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消費増税は本当に延期すべきなのか

第一生命経済研究所 永濱利廣首席エコノミスト、法政大学経済学部 小黒一正教授に聞く

2016年5月31日(火)

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安倍晋三首相が、2017年4月に予定していた消費税の引き上げを再び延期する方針を示している。原因は、「世界経済が危機に陥るリスクに直面している」ことだという。首相は「リーマンショックのような激変がなければ、増税は必ず行う」としてきたが、景気はそこまで悪いのか。増税はそれほど悪影響を及ぼすのか。小黒一正・法政大学教授と、永濱利廣・第一生命経済研究所首席研究員に賛否両論を聞いた。

(聞き手は田村 賢司)

※記事は両氏に対して個別に行ったインタビューをまとめたものです。

消費税引き上げが先送りで固まりつつあります。景気の現状から考えて必要だと思いますか。

永濱利廣(ながはま・としひろ)氏
第一生命経済研究所首席エコノミスト。1995年3月、早稲田大学理工学部卒。東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。95年4月、第一生命保険入社。98年4月、日本経済研究センター出向。2000年4月、第一生命経済研究所経済調査部。2016年4月から現職

永濱: 先送りされることになるのだろうと思います。足元の景気を見ると、確かに厳しいからです。今年1~3月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比0.4%増、同年率1.7%増だった。ただし、今年はうるう年で2月が1日多い。それによって、消費などが見かけ上増え、GDPが押し上げられる部分があります。0.4%のうち0.3%分はそれだと思います。つまり、実態としてはせいぜい横ばいといったところと考えていいでしょう。

 しかも、このうるう年効果は次の4~6月期では、マイナスの影響になります。うるう年で、“余計に”押し上げられている分がなくなるからです。つまり、4~6月期は、景気が横ばいならマイナス1.2%ということになるのです。

 昨年10~12月期は、前期比-0.3%、同年率-1.1%でしたから、この3四半期を見れば「マイナス成長」「横ばい」に、予想ですが「マイナス成長」ということです。

報酬増の割に消費は停滞している

個人消費が停滞していることが大きいとも指摘していますね。

永濱:お話ししたうるう年効果の部分を除いても、雇用者報酬が伸びている割に、消費は増えていません。可処分所得の内、どの位を消費に回しているかを見る平均消費性向を見ても下がっています。個人は財布の紐を締めているわけです。この後、消費税が上がるとなれば、さらにその傾向が強くなるでしょう。

 富裕層にしても、2016年1月からマイナンバーが本格スタートすることで、消費を抑えめにする可能性があります。環境は大変厳しいと思いますね。

小黒さんは、消費税引き上げは景気の重石になっていないと言われていますね。

小黒一正(おぐろ・かずまさ)氏
法政大学経済学部教授。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。1997年 大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2013年4月から現職

小黒: 消費税は1989年に3%の税率で導入され、97年に5%に、2014年に8%へ引き上げられました。

 肝心なのは、これが本来の日本経済の成長トレンドをどの程度押し下げたかを見ることです。そのために、引き上げの5四半期前を起点にした“平時”の成長トレンドと、増税後の動きを比較します。

 すると、過去3回は増税を行った四半期(いずれも4~6月期)には、元のトレンドに比べ、増税幅1%当たりで0.7~0.8%(前期比年率)も乖離していました。つまり、3回とも増税時には同程度の影響があったと考えることが出来ます。

問題は、その後ですね。

小黒: そうです。消費税を導入した1989年は、引き上げ後間もなく、実際のGDP成長率(実質)が、平時の成長トレンドを超える上昇に転じました。しかし、97年は3四半期後からトレンドを大きく下回る落ち込みとなりました。そして、2014年は3四半期後からは、ほぼトレンド並みになりました。

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「消費増税は本当に延期すべきなのか」の著者

田村 賢司

田村 賢司(たむら・けんじ)

日経ビジネス主任編集委員

日経レストラン、日経ビジネス、日経ベンチャー、日経ネットトレーディングなどの編集部を経て2002年から日経ビジネス編集委員。税・財政、年金、企業財務、企業会計、マクロ経済などが専門分野。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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