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日本に徴兵制は向かない

ブルッキングズ研究所のマイケル・オハンロン上級研究員に聞く

2015年8月17日(月)

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 集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案が参議院で審議中だが、これをきっかけに一般市民が戦争に巻き込まれることを危惧する声が広がっている。

 日本は憲法9条で、自衛のための手段を除いて「戦争放棄」を掲げ、米国の軍事力の下で戦後70年の間、平和を享受してきた。一方で、世界の安全保障を取り巻く環境は大きく変わってきた。同盟国である米国から見た場合、日本はどのような立ち位置にあるのだろうか。米国で、安全保障の専門家として知られるブルッキングズ研究所上級研究員のマイケル・オハンロン氏に聞いた。

(聞き手は広野彩子)

日本では安保関連法案の国会審議をきっかけに、徴兵制の復活などで、将来的に一般市民が戦争に巻き込まれることを懸念する声も聞かれます。安倍晋三首相は「(徴兵制は)憲法違反。導入は全くあり得ない」などと否定しましたが、一方で徴兵制を肯定するような政治家らの声も報道されています。ところで徴兵制ですが、米国は1960年~75年のベトナム戦争を最後に、やめましたね。

オハンロン:そうです。やめた理由はたくさんあります。ご存じの通り、ベトナム戦争は、米国人に大変な苦難と悲しみをもたらした戦争でした。当時は徴兵制でしたが、対象になる全員を動員する必要はなく、くじ引きでした。

 米軍の規模は大きかったものの、巨大というほどではありませんでした。第二次世界大戦時は約1000万人の軍隊でしたが、ベトナム戦争では300万人規模でした。第二次大戦レベルほどの徴兵をする必要はないのに、当時は兵役を義務付ける方が適切だと判断したのです。

いまだ傷癒えぬベトナムの記憶

 ですから実際は、多くの人々が兵役免除になりました。どんな人間なら徴兵を避けられるのかについて、大きな議論が起こりました。しかもこの戦争に派兵された人々は、やる気があったわけでもなければ、きちんと訓練を受けたわけでもありませんでした。急に動員されて、短期間で帰還するという感じでした。兵力のレベルが必要な水準に達していなかったのです。

マイケル・E.オハンロン(Michael E. O'Hanlon)氏
 1961年生まれ。米プリンストン大学で公共政策・国際関係論の博士号(Ph.D.)を取得。現在、ブルッキングズ研究所上級研究員兼外交政策研究部長。安全保障問題の専門家としてメディアを通じて積極的に発言し、米コロンビア大学、プリンストン大学などで教鞭も執る。 (写真は加藤康、以下同)

 このレベルの低さが戦争の結果に大きく影響したと思われます。率直に言えばミスを犯したのは上官たちで、戦地の兵士たちではなかったでしょう。しかしいずれにせよ、大変不幸な経験でした。もっと違ったやり方があったはずです。

 しかも当時は資金不足でした。書類上の数字などを見ると一見問題なさそうに見えましたが、かなり「空洞化」していたのです。(士気や装備、戦闘能力など)中身もボロボロだったのです。

 ベトナムの教訓を受け、過ちを繰り返さないための策の1つが軍隊の「職業軍人化」でした。個人の自由意志に基づいた志願制で任務についた軍人たちを、きちんを手厚く処遇し、最新の装備や訓練を提供できるような環境整備を進めていったのです。

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「日本に徴兵制は向かない」の著者

広野 彩子

広野 彩子(ひろの・あやこ)

日本経済新聞社NAR編集部次長

朝日新聞記者を経て日経ビジネス記者、2013年から日経ビジネス副編集長。日経ビジネスオンラインでコラムの執筆・編集を担当。入山章栄氏の著作『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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