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誰もが予備軍、自分を虐待しゴミ屋敷に住む人々

岸恵美子 東邦大学教授に「セルフネグレクト」について聞く

  • 柳生 譲治

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2017年7月11日(火)

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「セルフネグレクト」の延長線上には「孤立死」が

そもそも「セルフネグレクト」になる要因にはどのようなものがあるのでしょう。

生活上必要な行為を「しない」のではなく、心身の病気により「できなくなる」ケースも。

:配偶者や子供など近親者を亡くしたことにより生きる意欲を喪失してしまったケースや、精神的な病や糖尿病のような慢性疾患により自分自身の世話ができなくなったケース、人間関係のトラブルにより孤立して生活の意欲を失ってしまったケースなどが多いです。

 最近では東日本大震災により深刻な被害を受けた方で、どうしようもない喪失感によって生きる意欲を失ってしまったようなケースもあります。

 もともと日本人は、人に迷惑をかけることを嫌う傾向が強いため、「少々のことは我慢すべきだから~」「お金がないから~」「もう高齢だから~」といった理由で行政の支援を拒否する傾向が強いのです。また、経済的貧困やプライドの高さゆえに、生活保護などの行政サービスを受けたり病院に行ったりするのを頑なに拒むケースもあります。

 ちなみにセルフネグレクトには、生活の中で当然行うべき行為を「行わない」というケースと、当然行うべき行為を病気などにより「行えない」ケースの2つがあります。いずれにせよ、心身の健康がおびやかされることとなり、その延長線上には「孤立死」があります。

 孤立死をされた高齢者の方の8割の方がセルフネグレクトだったという調査もあります。だからこそ周囲の人が早期にその兆候を見つけて支援する必要があるのです。

医療を「拒否」するケースは、喫緊の課題

岸先生はもともと保健師として、孤立した高齢者のケアにあたって来られたわけですが、「セルフネグレクト」の状態に陥ってしまった人について、直接、見聞きしたケースでは、どのような人がいましたか?

:ケースは様々ですが、保健師の立場としては、一刻も早い治療が必要な病気なのに医療を拒否する人の対応に最も悩みました。生死がかかっていますから。

 守秘義務もありますので、詳細はぼかしてお話しいたしますが、かつて直接担当したある60代の男性の場合は、糖尿病を患っているのに病院を受診していませんでした。区の生活保護担当のワーカーから受診を勧めてほしいと依頼されて、初めて私がその男性に会った時にはすでに壊疽(えそ)によって片足を切断していました。きちんと通院して薬を飲んでさえいれば、そんなにひどい状況にはなるはずがなかったのに。

 何度言ってもなかなか病院に行ってくれません。こればかりは本人が承諾してくれないとどうにもならないのですが、粘り強く何度も足を運ぶうちに本音も話してくれるようになりました。その人は家族とは別居してしまっていたのですが、心の奥では「家族に会いたいと願っている」と打ち明けてくれました。家族に会うことを再び考え始めてから、ようやくヘルパーと一緒に買い物に行く意欲も出て、少しずつ心を開いてくれるようになりました。信頼関係を築くことの重要さと難しさを同時に教えてくれたケースでした。

コメント24件コメント/レビュー

たいへん興味深く読んだ。日本国憲法の前文に「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり…以下略」とある。国政に準ずるものとして地方自治があると私は考えるので,行政による福利は市民が享受することが当たり前だと私は考える。したがって,憲法13条と25条の条文からも,行政の積極的な関与が必要だろう。
 ただ,ここで,「個人の権利」としての「尊厳死」の問題もある。我々が憲法に込めた理想は表面的な豊かさだろうか。この記事は「心の自由」と「社会の一員としての責務」の間にある問題に触れている気がする。「ゴミ屋敷」が迷惑であり,「公共の福祉」に反していると思う。この対策は必要だ。しかし一方で,表面的な解決は根本的な解決にはならないことを記事は伝えている。「健康で文化的な生活」は誰もが保障されねばならないものだ。これを追求するのが役所の責務である以上,「心の自由」にタッチしていく必要が生じる。「個人の尊厳」,「プライバシー」にどこまで立ち入るかは高度な判断を要する問題だ。足立区の取り組みはその意味では野心的で,リスクを伴うもので,「行政の勇気」に敬意を表する。こうした取り組みがより広くおこなわレ,かつ,公開の場で「公明正大」に議論されることを期待する。そして,事例を積み,決心から確信へ,試行から決行へそして行政標準へと進めることで,「民主国家」「福祉国家」としての理想を現実化して行くことを希望する。そのためにも,こうした記事が積極的に上梓され続けることを希望します。頑張ってください。(2017/07/17 12:38)

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たいへん興味深く読んだ。日本国憲法の前文に「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり…以下略」とある。国政に準ずるものとして地方自治があると私は考えるので,行政による福利は市民が享受することが当たり前だと私は考える。したがって,憲法13条と25条の条文からも,行政の積極的な関与が必要だろう。
 ただ,ここで,「個人の権利」としての「尊厳死」の問題もある。我々が憲法に込めた理想は表面的な豊かさだろうか。この記事は「心の自由」と「社会の一員としての責務」の間にある問題に触れている気がする。「ゴミ屋敷」が迷惑であり,「公共の福祉」に反していると思う。この対策は必要だ。しかし一方で,表面的な解決は根本的な解決にはならないことを記事は伝えている。「健康で文化的な生活」は誰もが保障されねばならないものだ。これを追求するのが役所の責務である以上,「心の自由」にタッチしていく必要が生じる。「個人の尊厳」,「プライバシー」にどこまで立ち入るかは高度な判断を要する問題だ。足立区の取り組みはその意味では野心的で,リスクを伴うもので,「行政の勇気」に敬意を表する。こうした取り組みがより広くおこなわレ,かつ,公開の場で「公明正大」に議論されることを期待する。そして,事例を積み,決心から確信へ,試行から決行へそして行政標準へと進めることで,「民主国家」「福祉国家」としての理想を現実化して行くことを希望する。そのためにも,こうした記事が積極的に上梓され続けることを希望します。頑張ってください。(2017/07/17 12:38)

この記事では、自ら望んでセルフレグレクトしている人、
病気によりセルフネグレクトになってしまった人、
のふた通りを示しているが、

そのほかに、なんらかの原因により意欲が低下して、
セルフネグレクトになった人が多いことを忘れてはならない。
この記事は、こうした場合を自己意思としているのだが、
それはどうかと思う。(2017/07/13 21:29)

>今から10年程前の40代前半で独身だった当時、アパートに住んで、家の中がゴミ屋敷になりました。私は普通の会社員ですが

私と同世代の方とお見受けしますが、同様のライフスタイルの私はゴミ屋敷にはなりませんでしたよ。時間が無くとも収入の有る勤め人ならば、お金を払えば割高ですが回収業者が整理・回収してくれます。それこそ土日の自分が寝ている傍らでもOK(笑)。
「分別が厳しいから」等は御自身の後ろめたさに対する言い訳であり(エアコンの不法投棄についても「俺の所為じゃない」匂いがします)、ゴミ屋敷化する人は高齢者なら認知症、若い方なら何らかの発達障害の疑いがあります。私の友人(同世代の単身生活者)が当にそうなのですが、家の中が全て1m以上の「地層」に覆われている惨状です。食品等腐るものを放置していないのが救いですが、「クリーニングから戻ってきたワイシャツが見つからないのでいつも新品を買っている」ような状態で地層がますます堆積しています。
奥様が何らかの違和感を感じているようでしたら、心療内科等への受診も一案かと思います。もし気分を害されたようなら済みません。(2017/07/13 09:26)

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