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「強運の山崎」が会社の原点にある

失敗は寝て忘れ、勘を磨き、ロマンを抱く

2017年10月30日(月)

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サントリー創業者を題材にした小説『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎』の作者・伊集院静氏と、創業者のひ孫に当たる鳥井信宏・サントリーホールディングス副社長による対談。第3回は、経営者に必要な資質を語り合う。創業者は失敗を責めず、勘を磨き、ロマンを抱いた。これからのサントリーの経営に必要なこととは。

■第1回 「お前のひいじいちゃん、そんなんやったんか

■第2回 「陰徳」のある国や企業が支持される時代になる

小説で印象深かったのが、鳥井信治郎の経営者としての大胆さです。夢をあきらめず、それに懸けるという大胆さを通じて、伊集院さんは読者に何を伝えようと思ったのですか。

伊集院:「運と縁」ということを何度か話していますが、鳥井信治郎ほど運がよかった人生も珍しい。まず、あの「山崎」という場所が手に入ったこと。あそこは17寺社が集まっていて、明治直後の廃仏毀釈で一番被害を受けていた場所なんです。廃仏毀釈で約半数の寺がやめてしまっていた。本尊をこんなに壊されたら、もうあかんと言って。

 そこに、今度は西洋のウイスキーの蒸溜所を作ろうだなんて、寺から見れば何を言っているんだ、敵ではないかということになる。

 ところが、なぜか信治郎は(妻の)クニさんを早いうちからここに連れて来て、ここは大事だぞと言い伝えている。それで、クニさんは頻繁に寺社を訪れて寄進を続け、最後にクニさんが乗り込んでいって交渉をまとめ、一発逆転してしまった。

 しかも、戦争中、一番奥の土地だったから、アメリカ軍が空から写真を撮って爆弾を落とす場所を決めたときも、ちょうど上から見るとほとんど寺社の屋根しか見えなかった。それともう1つは、蒸溜所も、上から見たら全く工場に見えない形だった。だから、爆撃を免れた。その運の強さというのはすごいですな。

伊集院静・作家
1950年生まれ。CMディレクターなどを経て1981年『皐月』で作家デビュー。91年『乳房』で吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で直木賞、94年『機関車先生』で柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で吉川英治文学賞受賞(写真:的野弘路)

鳥井:そういう点で言うと、原点に強運の山崎があるというのは、うちの会社にとってとてもいい話ですよね。

 例えば、シリコンバレーの多くの企業がガレージから始まったと言いますが、そのガレージ自体にはあまり物語がないでしょう。しかし、サントリーの戦後は山崎から始まり、逆に山崎がなければ始まらなかった。

伊集院:そうでしょうな。今の企業人たちにとって、見習わないといけないことがたくさんあります。

 私は経営というものは全く分からない。経営者の頭の中の苦悩とか、不安と言うものを想像はできない。だけれども、1つだけ私にも分かることがあるとすれば、それは物を作る人であり、経営者であるということが、経営にとって大事だということです。最初に経営のノウハウを学んで、そこから経営を始めるのではなく、これを作りたいという強い思いがあって、それを実現するために仕方なく経営をせざるを得なくなった、と言う経営者が、一番、バランスがいいと私は考えています。

 これだけ資源が少なく、土地も狭い日本で、企業が世界の中で生き残っていくには、物を作るということと併せて経営ができる人がトップに立っていることが、欠かせないと思うんです。それができていれば、中堅社員から現場の社員まで、一枚岩になれるのじゃないかな。

鳥井信宏・サントリーホールディングス代表取締役副社長
1966年3月生まれ。91年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、97年サントリー入社。2005年同社営業統括本部部長、2007年同社取締役、09年サントリーホールディングス(HD)執行役員、11年サントリー食品インターナショナル代表取締役社長、13年サントリーHD取締役、16年から現職(写真:的野弘路)

鳥井:大胆さという点では、私が一番近いのは佐治信忠会長ですが、会長を見ていると、最後はなるようにしかならんと考えているところが、すごくあるんです。いい言葉かどうかは別にして、腹が据わっているというか。会長は、「寝たら忘れる」とよく言っています。「寝て忘れるんや」と。その辺はたぶん、創業者からどこか受け継いでいるんだと思います。

伊集院:信治郎の言葉の中にもよくありますもんね。「失敗しても何も言わへんから、やってみなはれ」と言ってね。あれがすごい。失敗しなきゃ出てこないものがあるはずだというのを、本当によく分かっている。

鳥井:信忠会長も社長時代、社員との対談などの中で、決断のコツは何ですかと聞かれてよく、「勘や」と答えています。「勘は磨かなあかん」と言いますね。

1兆6000億円を投じた米蒸溜酒大手ビームの買収も、勘でしたか。

鳥井:あれは勘じゃなくてロマンです(笑)。

「対談:伊集院静氏×鳥井信宏氏(サントリーHD副社長)」のバックナンバー

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「「強運の山崎」が会社の原点にある」の著者

大竹 剛

大竹 剛(おおたけ・つよし)

日経ビジネス記者

2008年9月から2014年3月までロンドン支局特派員。2014年4月から東京に戻り、流通・サービス業を中心に取材中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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