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日本人はなぜ「お詫び」が好きなのか

社会心理学の専門家に聞く企業が陥る謝罪失敗の法則

2015年12月7日(月)

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 12月7日号日経ビジネスの特集「謝罪の流儀」では、旭化成やトヨタ自動車、タカタなど最近起きた具体例を挙げながら、企業のリスク管理について分析した。

 ソーシャルメディアの普及により、世論の生まれ方は一変したが、「謝罪好き」という日本人の国民性は変わっていない。日本人に適した危機管理を実践しなければ、企業は取り返しがつかないほど大きな傷を負うことになる。

 良い謝罪・悪い謝罪について、『失敗しない謝り方』著者の大渕憲一・東北大学大学院教授(社会心理学)に話を聞いた。

(聞き手は林英樹)

ここ数年、メディアを通じて企業の謝罪会見をよく目にします。足元では横浜の「傾きマンション」問題で会見を開いた旭化成が印象的でした。

大渕:あの会見では、旭化成の浅野敏雄社長が涙を流しましたね。あれが良くなかった。これから問題を解決していくという最初の段階で、被害者側が求めていたのはしっかりとした対応だったはず。具体的な話までしなくても、しっかりとやってくれるという信頼感を求めていた。それなのに涙という情緒的な反応を見せ、被害者側の期待に応えられなかった。

 涙を全否定するわけではありません。ただ、すべての手を打ち、問題が解決した後に、流すべきでした。もちろん戦略的に泣いたわけではないのでしょうけど。トヨタ自動車の豊田章男社長が米公聴会で流した涙も同じです。涙は、自らが被害者だとアピールしているかのような印象を与えます。絶対に取ってはいけない行動のひとつですね。

大渕 憲一(おおぶち・けんいち) 東北大学大学院文学研究科教授。人間の攻撃性や紛争解決などの心理的解析を研究する社会心理学者。2006年まで日本犯罪心理学会会長も務めた。主な著書に『失敗しない謝り方』(CCCメディアハウス)、『満たされない自己愛 現代人の心理と対人葛藤』(ちくま新書)など。秋田県出身

旭化成の浅野社長の涙を、「リーダーシップの欠如」と受け止めた日本人が多かったようです。

大渕:そうでしょうね。情緒的な反応はマイナスにしかなりません。ただ一方で、消費者は謝罪会見だけでその企業やトップを判断するわけではありません。何をしてきたかという背景まで踏まえて判断しますが、旭化成の場合にはその背景の部分も見えにくかった。

旭化成の会見で涙以外に失敗はなかったのでしょうか。

大渕:一概に謝罪と言っても、そこにはいくつかの要素が含まれていることに注意しなければなりません。相手にお詫びする「謝罪」以外に、言い訳を伝える「弁解」、故意ではなかったなどと主張する「正当化」、無実を訴える「否認」があります。これらを一括して「謝罪」と呼ぶために誤解が生じることになります。

どういうことでしょうか。

大渕:恐らく旭化成はこの4要素のうちの「謝罪」を伝えるための会見にしようという意図を持っていました。ですが、結果として、「弁解」や「正当化」などの要素も入り混じったために中途半端なものになってしまったのです。

 これは旭化成だけの問題ではありません。多くの企業が同じようなミスをしています。責任を認めたくないという思いが当然あり、その結果、先々のことまで考えて発言してしまうからです。でも、それは中途半端なだけでなく、不純な感じになってしまう。世間に悪い印象を与えることになるのです。

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「謝罪の流儀 炎上の旭化成、火消しのトヨタ」のバックナンバー

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「日本人はなぜ「お詫び」が好きなのか」の著者

林 英樹

林 英樹(はやし・えいき)

日経ビジネス記者

大阪生まれ。神戸大学法学部卒業後、全国紙の社会部記者として京都・大阪で事件を取材。2009年末に日本経済新聞社に入り、経済部で中央省庁担当、企業報道部でメディア・ネット、素材・化学業界などを担当。14年3月から日経BP社(日経ビジネス編集部)に出向し、製造業全般を取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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