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米国の「原則ある現実主義」が導く核なき中東

国際世論はイランに味方している

2018年5月14日(月)

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トランプ米大統領が5月8日、イラン核合意からの離脱を決めた。「近隣諸国の核武装を抑止する機能が低下する」と懸念する向きもあるが、村上拓哉・中東調査会協力研究員は「イランは穏健路線を維持する」とみる。その背景に何があるのか。(聞き手 森 永輔)

米国によるイラン核合意離脱に抗議するテヘラン市民(写真:AP/アフロ)

ドナルド・トランプ米大統領が5月8日、イラン核合意からの離脱を決めました。「イランは核エネルギーの平和的な利用だけを考えているという巨大な作り話に基づく」と断定。この合意では、イランは短期間で核兵器が獲得できる状態にとどまる、核弾頭を搭載できる弾道ミサイルの開発にも対処できない、と理由を挙げています。これらも含めて、今回の離脱の理由をどう分析していますか。

村上:それらに加えて、この合意に反対する共和党議員からの強い支持があったと思います。彼らは、核合意の交渉中に「(もし合意に至ったとしても)次期大統領が無効にすることができる」との書簡をイランの指導者宛に送ったりしていました。

村上拓哉(むらかみ・たくや)
中東調査会協力研究員。2007年3月、中央大学総合政策学部卒業。2009年9月、桜美林大学大学院国際学研究科博士前期課程修了(修士)。2009年10月~2010年8月、クウェート大学留学。在オマーン日本国大使館専門調査員を経て中東調査会に

 「この合意ではイランの核開発を封じることができない」との懸念を感じているからでしょう。トランプ大統領が指摘しているようにミサイルの開発を止めるものではありません。イランが心変わりし、核開発を秘密裏に行う可能性も完全に否定することはできません。

 1994年の米朝枠組み合意が北朝鮮の核開発を止めることに失敗したように、イラン核合意についてもこうした懸念を抱くのはもっともです。ただし私は、合意を維持していく方がイランの核開発を制限できると考えています。

 共和党議員からの支持に加えて、トランプ大統領自身が持つ姿勢もあるでしょう。1つは、バラク・オバマ前大統領のレガシーを無に帰したいという考え。TPP(環太平洋経済連携協定)から離脱したのと同様です。2つ目はトランプ大統領のイラン観です。

それは、親イスラエルの裏返しですか。イランとイスラエルは対立の度を深めています。トランプ大統領は在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムに移転することを決めました。娘婿のジャレッド・クシュナー氏はユダヤ教徒です。

村上:トランプ大統領の中で親イスラエルと反イランがどこまでつながっているかはよく分かりません。親イスラエルであることは間違いありませんが、イスラエルのネタニヤフ首相が求めることをすべて受け入れているわけでもありません。

 シリアに対する米国の姿勢にネタニヤフ首相は不満を抱いていることでしょう。イランが支援している民兵やヒズボラ*がシリアで活動範囲を拡大させているのを放置しているのですから。イスラエルにとって目前の問題は彼らの存在です。イランの核は、将来に問題となる可能性はありますが、「今」の問題ではありません。

*レバノンで活動するイスラム教シーア派政治組織

 ただしネタニヤフ首相がトランプ大統領に対してこの状況に強く文句を言うことはないでしょう。オバマ政権との関係に比べればはるかにましですから。

欧米の良識に期待

イランは再び米国から強力な制裁を科されることになります。しかし、今のところ強硬な動きはなく、平静を保っていますね。米国が離脱した後の合意に残留する価値があるのでしょうか。

村上:イランと米国の間に通商関係はほとんどありません。このため、イランが恐れるのは米国の制裁により他の国との通商が阻まれる事態です。特に大きいのは米国の国防授権法がもたらす影響ですね。イランの金融機関と取引する第三国の銀行と米国の銀行とのドル決済を禁止するものです。国防授権法が2012年に施行された後、イランは非常に辛い目に遭いました。

コメント10件コメント/レビュー

トランプ大統領は、中東でも極東でも同じ事をしている。
アメリカは反グローバリズムに舵を切り、国内の市場の大きさを使って国内の分断を解消しようとしているのではなかろうか。
反オバマというレベルではなく確固たる意思を持って行動している賢明な指導者だと思う。
シリア攻撃、イラン核合意破棄をみて金委員長はアメリカの本気をさとり、貿易戦争を仕掛けるそぶりで、中国を動かす。米朝会談の行方を独仏とイランは、合意にとどまりつつ固唾を呑んで見守っている。北の武装解除に成功すればイランも譲歩するかもしれない。
どちらも在韓米軍、中東の米軍の縮小撤退を狙っての動きだ。
国債平和の枠組みが大きく変わろうとしている。
日本も現実的な戦略を考えないといけない。(2018/05/14 15:37)

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「米国の「原則ある現実主義」が導く核なき中東」の著者

森 永輔

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

トランプ大統領は、中東でも極東でも同じ事をしている。
アメリカは反グローバリズムに舵を切り、国内の市場の大きさを使って国内の分断を解消しようとしているのではなかろうか。
反オバマというレベルではなく確固たる意思を持って行動している賢明な指導者だと思う。
シリア攻撃、イラン核合意破棄をみて金委員長はアメリカの本気をさとり、貿易戦争を仕掛けるそぶりで、中国を動かす。米朝会談の行方を独仏とイランは、合意にとどまりつつ固唾を呑んで見守っている。北の武装解除に成功すればイランも譲歩するかもしれない。
どちらも在韓米軍、中東の米軍の縮小撤退を狙っての動きだ。
国債平和の枠組みが大きく変わろうとしている。
日本も現実的な戦略を考えないといけない。(2018/05/14 15:37)

私もトランプはイスラエルを依怙贔屓していると思う。客観的に見て、イスラエルの核兵器保有は公然の秘密であるが、それに対抗する筆頭格のイランの核兵器保有は絶対許さない、という判断はどの様な基準で出来るのか?イラクは独裁者のフセインが大量破壊兵器などを保有しているという、結果的には間違った情報に基づいて米軍とその友軍が一方的に攻め込んでフセインを捕らえ死刑にしてしまった。イスラエルの核兵器保有が見逃されているのは、ユダヤ系の金持ちの金が有力政治家の政治資金になっているからなのだろうが、それは不公平というものだ。ユダヤ系は大量の優秀なロビイストも抱えていて、思うがままに米国の政治を動かしている。アメリカの不公平はその観点からは仕方がないとしても、西欧諸国はもっと公平に対応すべきだ。アメリカべったりの安倍首相には何を言っても無駄だが、今後のリーダーには世界に対して胸を張れる人に首相をやって欲しいものだ。(2018/05/14 14:50)

どのメディアも、どのコメンテータでも、表面的な事実だけに対して論じているように思えます。(2018/05/14 13:53)

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