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米国の劣化、完全復活した「新型大国関係」

北朝鮮の核を解決した後に待つ、中国中心の秩序

2017年11月14日(火)

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(写真:ロイター/アフロ)

米国のドナルド・トランプ大統領が訪中し、米中首脳会談が行われました。津上さんはこの会談のどこに注目しましたか。

津上俊哉(つがみ・としや)
津上工作室の代表。1980年、東京大学法学部を卒業し、通商産業省(当時)に入省。在中国日本大使館 経済部参事官、通商政策局北東アジア課長を経て退職。2012年から現職。

津上:一つは、中国が“お土産”外交を展開し、中国式“交際術”をいかんなく発揮したことです。2500億ドルに上るお買い物リストを提示して、トランプ氏を良い気持ちにさせ、中国が望まない要求を受け入れることなく会談を終えました。

 2500億ドルの商談のリストを見ても、新たに購入を決めた物品はありません。飛行機も半導体も、これまでも購入してきたものです。アラスカの天然ガス開発に中国石油化工集団(シノペックグループ) が加わることは少し目新しいですが、これとて、米中間の貿易不均衡を改善するようなものではなく、弥縫策にすぎません。

お土産外交は、中国国内の保守派などから弱腰外交とみなされ、非難される可能性があります。そうであるにもかかわらず、お土産外交を展開できたのは、共産党大会を経て、習氏が一強体制を築くことができたからでしょうか。

津上:それは、あります。しかし、それ以上に重要な要素として、中国という国、そして中国人の心に余裕ができたことが大きいと思います。大きな経済成長を達成し、さまざまなことに肯定感をもって臨めるようになりました。これまでだったら「へつらい」と見なされていた“破格の接待”を「大国の中国はあれくらいして当然」と受け取る雰囲気も出てきました。

 10月18日から開かれた中国共産党の党大会で、習氏は活動報告を行い、21世紀半ばまでに「現代化した社会主義の強国を建設する」「総合的な国力と国際影響力で世界をリードする国家になる」と語りました。よくも、ここまで自画自賛できるものだとの印象を受けました。ただ、この空気を、13億人の中国人の多くが共有している印象もあります。

中国が大国になったことの表れですね。

津上:そう思います。

 2つ目の注目点は北朝鮮の核・ミサイル問題への対応です。公表された結果から見れば、中国は、既に賛成している国連安全保障理事会の制裁決議を完全に履行すると繰り返しただけでした 。

 この制裁を実施すればボディーブローのようにじわじわと効いてくるので、中国がコミットしたことは重要です。しかし、本当にそれだけだったら、米国側は、2500億ドルのお土産をもらっても食い足りない思いをしたのではないでしょうか。

 話し合ったのはそれだけだったのか。実は、いよいよの時に北朝鮮を軍事的に成敗する方法について秘密協議を始める、という話し合いをしたのだとしても、米中は口外しないでしょう。米中が何を話し合っているのかは、今後も注視が必要です。

リーダーとしての米国が劣化している

第3の注目点は何でしょう。

津上:米国という国の国際的役割が劣化していることがいよいよ明らかになったことです。中国に対する姿勢に加えて、米中会談に先んじて訪れた日本と韓国でのトランプ氏の言動に顕著に表れています。

 中国では民主主義や人権の尊重など、米国を米国たらしめてきた価値と原則を訴えることがありませんでした。日本と韓国では北朝鮮の核・ミサイル問題にかこつけて武器を売り込んだと誇りました。米国内の忠実な支持者層にアピールする必要があるのは分かりますが、世界中がその発言を聴いているのです。これは世界のリーダー国が取るべき態度ではありません。

