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ガバナンスと不祥事は関係ない

宮内義彦氏が東芝不正会計問題を斬る

2015年12月17日(木)

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 東芝の不正会計問題を巡り、コーポレートガバナンス(企業統治)の問題に言及される機会が増えてきた。これは本当にコーポレートガバナンスの問題なのか、そうであれば、何が間違っていたのか――。かねて日本企業のコーポレートガバナンスについて、問題を提起し続け、その改革の旗を振ってきたオリックスのシニア・チェアマン、宮内義彦氏に話を聞いた。

(聞き手は谷口徹也=日経BPビジョナリー経営研究所上席研究員)

これまで、ことあるごとにコーポレートガバナンスの重要性を強調されてきた宮内さんにしてみれば、耳を疑うような不祥事が起こっています。今、日本企業の中で何が起こっているのでしょうか。宮内さんの見立てはいかがですか。

宮内 義彦(みやうち・よしひこ)
1935年神戸市生まれ。58年関西学院大学商学部卒業。60年ワシントン大学経営学部大学院修士課程修了後、日綿實業(現双日)入社。64年オリエント・リース(現オリックス)入社。70年取締役、80年代表取締役社長・グループCEO、2000年代表取締役会長・グループCEO、03年取締役兼代表執行役会長・グループCEOを経て、14年からシニア・チェアマン。

宮内:コーポレートガバナンスを強化すれば、企業不祥事が防げるような言い方をされることがありますが、これはかなり難しく、できないと言ってもいいことです。東芝の不祥事のように、企業のトップが意図的にルールに反することをやり、それを隠した場合は、真相をつかむのはまず無理でしょう。

 粉飾決算を見抜くことができるとすれば、それは内部告発か、伝票を一枚一枚見ることができる立場にあり、実行力もある監査法人くらいです。社外取締役を置くなどして、コーポレートガバナンスを働かせているかどうかとは、全く別の問題です。そんなひどい経営者をなぜ選んでしまったのかという論点ならば、ガバナンスも関係してきますけれどね。

 日本には東証一部だけで1900社を超える上場企業があるのですから、このうち何社かに変な経営者がいたとしてもおかしくはありません。米国だって、かつては、エンロンやワールドコムといった有力企業が会計をめぐる不祥事によって転落していきました。

 残念ながら、こういうことは時々起こる。東芝の事件を見て、何となく日本の企業全体が危ない局面に置かれているのではないかといった議論は、あたらないと思います。

委員会等設置会社は、良いことばかりではない

経営者を選ぶ過程では、コーポレートガバナンスも関係するとおっしゃいました。東芝は、取締役選任に外部の目が利く「指名委員会」などがある「委員会等設置会社」でしたが、結局、3代にわたって不正に加担する社長を出すことになりました。

宮内:委員会等設置会社は、そんなに良いことばかりではありません。

 まず、取締役会の中で、社外取締役が過半数にならない前提でできている。それでいて、取締役候補を決める「指名委員会」、役員の報酬を決める「報酬委員会」、監査役の役割を担う「監査委員会」を設置して、従来、社内の取締役が担ってきた重要な機能を果たす形になっています。それぞれの委員会は取締役が3人以上必要で、そのうち過半数を社外取締役で構成します。

 確かに指名委員会で、「この社長はクビだ」と決めたら、取締役会で反対できない。形のうえでは、それだけ委員会は力を持っています。ただし、もし監査委員会の委員長が元経理部長の社内取締役でCFO(最高財務責任者)だったりしたら、会計資料が何も出てこなくてもおかしくないですね。社外取締役も面と向かって「この決算数字は間違ってないですか」といった質問はしにくいでしょう。日本的な雰囲気の中では、ばかげた質問をするやつだなと思われてしまいます。

 このように実際には、委員会等設置会社でも、取締役会で社外取締役が過半数に達せず、各委員会の委員長も社内取締役というケースは多いのです。統治力の強化のために、委員会に力を与えるという形になっていません。

 本当は、監査委員がもっと現場に入っていって、経理部長に質問をするような場面があればいいと思いますが、現実には、そんな活動はシャットアウトされているのでしょう。

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「ガバナンスと不祥事は関係ない」の著者

谷口 徹也

谷口 徹也(たにぐち・てつや)

日経ビジネスベーシック編集長

日経ビジネス、日経情報ストラテジーの記者などを経て、2002年日経ビジネス香港支局特派員、07年日経ビジネス副編集長、09年日経ビジネスオンライン副編集長。12年日経エコロジー編集長。14年ビジネス局長補佐。16年1月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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