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あのマンションは本当に「傾いている」のか?

建物の基礎工事を基礎の基礎から・05

2015年12月11日(金)

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 この連載を通して「建築物の基礎の基礎」を聞かせていただいて思うのは、専門家の方がまさしく文字通り「地面の下のことは、掘ってみるまで分からない」と考えていることだ。地盤を直接目で見ることはできない以上、穴を掘る機械のトルク(電流値)の変動や標準貫入試験などで、「近似値」を集めて推定するしかない。

 こうした近似値、二次情報には、設計者やオペレーターが変われば、見方や数値も変わりかねないほどあいまいな部分がある。だから慎重に、推定と検証を重ねて、安全を確保できるように設計・施工する。そして、その際に危険なのは、「推定」が「事実」として一人歩きをすることだ。

 これは、施工現場だけの話ではない。

 今回の事件報道でも、どこまでが「事実」で、どこからが「推定」なのかが、いつの間にか分からなくなっている気がする。その状態で犯人捜しや原因を決めつけるのは、基礎がいいかげんな建物に住むようなものだ。いずれ、沈下や傾きが起こるかもしれない。

 まずは引き続き、大手ゼネコンの技術陣の方々にお聞きしていく。そして最後に、ここまでの学びを元に、今回の問題をゼロから合理的に振り返って考えてみたい。

前回までと同様、これもあくまで「客観的な知識」としてのスタンスで教えていただきたいのですが、建物が傾く原因というのは基本的に、杭の施工不良以外には考えにくいのでしょうか?

M:そんなことないですよ。その前に、「傾斜」という言葉についてもしっかり定義しておいたほうがいいですね。建物には窓・入口など開口がたくさんあります。ですので、金庫のように「一部が下がったら建物全体が傾く」とは限りません。一部だけが沈下することもあるんです。ですから、壁にひび割れが入ったり、床が斜めになっているからといって、傾斜しているとは言えません。この場合は、「建物の一部が沈下している可能性がある」ということになります。

 原因も杭の施工不良とは限りません。設計が適切でなく、構造上の原因がある場合には、建物の基礎梁がひび割れて折れたり、床が斜めになったり、又は凹むことがあります。これも「傾斜」と思われやすそうですね。地盤については、地層の傾斜、がけ地、切土・盛土の造成地のように建物の場所で支持力が変わる場合に、沈下が起きやすいです。地震時の液状化,豪雨時の地すべりなどで安定した地盤が局所的に弱化することも沈下の原因になります。

「改ざん=傾斜」ではありません

M:施工記録の改ざん行為があった、それを認めたから(旭化成建材の)会見が開かれた、ということかもしれませんけど、ただ、「改ざん=傾斜の原因」ということかどうかは分からないですよね。

分かりませんか。(編注:12月8日に国土交通省が開いた有識者委員会で、委員長の深尾精一・首都大学東京名誉教授が「データ流用と施工不良の関係性は低いと考えられる」と発言している)

M:当日の記者会見の発言をよく読めば、「杭が支持層に届いていないことが、傾斜の可能性のひとつの原因としてはあり得る」という“以上”の発言は、旭化成建材側からはなかったんじゃないですか。といいますか、それ以上のことは言えないはずです。原因を簡単に特定できるとは思えない。

K:そもそも、「傾斜」という言葉を使っていいのかどうかもわかりません。事実として判明しているのは、「建物の間で、外壁のタイル目地が2.4cmずれている」ことだけです。

その、エキスパンション(建物を繋ぐ部分)の部分のタイル目地のずれに住民の方が気づいたのが発覚のきっかけでしたが、じゃ、そもそも2センチ程度のズレは普通に起こるものでしょうか。

M:ちゃんと施工していれば、普通は考えられない。東日本大震災の影響があるので一概に言いにくいですけれど。

きちんと作れば、変形はしないものだ、と。

M:いえ、どんなに硬いものであっても力がかかれば変形するんですよ。鉄だって押せば縮むんですから。地盤もそうなんです。だから「固い地盤で支える、安全な地盤で支える」といっても、変形は必ずするんですよ。建物は造った段階から、1センチ、2センチは必ず下がるんです。そして、沈みきった状態で安定する。それ以降は下がらない。地盤によりますが、竣工時点で安定します。そのときにちゃんと、竣工図と合うように作っているんです。

そうか、地盤の変形まで読み切って造るんですね。

M:その沈み込みの変化を追うためにも、施工管理で一生懸命、測って調べるわけです。最後の状態を設計図通りのレベルに収めるためにいろいろ工夫をする。

杭は長く、深いほどいいか?

ふーむ。話が飛びますが、この現場で使われたのは旭化成建材の工場製の既製杭だから、杭の長さは規格で決まっているんでしたよね。

N:PHC杭のコンクリートポール・パイル協会のページによると、JIS標準規格で杭長は最大で15メートルとなっていますね。4メートルから15メートル、1メートル単位刻み。外径は300から1200ミリ、と書いてあります。

それで、発注された長さが足りなくて、時間が無くてそのまま使ったから支持層に届かなかったんじゃないか、という指摘も見ますが、これについては。

N:今回の件についてはお答えは出来ませんが、やはり誤解されていると思うのは、杭は長ければ長いほどいいとは限らないことです。

支持層に深く刺さるんだからいいんじゃないですか。例えば、事前の調査では15メートルだったので、杭もそれを用意した(杭種や工法によるが、杭径程度又は1メートル以上支持層に入れる)。ところが掘ってみたら、12メートルのところから支持層が出た。PHC杭は切って使うわけにはいかないけれど、でも、長い分には丈夫になるからいいか、とか。

M:そんなことはしません。地盤というのは堆積していくので、深ければ深いほど強いとは限らないんですよ。下の方の地盤が必ずしも固いわけじゃないんです。

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