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移民を先兵に領土を奪ってきたリアルな歴史

今、世界史と地政学を学ぶ理由(2)

2016年5月13日(金)

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『世界史で学べ! 地政学』などの著書がある茂木誠氏に聞く第二弾。世界の注目を集める現在進行形の事件について、その意義と背景をリアリズムの視点から斬る。取り上げるのは「ブレグジット」「パナマ文書」「中国の一帯一路政策」「カラー革命とアラブの春」だ。

(聞き手 森 永輔)

(前回記事はこちら

ブレグジットは、英国によるドイツ覇権への反発

ここからは、いま注目を集めている出来事を対象に、世界史と地政学の視点からどう解釈できるかうかがいます。最初のテーマは英国のEU(欧州連合)離脱(ブレグジット)です。英国はこれまでオフショアバランシングを対欧州大陸政策の柱にしていました。大陸に覇権国家が現れそうな時にはそのライバル国を支援して叩くというものです 。第2次世界大戦ではドイツを叩くべく、ソ連と手を組みました。それまでグレートゲームを戦ってきたにもかかわらずに。ブレグジットはこのオフショアバランシングとはずいぶん趣を異にしているように見えます。

東京都出身。大学受験予備校の世界史科講師。iPadを駆使したビジュアルな授業に人気がある。近著に『世界史で学べ!地政学』『“ニュースのなぜ?”は世界史に学べ』がある。(撮影:菊池くらげ、以下同)

茂木:英国にとってドイツは長年のライバルです。ブレグジットは、ドイツの風下には立ちたくないという英国のナショナリズムの表れでしょう。英国から見ると、EUはドイツに仕切られている機関にほかなりません。

 英国は産業革命によっていち早く工業立国を実現したものの、19世紀後半には輸出額でドイツに抜かれ、金融立国に転換しました。輸出によって蓄えた資本を外国に投資し、その収益によって成り立っています。いま、この金融国家の地位もドイツに脅かされるようになりました。冷戦が終わって東西ドイツが統合し巨大ドイツが復活したことも英国にとって脅威でした。ユーロ導入を拒否してポンドを守ってきたのもそのためです。

 ドイツが仕切る大陸市場に依存したくない英国が選んだ投資先が中国です。中国の習近平国家主席が昨年10月 に訪英した時に、キャメロン首相らが非常な歓待をしたことが話題になりました。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するといち早く名乗りを上げたのもこのためです。米国の不興を買うことも厭いませんでした。

第1次世界大戦の時にロシアと手を組んでドイツを叩いたように、他の国と協力してドイツにビジネス的に対抗することは考えなかったのでしょうか。

茂木:現在の欧州にドイツと対抗する力を持った国は見当たりません。

 ロシアも頼りにはなりません。プーチン大統領とドイツのメルケル首相が良好な関係を維持しています。またロシアは、「90年代に外資導入で痛い目にあった」というネガティブな感情を英国に対して抱いています。プーチン大統領の前任だったエリツィン大統領が外資の導入と資本主義化を推進したのに伴って、ガスや石油といった基幹産業を含む多くの企業が外資企業やそれと結んだ新興財閥によって買収されたからです。

 米国のドル支配に対しても、英国は快く思っていません。ドルもユーロも敵となれば、人民元と手を組むしかない、というのがロンドンの金融街(シティ)の判断です。

パナマ文書はドイツによる英国への意趣返し

 パナマ文書が注目を集めています。これはドイツによる英国への意趣返しの面があるでしょう。この文書を最初に入手したのは南ドイツ新聞とされています 。そしてキャメロン首相と習近平国家主席の名前がいの一番に報じられました。

 この文書を世界に公開した国際報道ジャーナリスト連盟(ICIJ)という団体には、米国の代表的ヘッジファンドのジョージ=ソロスが資金を提供しています。ウォール街は、英国と中国が関係を密にするのを面白く思っていません。同文書を巡って、米国の大物政治家の名前が出てこないのも作為を感じます。

