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【128】シマジは20歳のときに1年間引きこもりを経験した(後編)

2016年1月16日(土)

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前編から続く)

ミツハシ それにしても、シマジさんに引きこもりの1年があったとは驚きです。20歳のときということは、青山学院大学の学生時代ですね。

シマジ 一浪して青学に入り、二、三度登校したきり、暗いトンネルの中に入り込んでしまったんだ。そんなだから、当然、落第して一留することになった。孤独で苦しい日々だったよ。

そんな頃に、T.S.エリオットの詩「荒地」に巡り合ったんだ。「四月は残酷な季節である」で始まるあの有名な詩だ。ミツハシ、「四月は残酷な季節」といっても花粉症のことではないぞ。

ミツハシ 分かっています。

人生の中で一度はかかるハシカみたいなもんだよ

シマジ 俺は花粉症という言葉がそれほど世間に知られていなかった29年前、41歳の春にゴルフ場で突然スギ花粉症を発症したんだ。それ以降、4月は残酷な季節になってしまった。いまは2月から薬を飲んでいるので症状はかなり抑えられているが、やはり花粉の季節は憂鬱だな。

 それはそれとして、相談者の悩みを読んで、20歳当時に何度も繰り返し読んだエリオットの「荒地」の第一部“THE BURIAL OF THE DEAD”が頭に浮かんだ。死んだ土地からリラの花を咲かせ、精気なき根を春の雨で奮い立たせる。それは残酷なことなんだよ。逃避とはしゃがみ込む時間のことを言うのかもしれないね。人生を疑う瞬間と言ってもいいだろう。そう考えると、無知と健康こそが幸せなのかもしれない。そこにはもちろん知る悲しみなんてものはないがね。

ミツハシ シマジさん、新年早々遠い目をしないでください。それにしても、一体何が原因でそんな状態になったんですか。

シマジ 何があったということではないんだ。生きていることに失望してしまったとしか言いようがなくてね。これがもう少し深刻だったら、俺は自殺していたかもしれない。重症、軽症の違いはあれ、すべての人が人生の中で一度はかかるハシカみたいなもんだよ。人間として成長していく途上に待っている試練だね。人生は生きるに値するものなのかということに懐疑的になり、自分を見失ってしまう。こういうのはなるべく若いときにかかってしまった方が軽くて済む。相談者もハシカじゃないかな。

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「【128】シマジは20歳のときに1年間引きこもりを経験した(後編)」の著者

島地 勝彦

島地 勝彦(しまじ・かつひこ)

コラムニスト

「週刊プレイボーイ」の編集長として同誌を100万部雑誌に。各誌編集長を歴任後、2008年11月集英社インターナショナル社長を退き、現在はコラムニスト。シガーとシングルモルトとゴルフをこよなく愛する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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