小学校“中退”の発明家はこうして生まれた

 ゆるいシャツとパンツに、無造作な髪型。取材開始の予定時刻から1時間遅れてやってきたその人物は、悪びれる様子もなく朴訥とした語り口でこう話し始めた。

 「ネジをですね、再発明したんですよ」

 道脇裕という人物に初めて会ったのは2015年8月。「考え事をしていたら、全く違う駅で降りてしまったんです」と話す道脇氏は、一言で言うと、ものすごく変わった人物だった。

 「小学校はほとんど通っていません」「食事より発明の回数のほうが多いと思います」「平均睡眠時間は2~4時間くらいです」「アイデアは無限に浮かんできます」

 こちらが思わず面食らうような発言が次々と口から飛び出す。何度もメモを取る手を止め「本当ですか?」と聞き返すが、「驚くことですかね」とむしろ尋ね返される。

 この人、一体何者なんだ――。

 これが、ネジロウ(東京都港区)の社長、道脇氏と初めて会ったときの印象だ。

ネジロウの道脇裕社長。2015年8月、初めてネジロウのオフィスに取材に訪れたときに撮影した写真だ。カメラマンが何度も「笑顔をください」と言ったが、なかなか笑ってくれなかった。奇跡的に笑顔が出た写真がこちら。(写真:陶山 勉)

「絶対に緩まない」ネジを開発

 2009年、道脇氏は自身が開発した緩まないネジ「L/Rネジ」を商品化するためにネジロウを立ち上げた。L/Rネジの軸には、通常のネジにある螺旋(らせん)状の溝がなく、代わりに右螺旋と左螺旋の役割を同時に果たす特殊な溝が刻まれている。この軸に、互いに機械的に結合する右回転のナットと左回転のナットを同時に締め付けると、ナット同士が結合。振動などでネジが緩もうとしてもそれぞれのナットが逆方向に動くため「決して緩むことはない」(道脇社長)と言う。

 取材中、記者がL/Rネジのプラスチック模型を触っていた際に、間違えて2つのナットを結合させてしまったことがあった。数万円する模型だったが、「一度結合してしまったら二度と緩められないので、もう使い物になりません」とのこと。つまり、そのくらいネジは緩まない。ちなみに記者がこの後、何度も頭を下げ謝罪したことは言うまでもない。

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著者プロフィール

齊藤 美保

齊藤 美保

日経ビジネス記者

2011年中央大学法学部卒業。同年、日本経済新聞社に入社。産業部にて電機、IT、自動車業界を担当した後に、2014年3月から日経ビジネス編集部に出向。精密業界を中心に製造業全般を担当する。

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