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日経ビジネスの「病院経営力ランキング」には納得がいかない

改革の旗手、がん研有明病院・草刈隆郎理事長が語る病院経営の神髄

2015年7月16日(木)

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 日経ビジネス6月1日号の特集「日本の医療を救え」では、独自に作成した「病院経営力ランキング」を公表した。このランキングの反響は大きく、各方面から様々な意見を頂戴した。

 「納得がいかない」――。がん研有明病院(700床)を核とし、100年以上の歴史を持つ公益財団法人がん研究会(東京都江東区)の理事長を務める草刈隆郎氏からは、こんな反論が寄せられた。草刈氏と言えば、日本郵船の社長、会長を歴任して経営改革に辣腕を振るうとともに、政府の規制改革会議の委員、議長として名をはせた人物。2011年4月、がん研に請われる形で、理事長に就任した。

 当初は畑違いの領域に戸惑いながらも、持ち前の旺盛な改革精神で、経営改善に取り組み、確実に成果を収めてきた。「その間、いろいろ見えてきたものがある」と同氏は言う。

 日経ビジネス「病院経営力ランキング」に覚えた違和感に加え、草刈氏が感じ取った病院経営の神髄について聞いてきた。

(聞き手は庄子 育子)

草刈 隆郎(くさかり・たかお)氏
公益財団法人がん研究会理事長、日本郵船特別顧問。1940年東京都生まれ。64年に慶応義塾大学経済学部を卒業し、日本郵船に入社。94年取締役、99年専務を経て、99年8月社長に就任。2004年6月から会長。同年、日本経済団体連合会副会長と、政府の「規制改革・民間開放推進会議」委員に就任。日本郵船相談役に就いていた2011年4月にがん研究会の理事長に就任。

日経ビジネスが独自に作成した「病院経営力ランキング」にご不満があると伺いました。

草刈:がく然としましたね。どういう基準でこういうものを出したのか、調査概要に説明が書いてあったが、納得できない。

 何が問題かというと、民間病院と公立病院を同じ土俵で語ってしまっていること。公立病院は国や自治体から多額の繰入金を得ており、赤字を補填している。困れば繰入金が出て赤字でも何とかやっていけるようになっているから、経営努力に欠けているところが少なくありません。

 その点、民間病院の経営はシビアですよ。がん研はよく誤解されるが、公立ではなく、私立の組織。民間病院と同じ財政基盤で運営しています。

支出面を見ずに「経営力」とうたうことには無理がある

本来であれば、経営力を測るには、各病院の決算書類を見るべきで、公立病院に関しては繰入金無しでの経常収益を算出して民間病院と比較するなどの方法を取らねばなりません。ただ、日経ビジネスオンラインの記事には少し詳しく書いたのですが、各病院の決算内容は上場企業のように広く公開されているわけではありません。ですので、今回のランキングには各病院の決算内容を反映しておらず、その結果、結局のところ、支出に関する情報を一切考慮していない調査結果となりました。従って、今回のランキングにおける「経営力」はあくまで各病院のいわば「稼ぐ力」を見たものになります。

草刈:支出面を見ていないで、「経営力」とうたうことにはやはり無理があるのではないですか。こういうランキングは患者の受療動向にも影響があるし、ミスリーディングだと感じます。まあ、そこまで責めるつもりはありませんがね。

 それにしても、「経営力」って、病院に銭儲けしろと言わんばかりで、気に入りませんね。そもそも病院と普通の企業とでは求められる社会性が大きく違うが、その視点が抜け落ちている。病院は儲からなくてもやらなければいけないことがある。病院で一番大事なのは、患者さんへの貢献ですよ。金儲けすればいいというものでは決してない。金儲け第一なら私はここの理事長職を引き受けていませんから。

 これから人口は減るけれど、がんの患者は増えていく。高齢者の場合は、手術ができないとか、心臓に欠陥があるとか、非常に難しい状態になっているので、がんを再発する人が多くなるのも明らかでしょう。そうした状況を前に、何とかして医療のクオリティーを高めて、完治を目指すなど、できるだけ患者に寄り添ってサポートしていくというのが、当法人の使命だと思っています。

 とにかく金儲けだけというのは我々の精神と全然違う。ですから、病院としてたとえ損してもやらなければいけないことはやっていくつもりです。

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「日経ビジネスの「病院経営力ランキング」には納得がいかない」の著者

庄子 育子

庄子 育子(しょうじ・やすこ)

日経ビジネス編集委員/医療局編集委員

日経メディカル、日経DI、日経ヘルスケア編集を経て、2015年4月から現職。診療報酬改定をはじめとする医療行政や全国各地の医療機関の経営を中心に取材・執筆。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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