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豪潜水艦の商談を機に日本の防衛産業を考える

拓殖大学・佐藤丙午教授

2016年4月28日(木)

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安倍政権が防衛装備移転三原則を閣議決定してから2年が経った。それまでの武器輸出三原則等に変わる新たな原則だ。新三原則の柱の1つは、これまで「例外的」に認めてきた防衛装備の海外移転を、一定の条件の下で「正式」に認めること。閣議決定の前後、「日本が開発・製造する武器の外国への販売が増える」とのイメージが広まった。その現状と課題を、軍備管理に詳しい佐藤丙午・拓殖大学教授に聞いた。

(聞き手 森 永輔)

防衛装備移転三原則を閣議決定して2年が経ちました。英国やフランスなどとの防衛装備の共同開発が注目される半面、オーストラリへの潜水艦の輸出は苦戦が伝えられています。実際に、移転は拡大しているのでしょうか。ほかにはどんな装備や技術が対象となる可能性があるのでしょう。

*:この取材は、受注できなかったことが伝えられる直前に行われた。

佐藤 丙午(さとう・へいご)
拓殖大学国際学部教授。専門は安全保障論(軍備管理・軍縮)、国際関係論、米国政治。ジョージ・ワシントン大学大学院、一橋大学博士課程修了。元防衛庁防衛研究所主任研究官。論文に「通常兵器の軍備管理・軍縮」(『海外事情』)、「安全保障と公共性―そ の変化と進展―」(『国際安全保障』)、「防衛産業のグローバル化と安全保障」(『国際政治』)など。

佐藤:防衛装備移転三原則の閣議決定を受けて、海外移転が増えたかどうかを示す資料はまだありません。ただし、経済産業省が発表した「防衛装備の海外移転の許可の状況に関する年次報告書」を見ると、現状を読み取ることができます。これによると、防衛装備移転の案件が1780件あります。しかし、うち1768件は自衛隊がPKOで使う物資など。実質的には12件しかありません。

 海外移転の対象は潜水艦や救難飛行艇以外にもいろいろ考えられます。東レなどが取り組む炭素繊維や、カメラメーカーが作る小型レンズ、カミオカンデに浜松ホトニクスが提供している光電子増倍管など優れた製品や技術が少なくありません。日本にもシーズはあるのです。ただし、今のところ、それをニーズと結びつける仕組みが欠けています。

 防衛装備の国際市場には、米国やNATO(北大西洋条約機構)加盟国の企業の製品で国防総省が認証したものを載せるカタログがあります。日本企業が製品のコード番号を取得し、登録することがシーズとニーズを結びつける初めの一歩です。しかし、日本の防衛装備移転に関するこれまでの経緯から、積極的に登録を推進する主体がいません。日本政府はその役割を果たすべきでしょう。

私が最近取材したある防衛企業は、自社の製品を海外に販売することについて全く意識していませんでした。自社の仕事ではなく政府の仕事と考えているようでした。

佐藤:そうですね。企業側の消極的な姿勢は理解できます。防衛装備の海外移転に反対する勢力から批判され、民生品の取引に影響が出ることを懸念しているのでしょう。先日施行された安全保障関連法に反対する立場の人が三菱グループの製品に対して不買運動を起こし、三菱グループの一員ではない三菱鉛筆がとばっちりを受ける出来事がありました。

 防衛企業としては、海外移転に関わる案件は、日本政府が外国の政府・企業とまとめたものだけにしたいというのが本音ではないでしょうか。それならリスクを軽減できますから。反対する人々からの批判も政府に転嫁できるし、製造にかかわる初期投資を無駄にすることなくすむ。資金の回収についても安心です。

 防衛装備を巡る日本の状況は好ましいものではありません。防衛省のお金の出入りを見ると、今年は輸入などに伴って海外に支払う金額が大きく伸びています。輸送機の「オスプレイ」、無人機の「グローバルホーク」、次世代戦闘機の「F35」などを購入したためです。

 日本の防衛予算は限られています。外国製防衛装備の購入が増えれば、その分、国内の防衛産業に回る分が少なくなります。それなれば、国内の防衛企業は最高水準の製品を作ることができなくなり、国際市場において生き残ることが一層困難になります。

防衛産業としては海外の需要を取り込む必要があるわけですね。日本の防衛産業が衰退し、防衛装備の内製比率が下がると、有事の時に不安がありませんか。

佐藤:自前の防衛装備だけで自国の防衛ができる国はありません。評価の仕方はいろいろありますが、米国でも20~30%は外国から導入していると言われています。欧州諸国におけるその比率はもっと高いでしょう。

 ただし、彼らは外国に提供しているものも数多くあります。欧州諸国の企業は、場合によっては、外国で調達される自国製防衛装備の4~5倍を輸出していると見られています。これに対して日本はライセンス製品と輸入を含めると、海外の防衛装備に依存する率は高い状態にあります。

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「豪潜水艦の商談を機に日本の防衛産業を考える」の著者

森 永輔

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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