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東芝の不正に大きく影響した成果主義の弊害

企業不祥事研究の第一人者、樋口晴彦・警察大学校教授に聞く(後編)

2015年10月21日(水)

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 組織ぐるみで不正な会計操作をしていた実態が明るみに出て、歴代社長3人が辞任する事態に至った東芝の会計問題──。

 日本を代表する“名門企業”で発覚した不祥事からどのような教訓を導き出し、同様の不祥事の防止につなげるべきなのか。危機管理の専門家で、企業不祥事研究の第一人者である樋口晴彦・警察大学校警察政策研究センター教授に聞いた。今回はインタビューの後編をお届けする。

(聞き手は中野目 純一)

前編から読む)

内部統制などの仕組みを機能不全に陥らせることなく機能させるために、どういうことから取り組んだらいいのでしょうか。

樋口:すべての不祥事の防止に効果があるような「特効薬」はありません。原因メカニズムを構成する個々の問題点について、それぞれ手を打っていくしかありません。例えば、先述した社外取締役の人選も、具体策となると本当に細かい話になりますよね。そうしたポイントを一つずつきちんと押さえていくことが重要です。

 具体的な細かいことをいろいろと手当てしていくのは、結構大変なことです。さらに、細かいことだけではなくて、企業の体質や社内制度といった大きなものにも手を付けざるを得なくなることがあります。

 今回の東芝の件でも、成果主義が相当に影響したとされていますが、このように成果主義が不祥事の原因メカニズムとなったケースは過去にも少なくありません。例えば、東京都の認可基準に適合しないディーゼル車排ガス浄化装置(DPF)を販売していた三井物産の事例が挙げられます。この事件の背景として、成果主義によって社員個人が自分の業績だけを追求する風潮が広がっていたことから、同社は人事評価制度を大きく見直しました。

依然として後を絶たない成果主義の弊害

東京都から認可を取得する際に、虚偽の試験データを作成・提出していたという事件でしたね。

樋口:最近も成果主義の弊害がいろいろな企業で続出していますが、裏を返せば、そうした問題に対する手当てがなされていないということです。新著『なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか-有名事件13の原因メカニズムに迫る』(日刊工業新聞社)で取り上げたアクリフーズ(現マルハニチロ)の農薬混入事件もひどかったですね。この会社では契約社員にも成果主義を適用していたのですが、経営者が成果主義というものを全く理解していなかったと言わざるを得ません。

 成果主義というのは、「本人の努力次第で業績を伸ばせること」が前提となります。そのためには、本人がある程度の裁量権を持っていないといけない。そうした裁量権が全く与えられず、言われた通りの仕事をこなすだけの契約社員に成果主義を適用すること自体がおかしいのです。「契約社員のやる気を引き出すため」と言い訳していたようですが、本音のところは人件費の削減が目的だったのでしょう。アクリフーズでは、成果主義の導入によって、契約社員全体の平均年収が大きく減っていましたからね。

 それ以外の企業でも、成果主義がうまくいっていないケースが少なくありません。その多くは、成果主義を上手に機能させるための仕組みについて全く考えていないからです。例えば、成果主義では本人の実力によって差がつく以上、個々の従業員に対して実力を伸ばすための教育プログラムを提供することが必要です。この対策は極めて分かりやすいですよね。こういうことをやっているかどうかで効果が大きく違ってきます。さらに成果主義といっても、結局は相対評価です。その場合に、自分個人の業績を上げるために、あえてチームを犠牲にするということが起きやすいのです。

 例えば、皆で10億円の売り上げを獲得するよりも、自分1人で1億円の売り上げとした方が個人の評価が相対的に上がるケースがあります。こうしたことを防ぐためには、成果主義を設計する際に、個人成績の比重とチーム成績の比重を加減しないといけません。言ってみれば当たり前のことですが、実際にはやっていない。

 それどころか、仕事の内容に関わらず、一律に成果主義を導入している企業が多いようです。私はこうした対応を「原理主義」と揶揄していますが、決してうまくはいきません。仕事の内容によって、個人とチームの比重は当然に変えるべきです。また、各人がばらばらに営業をしている場合は別として、ある程度チームで動くような職場であれば、役割分担があってしかるべきです。こうした点について、評価の基準をいろいろ微調整しなければいけません。

 ところが、そうした微調整をするための裁量権を現場の管理職に与えているかといえば、ほとんど与えていないのです。「人事部で制度を決めてしまったから、あとは一律これでやってくれ」といった感じです。

 さらに成果主義で社員のやる気を引き出す大きなポイントは「納得感」ですね。

納得感、ですか…。

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「東芝の不正に大きく影響した成果主義の弊害」の著者

中野目 純一

中野目 純一(なかのめ・じゅんいち)

日経ビジネス副編集長

2012年4月から日経ビジネス副編集長。マネジメント分野を担当し、国内外の経営者、クリステンセン、ポーター、プラハラードら経営学の泰斗のインタビューを多数手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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