”孤島”から僕を救い出してくれた人たち

思索と数学に没頭した20代を経て会社設立へ

緩まないネジを発明した、ネジロウ、道脇裕社長の軌跡を辿る連載4回目。10代後半を仕事や発明、実験にふける日々を過ごした道脇氏は、20歳で米国留学をする。20代後半はそんな生活から一転、家に引きこもりひたすら数学を研究していた。たくさんの支援者との出会いを経て、その後のネジロウ設立へとつながる。

連載1回目:「小学校“中退”の発明家はこうして生まれた」。
連載2回目:「学校は『量産型ロボット生産ライン』」。
連載3回目:「ルパン3世みたいな事故から生まれたネジ」。

 小中高とろくに学校に通わなかったにも関わらず、20歳の時、あることがキッカケで米国に留学することになる。

道脇:ある日突然、数年来の知人で予備校の校長をしていたアッちゃん(佐藤敦さん)から電話がかかってきました。

 「前に、米国の大学なら行ってみたいって言ってなかったっけ?今でもそう思っている?」
 「まぁ一応興味はありますね」
 「ふぅん。米国に4年間留学するのって幾らくらいかかるの?」
 「学費と生活費で2000万円くらいじゃないですか」
 そう言うと、彼は何の躊躇いもなくこう返してきました。
 「それ全額出してあげるからさ、米国行ってきなよ」

留学前、10代後半の道脇氏。この頃から午後の紅茶が好きで、ひたすら飲んでいたという。

 さすがにこれは驚きました。アッちゃんは僕よりずっと年上ですが、普段から僕の思想の良き理解者であり「心の友」のような存在でした。歴史や未来社会の話、資本主義構造の話、数学や自然の原理についての話など、あらゆる僕の話に耳を傾けてくれ、朝までとことん付き合ってくれました。

 僕からしたら夢にも思っていない提案です。買ってもいない宝くじに当たったような感覚でした。その一方で、海外の大学といえども僕の性分からして4年間も学校に通うのは無理だと、何となく分かっていました。せいぜい長くても1年かなと。

 「裕なら、将来世の中に対して何万倍にして返してくれるから、僕には返済しなくていいから」と言って頂きましたが、アッちゃんは決して資産家ではありません。さすがに2000万円受け取るわけにもいかず、「じゃぁ4分の1で」ということで、500万円の留学資金を受け取り留学することを決めました。

いざ米国に留学するも・・・

 留学先はコロラド州の大学でした。日本人も少なく留学するにはいい場所だと勧められたためです。結論から申し上げますと、大学は5日で辞めました。英語の集中講座も聴講しつつ、色々な授業を受けてみたんですけど、とにかく退屈でどれも面白いと思えなかったんです。

 ただ、米国にはその後、半年ほど滞在していました。現地でしかできないことをしようと思い、日本と米国をネット経由で無料通話できるシステムを作って日本の友人と話したり、大学の先生や現地の研究者と仲良くなったりと、それなりに米国での生活は楽しかったです。ちなみに海外に行くのはこの時が初めてで、留学前はCDを聴いたり英語の新聞を見たりして勉強しました。自分ではそこそこできるつもりだったのですが、現地に着いて初めて訪れたスーパーマーケットのレジで「Plastic or paper?」が聞き取れずショックを受けたことを覚えています。愕然としながら、人は知ってることしか知れないんだと感じました。

米国では、知人宅のベースメント(地下室)に家賃を払い住んでいた。得意の料理を振舞っていたことも。

 確かビザが切れてしまうとかそんな理由で、帰国することになったと記憶しています。日本に帰ってきて、いの一番でアッちゃんの所に報告に行きました。

 「学校辞めて、“留学”から“遊学”に切り替え、現地でしかやれないことをやって来ました」
 「で、何日間通ったの?」
 「5日です」
 こう返すと、なぜか彼は大笑いしながら褒めるのでした。
 「ははは、裕らしいなぁ~」

 アッちゃんとは今でも親交があります。近年、僕の家の近くに引っ越して来て、プライベートスクールを立ち上げました。未就学児童から高校生までの教育に愛情と知的強靱性をもって注力しつつ、私立学校のコンサル業務をするなどして教育改革に尽くしています。仕事帰りに会って飲んだり、アッちゃんが奏でるライブコンサートに行ったりと、今でもとことん語り合う「心の友」のままです。

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著者プロフィール

齊藤 美保

齊藤 美保

日経ビジネス記者

2011年中央大学法学部卒業。同年、日本経済新聞社に入社。産業部にて電機、IT、自動車業界を担当した後に、2014年3月から日経ビジネス編集部に出向。精密業界を中心に製造業全般を担当する。

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