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21歳の辞世ブログが暴いた中国医療の暗部

がん発症の大学生、ニセ病院とウソ広告に翻弄された悲劇

2016年5月13日(金)

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 中国の医療は“看病難、看病貴(診療を受けるのは難しく、受けられても医療費が高い)”と言われて久しく、ただでさえも悪評ふんぷんだが、その医療体制を根底から揺り動かす驚くべき事実が明らかになった。それはがんで死亡した21歳の大学生が死の直前にスマホのメッセージアプリ“微信(WeChat)”に書き込んだ、病魔と闘う経緯を記した文章が引き金となったものだった。

がんとの戦い、武警第二医院に託す

 “魏則西”は陝西省“西安市”にある“西安電子科技大学”の“計算機学院(コンピューター学部)”の学生であった。彼は大学2年生の時に行われた“体格検査(健康診断)”で異常が発見され、精密検査を受けた結果、がんの一種である滑膜肉腫の晩期であることが判明した。滑膜肉腫は悪性軟部腫瘍であり、新たな技術開発や臨床実験中の技術を除いて有効な治療方法が発見されていない難病である。将来の希望に燃えていた魏則西にとって、これは正に青天の霹靂であったが、彼の両親にとっても寝耳に水の出来事だった。大事な1人息子を凶悪な病魔に侵されて、両親は悲しみに打ちひしがれた。

 晩期であっても治療方法は必ずあるはずだ。そう考えた両親は魏則西を連れて北京、上海、広州など各地の医院を訪ね歩いたが、どの医院も治癒の可能性に否定的だった。最早この病気から逃れる術はないのか。思いあぐねた魏則西はその治療方法についてインターネットの活用を思い付き、2014年3月30日に中国最大の検索エンジン「百度(バイドゥ)」で滑膜肉腫の治療方法を検索してみた。その検索結果の第1位にランクされたのは「武装警察北京総隊第二医院」(以下「武警第二院」)の生物免疫療法だった。この旨を両親に告げると、両親は即座に武警第二院へ電話を入れて面談の約束を取り付けると、大急ぎで北京へ向かった。

 北京に到着した両親は、武警第二院で「“生物診療中心(センター)”」主任医師の“李志亮”と面談した。両親は息子が滑膜肉腫の晩期であることを告げて、何としても生物免疫療法で治癒して欲しいと述べると、李志亮は両親に次のように語った。すなわち、生物免疫療法は米国のスタンフォード大学が研究開発したもので、滑膜肉腫に対する有効確率は80~90%に達しているので、息子さんの命を20年間保証することは何も問題がない。

 これを聞いて安堵した両親が李志亮について調べてみると、李志亮は“中央電視台(中央テレビ)”の番組で何度も紹介されているし、武警第二院は“三甲医院(最上ランクの医院)”であった。さらに、武警第二院の生物免疫療法は百度の検索結果で第1位にランクされていたこともあり、信頼に足ると判断できたことから、両親は魏則西の治療を武警第二医院に委ねることを決断したのだった。

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「21歳の辞世ブログが暴いた中国医療の暗部」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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