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米国の劣化、完全復活した「新型大国関係」

北朝鮮の核を解決した後に待つ、中国中心の秩序

2017年11月14日(火)

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2017年4月に行われた前回の米中首脳会談に続いて、今回も共同声明を発表することができませんでした。

津上:これも劣化の表れでしょう。いまだに各省庁の政治任用のポストが埋まっておらず、文書を詰めることができる人材が政権内にいないのです。危機につながるアクシデントが今のところ起こっていないからいいものの、今後再び2008年の国際金融危機のようなことが起きた時、米国はリーダーとしての役割を果たせるのか、疑問に思います。

 トランプ氏が4年の任期を終えた時、世界のリーダーとしての米国の価値は、同氏の就任前とは時代を画するほどに劣化していると思います。

 習近平国家主席はこれを見て、にんまりが半分、不安が半分だったのではないでしょうか。にんまりしたのは、中国が米国の役割をとって代われる部分が増えるからです。不安は、「米国がこれほどていたらくでは、世界はどうなってしまうのか」と思うから。けれど同時に、「中国がますますしっかりして、国際的な責任を担っていかなければ」とも思っているでしょう。

中国が米国に取って代わることはできない

 

 中国の一部にはこうした状況を見て、ほくそ笑む人もいます。米国が「オレさま」的に世界を牛耳る従来の体制が崩れ、他の国々の声をもっと“民主的”に聞く多元化体制ができると思っているからです。その中心に中国がいる世界を思い描く。

 私はこうした人々を見て、なんと浅はかなと思います。米国の劣化は米国の問題にとどまりません。世界の公共財、世界のインフラの劣化なのです。中国やロシアも時間が経つにつれ、「こんなはずではなかった」と思い知ることになるでしょう。

 いまの中国は米国にとって代われるのか。現状のそこここに不満はあっても、代案と呼べるような体系を持ち合わせてはいないのです。トランプ的な人たちにも共通する問題ですが、代案もなしに現行秩序を否定する、壊そうとするのは愚かな行いです。

 中国は、在韓米軍によるTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)配備を韓国が認めたとき、ロッテいじめに走りました。これは中国の口と腹とが異なることを示す事例の最たるものだと思います。

 中国は、自分の言うことを聞く者にはけっこう気前がよい。しかし、その逆も真なりで、皇帝が機嫌を損ねると、朝貢国に下賜したものを取り上げるようなことをするのです。

 THAADのために用地を提供したロッテが、不買に遭い、店舗閉鎖に追い込まれたり、韓国を訪れる中国観光客がガタ減りしたりしました 。こうした行為はWTO(世界貿易機関) の理念の根幹に抵触する行いだったと思います。加盟国は相手国の市場へのアクセスをお互いに認め合う約束をしているのであって、この約束を、ある国から一方的に取り上げてはならないのです。

 中国は「政府がやらせたものではない。国民感情に端を発した自然発生的なもの」と反論するかもしれませんが、本当に国民全体がそんな振る舞いをするなら、中国はWTOに加盟する資格がありません 。

日米は中国の韓国イジメを黙認した

 この件については、日本と米国も大失態を侵しました。中国の韓国イジメを傍観して、韓国が中国の力に屈服する結果を招いてしまったからです。

 本来なら、世界中の国が口々に「通商・経済的利益を人質にとって、こういう『力による強制』を行うことはあってはならない」と批判するべきでした。日米だけが抗議すると、「腹にイチモツある国が中国悪魔論をたきつけている」と勘違いされてしまいます。しかし、多くの国が抗議に参加すれば、中国も「評判が落ちて孤立しかけている」と、過ちに気付くでしょう。

 日本人の中には中国の力の行使に苦しむ韓国を見て、「ざまみろ」と思った人が少なからずいた気がします。それでは「熊さん、八さん」のレベルです。

2010年に中国漁船衝突事件が起きた後、レアアースの日本向け輸出が滞ることがありましたね。あのときは日本の産業界も難渋しました 。

津上:そうです。

 ここで誤りを認めさせなければ、中国はこれからも事あるごとに同じ振る舞いをするでしょう。習氏は「自由貿易」を標榜していますが、世界の側が「中国を怒らせたら、何をされるか分からない」という不安に付きまとわれていたら、「自由貿易」は成り立ちません。関税引き下げや外国投資開放の「約束」も、そういう状況では意味をなさないのです。

