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元受刑者が働く居酒屋を歌舞伎町に開店したワケ

“仕掛け人”玄秀盛氏が語る出店の狙いと今後の取り組み

2015年10月1日(木)

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 日本最大の歓楽街である新宿・歌舞伎町に今年4月末、「新宿駆け込み餃子」という、少々変わった名前の居酒屋がオープンした。一見、普通の居酒屋だが、刑務所や少年院を出た人がスタッフとして働く。

 開業を仕掛けたのは、公益社団法人日本駆け込み寺代表の玄秀盛氏。これまで13年にわたって、歌舞伎町でドメスティックバイオレンス(DV)やストーカー被害、多重債務、引きこもりなど、様々な難題の相談に応じてきた。来る者を拒まず、独特の関西弁で、トラブルからの脱出策を指南する。場合によっては被害者をかくまい、加害者と対決する。

 自らも壮絶な半生を送ってきた玄氏。だからこそ、もがき苦しむ人々のあらゆるSOSに応えたいとの思いは強い。

 「たった一人を救うために自分がまず動く」――。これが玄氏のモットーだ。刑務所出所者支援の居酒屋のオープンに無事こぎ着けたが、持ち前の行動力で次なる目標の実現に向け、既にひた走る。

 「新宿駆け込み餃子」開店までの経緯、現在の問題意識、これから取り組む課題について話を聞いた。

(聞き手は庄子 育子)

今年4月に新宿・歌舞伎町にオープンした「新宿駆け込み餃子」の店内の様子。救済・復興の意味を込めて、「江戸火消し」の要素をデザインに取り入れた。店の壁には、資金の一部を寄付して応援する企業や個人の名前の入った木札がずらりと並ぶ(写真提供:公益社団法人日本駆け込み寺)

まずは、新宿・歌舞伎町で居酒屋「新宿駆け込み餃子」を始めた理由を教えてください

:もともと自分自身、13年前から歌舞伎町で、悩みを抱えた人向けの相談活動を行ってきた。駆け込み寺というスタンスで、DV、ストーカー、家出、自殺志願、多重債務、家庭内暴力など様々な相談に乗ってきた。その数は3万件以上になる。

 駆け込み寺に来る相談者の多くは、暴力やストーカーの被害者。被害者からの相談に乗るだけではなく、加害者側にも必ず接触を試み、話をするのが俺の流儀。そうせえへん限り根本解決できないので。するとDVなどの加害者の3割近くに前科があることが分かった。

 前科者だからなかなか職にありつけん。そのため、配偶者やパートナーの女性を力ずくで離さんでおこうとする。被害を減らすには加害者への対応が欠かせないと感じた。

だから、出所者支援の居酒屋をつくったわけですね

:以前は刑務所を出てきた人に、仕事を紹介すれば事足りると思っていたのも事実。それで実際に建築業や飲食店などの現場につなげた。もちろん、雇い主には前科があることをあらかじめ伝えて、理解してもらっていた。

 けれど、出所者は他人との意思疎通やコミュニケーションに難がある人が多く、職場になかなか根付かない。刑務所では自由な時間がほとんどなかったので、人とどう関わったらいいのか分からなくなってしまっている。

 加えて、同僚、ましてや顧客に自分の過去を決して知られてはならないと感じていて、自分の殻に閉じこもりがちになる。すると、職場で居場所がなくなって、いつしか「アイツは前科があるらしい」という話になる。

 そこから、前科者と決めつけられるのに時間はかからない。「だから目つきが悪い」「何しでかすか分からない」と言われ、職場で物がなくなれば、すぐに犯人扱いされてしまう。

 悩みを人に相談することもできなければ、結局また犯罪に手を染めてしまう可能性も高くなる。

 こりゃあかんということで、何かほかに方法がないかと考えた時に、それならばいっそのこと、居酒屋で出所者が働いていることを公言した店を作ればいいという発想になった。

出所者に対する偏見を取っ払ってもらいたい

実は、私は6月末ごろ、家族を連れて「新宿駆け込み餃子」に行ってみたんです。料理の味や店の雰囲気がどうなのかを探ってみたいと思って。若手の店員さんに何度か注文していたら、「実は僕、前科があるんです」と打ち明けられて、びっくりしました。見た目で判断するわけではないですが、さわやかな好青年風でしたので……

:「えっ、こんな子が」と思ったでしょ。それでええねん。一般の人にとって、前科者のイメージはきっと「怖い」「汚い」「きつい」「暗い」「危険」の“5K”といったところ。誰も知り合いたいと思っていない。

 けれど、刑務所を出てきたといっても、案外普通の人であることが多い。こういう子らがいるというのを世間に知らしめたかった。一般の人にもぜひ出所者に対する偏見を取っ払ってもらいたいというのが俺の願い。

 その意味で、何でもありの世界の歌舞伎町なら、懐が広いところがあるので、出所者が働く居酒屋が存在していても許されるし、はっきり言って日本一の歓楽街でこんな店をやれば目立つ。だから、世間の出所者に対するイメージを大きく変えるには、ここから発信していくことが大事だと思った。

コメント4件コメント/レビュー

最後の企業へのメッセージが特によかった。目立たないが身近なところにある問題に地道に取組む活動にこそ、企業はお金を使ってほしい。同時にそういう社会貢献がきちんと評価される社会でなくてはいけないが。(2015/10/05 15:13)

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「元受刑者が働く居酒屋を歌舞伎町に開店したワケ」の著者

庄子 育子

庄子 育子(しょうじ・やすこ)

日経ビジネス編集委員/医療局編集委員

日経メディカル、日経DI、日経ヘルスケア編集を経て、2015年4月から現職。診療報酬改定をはじめとする医療行政や全国各地の医療機関の経営を中心に取材・執筆。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

最後の企業へのメッセージが特によかった。目立たないが身近なところにある問題に地道に取組む活動にこそ、企業はお金を使ってほしい。同時にそういう社会貢献がきちんと評価される社会でなくてはいけないが。(2015/10/05 15:13)

はがき案が素晴らしい!!!誰も考えつかなかった、又は考え付いても実際に行動できないところを、実際に行動に起こせる玄秀盛氏を心より尊敬いたします。玄氏のような方がもっともっと増えたらこの日本社会はよくなると思います。心より応援申し上げます。(2015/10/05 13:43)

玄さんへ、いのちの葉書をネットカフェやファミレスなどにも置いてもらっては如何でしょうか?少なくとも更生しようとしている人達は応援する社会であって欲しいと思います。(2015/10/01 15:19)

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