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「死者のホテル」が繁盛する時代

待機遺体が増えている

2016年11月2日(水)

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川崎市にある遺体ホテル「そうそう」の遺体安置室。棺を置くスペースとソファが置かれているのみ(写真提供:そうそう)

 「遺体保管所 絶対反対」

 ただならぬ文言が書かれたのぼり旗が、ひとつの建物を取り囲んでいた。

 町工場が点在する神奈川県川崎市中原区。建売住宅が並び、子連れ女性の姿がある。東京都との境を流れる多摩川が目の前だ。対岸には二子玉川の大型ショッピングモールが見える。

 穏やかな街の雰囲気とは対照的に、のぼり旗に囲まれた「遺体ホテル」と呼ばれる施設はあった。遺体ホテルは、ひと言でいえば、死後、葬式や火葬をするまで遺体を安置しておく民間施設のことだ。事情があって自宅に保管できない遺体、あるいは火葬場の不足による「待機遺体」が次々に運ばれてくる。遺体の保管場所に困った遺族が、すがる気持ちでやってくる。

 ネイビーとシルバーのツートンカラーの外観が特徴的な3階建て。この建物に看板の類は見当たらず、一見すれば倉庫のよう。近隣の住民感情に配慮していると思われる。

 住民の反対運動は、これでも落ち着いてきたのだという。

 建設計画が持ち上がってから、地元公民館で幾度となく説明会が開かれた。その様子は、テレビのワイドショーなどでも取り上げられ、住民が経営者を厳しく糾弾するシーンが流れた。

 「厳粛な人の死を、金儲けに使ってけしからん」
 「こういう施設が近所に存在すること自体、気持ち悪い」

 完成までに住民説明会は計5回開かれた。1回当たり100名以上の住民が参加したが、場は荒れた。主催者側の出席者は「そうそう」という名の遺体ホテルを運営するアート企画の代表、竹岸久雄一人。会場は怒号が飛び交い、竹岸の感情も昂った。

 「法的には何の問題もありません。よく考えてください。人はみんな死ぬんですよ。みなさんもこういう施設を必要とする時が来るかもしれない」

 テレビのワイドショーで取り上げられた際、司会者やコメンテーターの受け取り方は番組によって様々だったが、多くは「難しい問題」と締めくくられた。

 竣工後は住民への内覧会を開いた。

 「思ったよりも奇麗ね」

 内覧した住民はこうつぶやいた。

 竹岸は遺体を搬入する際には外から見えなくするなど、住民感情には特に気を遣った。ようやく営業を始めたのが2014年10月のことだ。遺体ホテルの名前は「そうそう」とした。「葬送」が語源だ。死者を見送る場所として「葬荘」という語呂合わせもできる。

 「ここは、どなたでも利用できます。反対運動で、一時はどうなることかと思いましたが、おかげさまで、利用数は右肩上がりに増えてきています」

コメント8

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「「死者のホテル」が繁盛する時代」の著者

鵜飼 秀徳

鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり)

日経おとなのOFF副編集長、浄土宗僧侶

京都市景観市民会議委員(2016年)、佛教文化学会会員。 1974年生まれ。成城大学文芸学部卒業後、報知新聞社へ入社。2005年日経BP社に入社。日経ビジネス記者などを歴任。2016年4月より日経おとなのOFF副編集長。浄土宗僧侶の顔も持つ。正覚寺副住職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師