(前回から読む)
「振り込め詐欺」の最前線に立たされているのは、実は金融機関の窓口の人々だ。ATMの限度額が下がったため、多額の現金を手に入れるには、直接窓口に行くしかない。現金を下ろすよう手続きをしようとする被害者たちに、「これは詐欺ではないか」と気づかせる難しい役割を、窓口に立つテラー、そして後方業務を担当する金融機関の職員たちが負わされている。
光が当たることがほとんどない彼ら、彼女らの、振り込め詐欺との戦いを、ベテランの女性行員が、率直に語ってくれた。
(本記事はその性格上、本人の特定につながる部分や具体的な金額を一部伏せております。ご理解いただければ幸いです)
Aさんのお勤めの金融機関で、窓口で振り込め詐欺をブロックする体制というのはどうなっているんでしょうか。
A:X00万円を越える現金支払いについては、全部私たち、ベテランの役席者の判断が求められるようになっています。正直にお話ししますと、60歳未満のお客様でしたら、本人だとご確認できれば承認します。でも、その際に下ろされる目的はお聞きしています。最近、50代の方の振り込め詐欺被害も出ていますから。
なるほど。それでも「自分のお金を下ろすのに、なんで窓口で使途を聞かれるんだ」という、お客の側からの反発があるわけですよね。
意外に「現金でないと」というお客様は多いんです
A:それはもう。ですので、「警察からアンケートへの協力要請がありまして、お願い致します」という持ちかけ方をします。自分が直面しているのは振り込め詐欺ではないかと、気づいていただくためのアンケートですね。
どんなことを聞くのですか?
A:あまり詳しく載せると、「こう書け」と、犯人側に利用されませんか?
ですね、公表は控えましょう。前回もお聞きしましたが、まさかお客さんに「詐欺かどうか確かめてからもう一度来い」というわけにもいかないし、苦しい対応ですね。
A:「警察に相談されては?」くらいは申し上げますが。でもそれだけで「何を大げさな」と怒る方もいます。うちからの通報で、「話を聞きたい」と警察官が自宅に行くと「よけいな気を回すな」と、叱られることもあるようです。
それにしても、今時、高額の現金を下ろしたい人は、基本的に振り込み詐欺の被害者、と思ってもいいくらいじゃないんでしょうか。
そこまでしなきゃ守れないなら、老人税でも取るしかないのでは?
自分もいつか通るかもしれない道とわかってはいても、そこまで社会や金融機関にコストを求めないといけないのなら、仕方ないのでは。
それだけの保障サービスを勤労者の法人税住民税や事業者の支払利息から捻出しようとするのは、道義的にどうかと思う。そこは受益者負担で。
あ、銀行がオレオレ詐欺保険を売るって手もありますね。(2015/09/30 08:55)