが「寺島実郎さん」の経歴とごちゃごちゃにしていたんですね。

寺島さんと手嶋さんは、「北海道ご出身」「論客」「名前に『テ』と『シマ』が付く」というところで共通しています。そのあたりで混乱が起きたのかと。

手嶋:寺島さんは、なかなか鋭い論者ですから、ミックスされて光栄です。でも、人柄はぼくのほうがいいと、みなさん言ってくれます。基礎情報ですら、それほど不正確です(笑)。

 だいたいウィキペディアをはじめとして、ネット上の情報は、誰が書いたか分からない。それほど危うい情報にすがって、人を訪ねていくなんて危険です。一種の先入観、偏見をそのまま引きずって、生涯の人脈になる可能性のある人を訪ねていくことになるのですから。しかも、誰が書いたものか分からない文体に引きずられると、文章も荒れてしまいます。ああ、恐ろしい。

文体とは書き手の品性に直結するものですから、そこは恐いですね。

手嶋:ぼく、文藝春秋から出ている『インタヴューズ』(文春学芸ライブラリー)のシリーズが大好きでしてね。あの中に第一次世界大戦時のフランスの宰相ジョルジュ・クレマンソーを、アメリカ人ジャーナリストが訪ねていく場面があります。

「お引き取りを」からインタビューは始まる

クレマンソーをウィキしますと、"第一次大戦時のパリ講和会議で、ベルサイユ条約を調印した人物"で、彼の対独強硬論が、第一次大戦後の仏独関係の基調となったそうですね。

手嶋:検索を控えるように説いているそばから、ウィキペディアを使うんですから、ほとんどビョーキですね。

 それはさておき、クレマンソーへのインタビューは、彼が敷いた対独強硬体制、いわゆるベルサイユ体制の中で、ドイツが再び台頭する時代に行われているんです。

そんな微妙な時期に、そんな大物がインタビューに応じるのですか。

手嶋:だから秘策を尽くしてドアをこじ開けたのでしょう。アメリカ人ジャーナリストは無論アポを取ってパリのアパルトマンを訪ねるのですが、この難物は「なに、わしにインタビューを? まったく聞いておらんな。お引き取りいただこう」となる。

写真を見ると、すごまれたら怖そうな人ですね。

手嶋:そう、「フランスの虎」の異名を取っていた人物です。インタビューは、そんなクレマンソーの、挑みかかるような脅しのシーンから始まっています。それゆえ、現代史の巨頭を描くみごとな導入部になっている。これ以上に鮮烈な幕開けはないでしょう。でも、ウィキ頼みではこういうハプニングは起こらないと思います。

うーん。

手嶋:ぼくだけじゃなく、あのヘンリー・キッシンジャー博士も「記憶の力が弱くなるから、ウィキペディアと縁を切るべきである」と言っていますよ。

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「「それ、手嶋龍一じゃなくて寺島実郎さんです」」の著者

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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