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山崎豊子の作品はなぜ日本人に愛されたのか

『白い巨塔』や『沈まぬ太陽』は徹底した取材から生まれた

2015年9月29日(火)

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 9月29日は作家・山崎豊子の三回忌。『白い巨塔』や『不毛地帯』『大地の子』『沈まぬ太陽』などの作品は、どれも社会問題に深く切り込む一方、多くの日本人に愛読された。映画やドラマを通じて、山崎作品に触れた人も多いことだろう。

 日本橋高島屋(東京都中央区)では現在、創作メモや取材ノートなどの資料を公開した「追悼 山崎豊子展」が開催中だ。ここに展示された資料を見ると、山崎豊子という作家は綿密に創作ノートを作り、徹底した取材で事実を追い、確かめ、小説に描いてきたことが分かる。

 遺作『約束の海』の編集を担当した新潮社出版企画部山崎プロジェクト室の矢代新一郎室長に、これまであまり知られていなかった「不屈の作家」の真の姿を聞いた。(聞き手は西頭 恒明)

山崎豊子さんが亡くなって、9月29日でちょうど2年がたちます。映画やドラマ化された作品も多く、多くの日本人に愛された作家でした。実は、私も堺市のご自宅に取材でうかがったことがありましたし、多くの作品を愛読しています。

矢代:ほとんどの日本人が小説、もしくは映画やドラマで山崎作品に接しているのではないでしょうか。どの小説も面白く、しかも中身が濃くて何度読んでも楽しめる。ドラマにしても、小説を読んで筋を知っているのに面白くて見てしまう。2003年に再びドラマ化された『白い巨塔』などは、おそらくそうした視聴者が多かっただろうと思います。

晩年の山崎豊子を担当した新潮社の編集者、矢代新一郎氏。同社出版企画部山崎プロジェクト室室長として、山崎豊子展の開催や『山崎豊子 スペシャル・ガイドブック』の制作に携わった

 名前はよく知っていても作品を読んだことはないという作家は世の中に多くいますが、小説もドラマもこれだけファンがいるというのは、稀有な存在なのではないでしょうか。

2003年の白い巨塔は、唐沢寿明さんが主人公の財前五郎を演じた作品ですね。私は財前教授と言えば、田宮二郎さんの印象が強いです。ほかにも、『不毛地帯』『大地の子』『沈まぬ太陽』と、小説はもちろん、映画やドラマに見入った作品がいくつもあります。

矢代:今回の展覧会の最大の目的は、山崎さんのデビュー作から遺作の『約束の海』に至るまでを、なじみやすいエピソードや実際に映像化された作品のダイジェストなどで丁寧に紹介することでした。来場者の方にはあまり難しく考えず、「この小説、ドラマで観たことがある」とか、「今度はこの小説を読んでみたいな」と思ってもらえるといいですね。

初めて一般に公開される資料がたくさんあるそうですね。

矢代:意外に思われるかもしれませんが、こうした展覧会を開くのは今回が初めてです。生前、山崎豊子文学館のようなものを作ろうという話が持ち上がったことはありました。ただ、『約束の海』を書き始めることになったら、山崎さんはもうそちらに掛かりきりで実現しなかったんですけど、そのころに僕も膨大な資料の一部を見せてもらいました。貴重な生原稿だったり、創作メモや取材ノートに写真、集めた資料だったりと。

 展覧会を開くに当たり、改めてご自宅で資料などを探してみたら、段ボール箱100箱くらいが見つかりました。初期の作品の資料は昔のことですからどんどん捨ててしまったのでしょうが、後半になるとどの作品も5箱も10箱もあるという感じで。その中身を1つずつ確認しながらリストを作成しました。

 山崎作品は先ほども言ったように、どれも面白い。それには当然、理由があるわけです。その1つが、世界中を取材して歩き、これだけの資料を集めていることからも分かるように、山崎先生は「努力の人」であったということです。それともう1つ、「読者第一の人」であると。この2つがポイントだと思うんです。それを皆さんに知ってもらいたいですね。

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「山崎豊子の作品はなぜ日本人に愛されたのか」の著者

西頭 恒明

西頭 恒明(にしとう・つねあき)

日経ビジネス副編集長

1989年4月日経BP社入社。「日経イベント」を経て、96年8月「日経ビジネス」編集部に異動。2008年10月日経ビジネス副編集長。2009年1月日経情報ストラテジー編集長。2012年1月より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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