コメント5件コメント/レビュー

貴重な話や分析と綜合的知見。兎にも角にも時代が変わったのか世界が豹変したのかどっち?を思わせる世界の有様。でもこれが必然の現実とするのが所謂常識なのだろうかを考えさせられた。これまでのリーダーイメージとは大きく掛け離れた風変りな為政者然とした―米国大統領トランプ氏に対し、13億余万人のリーダーとして着々その地歩を固める―中国国家主席習氏の対は、これまでの歴史やそれにこびりついた因習の諸々を、嘘でもいい一端綺麗さっぱり我が身の脳裏から取り払い、切り替えて正座のお作法の下に承知するくらいの等級の一件。さて、日中だ日米と言ってみたとて米中間の重厚な話し合いに描き消されるばかりの日本國の総理リーダー安倍氏は如何と伺うが、聊か元気がない趣とみるがどうだろうか。理数科で云う幾何の「合同」や「相似」に準えるかのように得々として意見が「完全に一致」、「一致」、と宣うが、楽観視は如何なものか。信頼感は信じるが故にこそ成り立ち、より強固になればこそは理解するが、なにしろ心許ないが故に信じてみる程度の握手ではどうだろうか。近い内に前出の幾何に次いで理数系を引っさげ貿易戦になる事が必定とすれば、諸国に呼び掛け補助線を頼みに難問を解く手もあろうが、夫々の国にはその国の国益第一が立ちはだかるだろう。その中、日本國は我が道を往く気概と役目を持し、どう世界の諸国と和して行くか、凛とした生き方を探求し実行したいと考えるが如何。(2017/11/16 11:15)

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「米国の劣化、完全復活した「新型大国関係」」の著者

森 永輔

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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貴重な話や分析と綜合的知見。兎にも角にも時代が変わったのか世界が豹変したのかどっち?を思わせる世界の有様。でもこれが必然の現実とするのが所謂常識なのだろうかを考えさせられた。これまでのリーダーイメージとは大きく掛け離れた風変りな為政者然とした―米国大統領トランプ氏に対し、13億余万人のリーダーとして着々その地歩を固める―中国国家主席習氏の対は、これまでの歴史やそれにこびりついた因習の諸々を、嘘でもいい一端綺麗さっぱり我が身の脳裏から取り払い、切り替えて正座のお作法の下に承知するくらいの等級の一件。さて、日中だ日米と言ってみたとて米中間の重厚な話し合いに描き消されるばかりの日本國の総理リーダー安倍氏は如何と伺うが、聊か元気がない趣とみるがどうだろうか。理数科で云う幾何の「合同」や「相似」に準えるかのように得々として意見が「完全に一致」、「一致」、と宣うが、楽観視は如何なものか。信頼感は信じるが故にこそ成り立ち、より強固になればこそは理解するが、なにしろ心許ないが故に信じてみる程度の握手ではどうだろうか。近い内に前出の幾何に次いで理数系を引っさげ貿易戦になる事が必定とすれば、諸国に呼び掛け補助線を頼みに難問を解く手もあろうが、夫々の国にはその国の国益第一が立ちはだかるだろう。その中、日本國は我が道を往く気概と役目を持し、どう世界の諸国と和して行くか、凛とした生き方を探求し実行したいと考えるが如何。(2017/11/16 11:15)

「トランプ的な人たちにも共通する問題ですが、代案もなしに現行秩序を否定する、壊そうとするのは愚かな行いです」日本の野党支持層にも多く見られる問題だ。(2017/11/16 08:34)

極めて常識的な,理性的な,賢明な論旨でたいへん勉強になった。「君子は小道を往かず。」という格言(?)を聞く。このことなのだろう。韓国が中国にたたかれているのを見て「それ見たことか!」と思った自分の小ささが恥ずかしい。大国の外交とは正論を大上段に掲げて歯を食いしばって悠々と高楊枝をかみしめて進むものなのだろう。トランプ氏がそれを知らないことがいかに米国にとってもそして世界にとっても悲しむべきことであるかを感じた。その悲しみが恐怖や苦悩に変わらない幸運を祈るのみだ。いや,祈っているだけではいけないのだろう。そうした幸運を粛々と手繰り寄せるための努力を惜しまないのもまた「君子の態度」なのだろう。君子の道は遠く険しい。(2017/11/15 14:29)

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三品 和広 神戸大学教授