コメント5件コメント/レビュー

貴重な話や分析と綜合的知見。兎にも角にも時代が変わったのか世界が豹変したのかどっち?を思わせる世界の有様。でもこれが必然の現実とするのが所謂常識なのだろうかを考えさせられた。これまでのリーダーイメージとは大きく掛け離れた風変りな為政者然とした―米国大統領トランプ氏に対し、13億余万人のリーダーとして着々その地歩を固める―中国国家主席習氏の対は、これまでの歴史やそれにこびりついた因習の諸々を、嘘でもいい一端綺麗さっぱり我が身の脳裏から取り払い、切り替えて正座のお作法の下に承知するくらいの等級の一件。さて、日中だ日米と言ってみたとて米中間の重厚な話し合いに描き消されるばかりの日本國の総理リーダー安倍氏は如何と伺うが、聊か元気がない趣とみるがどうだろうか。理数科で云う幾何の「合同」や「相似」に準えるかのように得々として意見が「完全に一致」、「一致」、と宣うが、楽観視は如何なものか。信頼感は信じるが故にこそ成り立ち、より強固になればこそは理解するが、なにしろ心許ないが故に信じてみる程度の握手ではどうだろうか。近い内に前出の幾何に次いで理数系を引っさげ貿易戦になる事が必定とすれば、諸国に呼び掛け補助線を頼みに難問を解く手もあろうが、夫々の国にはその国の国益第一が立ちはだかるだろう。その中、日本國は我が道を往く気概と役目を持し、どう世界の諸国と和して行くか、凛とした生き方を探求し実行したいと考えるが如何。(2017/11/16 11:15)

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「米国の劣化、完全復活した「新型大国関係」」の著者

森 永輔

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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貴重な話や分析と綜合的知見。兎にも角にも時代が変わったのか世界が豹変したのかどっち?を思わせる世界の有様。でもこれが必然の現実とするのが所謂常識なのだろうかを考えさせられた。これまでのリーダーイメージとは大きく掛け離れた風変りな為政者然とした―米国大統領トランプ氏に対し、13億余万人のリーダーとして着々その地歩を固める―中国国家主席習氏の対は、これまでの歴史やそれにこびりついた因習の諸々を、嘘でもいい一端綺麗さっぱり我が身の脳裏から取り払い、切り替えて正座のお作法の下に承知するくらいの等級の一件。さて、日中だ日米と言ってみたとて米中間の重厚な話し合いに描き消されるばかりの日本國の総理リーダー安倍氏は如何と伺うが、聊か元気がない趣とみるがどうだろうか。理数科で云う幾何の「合同」や「相似」に準えるかのように得々として意見が「完全に一致」、「一致」、と宣うが、楽観視は如何なものか。信頼感は信じるが故にこそ成り立ち、より強固になればこそは理解するが、なにしろ心許ないが故に信じてみる程度の握手ではどうだろうか。近い内に前出の幾何に次いで理数系を引っさげ貿易戦になる事が必定とすれば、諸国に呼び掛け補助線を頼みに難問を解く手もあろうが、夫々の国にはその国の国益第一が立ちはだかるだろう。その中、日本國は我が道を往く気概と役目を持し、どう世界の諸国と和して行くか、凛とした生き方を探求し実行したいと考えるが如何。(2017/11/16 11:15)

「トランプ的な人たちにも共通する問題ですが、代案もなしに現行秩序を否定する、壊そうとするのは愚かな行いです」日本の野党支持層にも多く見られる問題だ。(2017/11/16 08:34)

極めて常識的な,理性的な,賢明な論旨でたいへん勉強になった。「君子は小道を往かず。」という格言(?)を聞く。このことなのだろう。韓国が中国にたたかれているのを見て「それ見たことか!」と思った自分の小ささが恥ずかしい。大国の外交とは正論を大上段に掲げて歯を食いしばって悠々と高楊枝をかみしめて進むものなのだろう。トランプ氏がそれを知らないことがいかに米国にとってもそして世界にとっても悲しむべきことであるかを感じた。その悲しみが恐怖や苦悩に変わらない幸運を祈るのみだ。いや,祈っているだけではいけないのだろう。そうした幸運を粛々と手繰り寄せるための努力を惜しまないのもまた「君子の態度」なのだろう。君子の道は遠く険しい。(2017/11/15 14:29)

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三品 和広 神戸大学教授