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「現役世代だけが支える社会保障制度は、見直すべきだ」

森田朗・社会保障・人口問題研究所所長に聞く

2015年9月14日(月)

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日経ビジネス本誌9月14日号特集「あなたに迫る 老後ミゼラブル」では、高齢者が急増し、社会全体の対応が追い付かない中、普通の社会人が転落しかねない日本社会の実態に迫った。未曾有の高齢化が進む中で今後、現役世代はどう生き抜いていけばいいのか。森田朗・国立社会保障・人口問題研究所長に話を聞いた。(聞き手は広野彩子)

森田さんはここのところ、かなり悲観的な予測に基づいた提言をされています。

森田:国立社会保障・人口問題研究所は、客観的な事実から将来をどう読み取れるかについて分析しています。一般的な成長率の予測などに関して言うと、非常に楽観的な予測で語られることが多いですね。暗い将来は考えたくないというお気持ちでそうなるのだと思うんです。

 ですので将来をあくまで楽観的に見るんですが、これが、必ずしも現実に即した議論をしていないと思うわけです。

 私が言い始めて最近はほかの人も使っていますが、政策が「エビデンスベースド(evidence-based、客観的根拠に基づく)」ではなくて「願望投影型」になっているということなのです。

願望投影型の政策がもたらす国難

願望投影型?

森田:こうありたいという形から逆算していくやり方です。例えば、財政赤字を減らしてプライマリーバランスを黒字化するのを2020年に実現しようとすれば、経済成長率を逆算して3%を見込む。これが典型的なケースです。

 今の地方創生の政策も、かくありたいという「思い」が政策に投影されている。衰退した地方の自治体がかつてのように繁栄したいと願い、国から補助金を出してもらって人を呼び寄せ、人口を増やそうと考えています。しかし人口の原理からいうと、大量に海外から移民でもない限り、人口は長期間増えません。

 例えば今年20歳の人は125万人ぐらいです。どこかの自治体がこの20歳の人口を増やしたら、別のどこかでその分減るだけの話で、ゼロサムゲームなのです。

 東京にはたくさん若者がいるから引き戻そうという議論も出ていますが、そうしたら東京の若い人たちも、これからどんどん減っていくことになります。

確かに最近、首都圏の高齢化が注目され始めています。例えば首都圏の特別養護老人ホームなどの施設整備が、高齢者人口の増えていく規模から考えるといずれ追いつかなくなる。一方で、高齢化はそのペースを超えるスピードで進んでいくと。

森田:私はそのことを数年前から言っているのですが、生まれた時の同世代の数というのは増えることはなく、だんだん減っていきます。当たり前の話ですが。

森田朗(もりた・あきら)氏
国立社会保障・人口問題研究所所長
1951年、兵庫県生まれ。76年、東京大学法学部卒。行政学、公共政策の研究者として、東京大学大学院法学政治学研究科教授、東京大学公共政策大学院教授、同大学院院長、総長特任補佐、東京大学政策ビジョン研究センター長、学習院大学法学部教授などを歴任。東京大学名誉教授、前厚生労働省中央社会保険医療協議会会長。
(写真:尾関裕士、以下同)

 昔は途中で次第に亡くなり、人口構造が文字通りピラミッド型になったのですが、今は高齢になるまであまり亡くならないから、毎年生まれる子供が少なくなればなるほど、人口ピラミッドの底辺、つまり若年層がすぼんだツボ型になってきます。

 2060年に一番多い世代は86歳です。早くたくさん亡くなるか、亡くならないかで推計には中位と低位と高位とあるのですけれど、中位推計で86歳の女性が71万人もいる一方、同じ中位推計で新しく生まれてくる女の子が23万人しかいないという状況です。

45年後ですね。45年後で86歳というと、第2次ベビーブーム世代にあたります。

森田:この間に1人の女性が産む子供の数が増えたとしても、母集団の実数がここまで少なくなってくると、人口は一体どこまで減ってしまうのか、という話です。産む世代の女性の数自体が半分になれば、短期的に増やすのはまず無理でしょう。

 出生率がずっと下がってから安定し、その後はうまくすれば上がってくると言うけれど、それは30年~40年先の話になりかねない。なかなか政策的にコントロールできないのが実情です。

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「「現役世代だけが支える社会保障制度は、見直すべきだ」」の著者

広野 彩子

広野 彩子(ひろの・あやこ)

日本経済新聞社NAR編集部次長

朝日新聞記者を経て日経ビジネス記者、2013年から日経ビジネス副編集長。日経ビジネスオンラインでコラムの執筆・編集を担当。入山章栄氏の著作『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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