コメント9件コメント/レビュー

日本は歴史時代に(元寇が不発に終わったので)「武装移民」(元軍は農機具も持ってきていた、つまり「植民」)は理解できず、また、現在の「在日」の問題は「帝国」の基本的性格の結果であって、ここは英仏などと同様であろう。わたくしが学んだ頃の世界史の教科書は、「民族移動」が軍事活動であることが明記されておらず、したがって、アレキサンダーにせよ、ゲルマン諸族にせよ、アッチラにせよ、ムハンマドにせよ、チンギスハンにせよ、あるいは、ヌルハチにせよ、基本は共通であったことがはっきりしない。さらに、これら軍事活動に、多くの場合、武装移民ならほぼ必ず、女性を随伴していたことも述べられていない。近代のナポレオン戦争でも、家族としての女性ではなく、娼婦の一群がフランス軍に「同行」していた(つまり、「従軍」していた)ことが、当時の絵画からわかるし、また、日露戦争のとき、ロシア軍の将校は夫人を伴っていた者も少なくなかったという。閉ざされた環境内で、しかも、世界史的には極めて例外的な形で歴史が生起してきた日本人には、現代世界の常識としての歴史感覚や軍事感覚がなく、したがって、およそ歴史や軍事が話題になるとき、日本人の間だけなら辛うじて意味を持つかも知れない「歴史観・軍事観」の「解釈」で、右も左も、対応しようとしてしまう。日本史・世界史の分離教育は、非常に危険だと思っている。(2016/05/16 12:30)

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「移民を先兵に領土を奪ってきたリアルな歴史」の著者

森 永輔

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

日本は歴史時代に(元寇が不発に終わったので)「武装移民」(元軍は農機具も持ってきていた、つまり「植民」)は理解できず、また、現在の「在日」の問題は「帝国」の基本的性格の結果であって、ここは英仏などと同様であろう。わたくしが学んだ頃の世界史の教科書は、「民族移動」が軍事活動であることが明記されておらず、したがって、アレキサンダーにせよ、ゲルマン諸族にせよ、アッチラにせよ、ムハンマドにせよ、チンギスハンにせよ、あるいは、ヌルハチにせよ、基本は共通であったことがはっきりしない。さらに、これら軍事活動に、多くの場合、武装移民ならほぼ必ず、女性を随伴していたことも述べられていない。近代のナポレオン戦争でも、家族としての女性ではなく、娼婦の一群がフランス軍に「同行」していた(つまり、「従軍」していた)ことが、当時の絵画からわかるし、また、日露戦争のとき、ロシア軍の将校は夫人を伴っていた者も少なくなかったという。閉ざされた環境内で、しかも、世界史的には極めて例外的な形で歴史が生起してきた日本人には、現代世界の常識としての歴史感覚や軍事感覚がなく、したがって、およそ歴史や軍事が話題になるとき、日本人の間だけなら辛うじて意味を持つかも知れない「歴史観・軍事観」の「解釈」で、右も左も、対応しようとしてしまう。日本史・世界史の分離教育は、非常に危険だと思っている。(2016/05/16 12:30)

「移民を先兵に領土を奪ってきたリアルな歴史」という側面で日本を考えるならば、既に日本は中国からの移民の脅威に曝されつつあるのではないでしょうか?
現在、安部政権は実質的な外国人労働者と言う名の実質的な移民解禁政策を実行しつつあります。
また、外国人地方参政権の成立と所有者に対して極度に強い権利を与えている日本の土地法体系を重ね合わせると、近い将来過疎化した地方を中国に乗っ取られるのではないでしょうか?(2016/05/13 16:46)

■米英が絶対正義とすり込まれてきた日本人には、たいへんためになるすばらしいコラムです。しかしながら、以下は反ロシアプロパガンダであり残念です。
>「ロシア系住民が多いクリミアをウクライナから分離してロシアに併合したプーチン大統領も、当然、これらの歴史的事実を意識していたでしょう。」
■この文を読めば、プーチンがクリミアにロシア人を送り込んで乗っ取ったようにとれますが、事実は逆です。旧ソ連時代、フルシチョフがクリミアをロシアからウクライナに移管した1954年のロシア人比率は約70%でした。プーチンがクリミアを併合した時点ではロシア人比率は58%であり、ロシア人比率は減少傾向にあったのです。■小生は何度もクリミアを訪問していますが、クチマ政権時代は入国審査ゲートをでるとすっかりロシアでした。ウクライナらしさが見たく、わざわざキエフまで連れて行ってもらったものでした。ところがオレンジ革命後、町中にウクライナの旗と盾のシンボルが至るところで掲げられるようになりました。現地の人(小生の親戚です)に聞くと、新政権が学校の教科書にロシアの悪口を書き始めるなど、ウクライナ化を強力に進めてきているとのことでした。このように、ウクライナ政府の方こそクリミアのウクライナ化を進めていたのです。■ちなみにクリミアでロシア人移民を増加させタタール人を凌駕したのは、エカテリーナ2世がクリミア・ハン国を併合した1782年以降の帝政時代の話です。(2016/05/13 14:32)

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