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「スッキリしたい」言語麻薬がトランプを走らす

新旧米大統領のスピーチ聞き比べ(後編)

2017年2月6日(月)

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(前編から読む→「身もふたもなく言えば、ヒトラーそっくりです」)

(西新宿の喫茶店、入店してインタビュー開始から約2時間が経過。本文敬称略)

トランプ大統領の就任演説も、ヒトラーの施政も、金持ちにも貧乏人にもいい顔をして、落としどころがない話をしている。しかし、ヒトラーに関して言えば、なぜすぐに底が割れなかったのでしょう。

片山:歴史を振り返ると、頭のいいポピュリストは、次のごまかしを持ち出して、前の話を忘れさせるんです。例えば経済がごまかせなくなったら、次は外交。「やる時はやるぜ」という姿勢を見せると、1年かそこらは「やっぱり彼はすごい」と人気を保てる。そして「どうしようもなくなった」と言われる前に、退任していれば上々、というわけです。

ひどい(笑)。そういう、うまく逃げおおせたポピュリストには誰かいますでしょうか。

片山 杜秀(かたやま・もりひで)氏
音楽評論家、政治思想史研究者、慶應義塾大学法学部教授。1963年生まれ。近著は『近代天皇論 ──「神聖」か、「象徴」か』(集英社新書)、『大学入試問題で読み解く 「超」世界史・日本史』(文春新書)。著書に『音盤考現学』『音盤博物誌』『クラシック迷宮図書館()』『線量計と機関銃』『現代政治と現代音楽』(以上アルテスパブリッシング)、『クラシックの核心:バッハからグールドまで』(河出書房新社)、『未完のファシズム』(新潮選書)、『近代日本の右翼思想』(講談社選書メチエ)、『ゴジラと日の丸』(文藝春秋)、『国の死に方』(新潮新書)ほか、共著書多数。朝日新聞、産経新聞、「レコード芸術」、「CDジャーナル」等で音楽評を執筆。2006年、京都大学人文科学研究所から人文科学研究協会賞を、2008年、『音盤考現学』『音盤博物誌』が第18回吉田秀和賞、第30回サントリー学芸賞をそれぞれ受賞。『未完のファシズム』が2012年度司馬遼太郎賞受賞

片山:たとえば毛沢東とか。彼は中国共産党の指導者として農民主体で共産主義革命を成功させ、資本主義擁護・ブルジョワ擁護の蒋介石を台湾に追い出して、中華人民共和国を作り出しました。ですが、肝腎の革命の主体である膨大な農民層を豊かにすることにはなかなか成功しなかった。それどころか非科学的な農法を推奨して餓死者を続出させたり、マイナスの政策も多かったでしょう。

 ところが農民はいつも毛沢東の味方なんですよ。毛沢東は国内に敵を作り出しては失敗の責任をそちらに押しつけて、農民を信じこませてしまう。国内で足りなければ中ソ対立を演出して対外危機も作り出す。「たいへんだ」と騒いで、「国民がひとつにまとまって頑張らなくては」とやっている間に何年もが過ぎた。万事そういう調子の毛沢東に任せていては中国は拙くなると、ついに引導を渡そうとした勢力を「人民の敵だ」として、純真な青少年を紅衛兵に仕立て、退治してしまいさえしましたね。それが文化大革命。

 失敗を逆に自らの権力強化に利用し、世界的アイドルになったわけです。日本でも「文化大革命は素晴らしい」という学者やジャーナリストが大勢いました。そんなこんなで最後まで偉いまま世を去りました。この人はやはり凄い。

「成長策が見えない」ことを認められない

ポピュリストは逃げれば勝ちでも、国民はたまったもんじゃありません。

片山:ただし、繰り返しになりますが、冷静に考えてみれば、大統領や首相が替わったからといって、新しい成長モデルが出てくるものではありません。しかも、経済のグローバル化が国家の経済に対する影響力をどんどん限定的にしている、つまり、「国家の経済的アクターとしての地位」は低下の一途を辿っているのが現代史ですから、さすがの米国大統領でも「グッドアイデアを実行すれば世の中がいきなり変わる」ということは、もう恐らくありえない。大統領がそういう約束をできると考えるほうがおかしい。

じゃあ、どんな約束ならできるんでしょう。

片山:「なかなかこれ以上は成長しない経済を受け入れて、苦しい思いもしてもらうけれど、最大多数がそれなりに人間らしく生きられるように工夫の限りを尽くし、社会主義的施策も辞さない」と言える政治家が、今の先進資本主義国には必要だし、それを支持できる「新しい価値観」を有する国民も登場しないといけないと、私は思うのです。

 でも実際には、オバマでもダメでしたし、新しい米国の指導者は出来ないことを「出来る」と言う人で、出来ないことを本気でやりそうで、支持者もなんたかそれに期待していると。末期的かもしれませんね。

「成長しない」ことを受け入れるのが、「新しい社会契約」なんでしょうか。なんだかぱっとしないというか…。

片山:いや、先進国が次の成長モデルを失っていることを「認められない」からこそ、現在の、まるで1930年代を思わせる状況が作り出された、と言った方がいいかもしれません。

そうか、「高度成長できる」と言い続けてきたからこそ、国民の失望が高まってしまって、ついにはトランプを生んだということですか。

片山:ええ。その結果、「時代が1930年代に回帰してきた」と感じています。本気でそう思います。考えても見て下さい。ブロック化、保護主義の流れや「米国第一」の大元には「分割しても成長できるんだ」という幻想があるでしょう。

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「「スッキリしたい」言語麻薬がトランプを走らす」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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