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西洋格闘技に20秒で惨敗した中国伝統武術の現実

「伝統武術はどれも詐欺だ」…勝者の挑発、真の意味は

2017年5月12日(金)

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(Barcroft Media/Getty Images)

 4月27日に四川省“成都市”のある“武館(武術道場)”で“格闘狂人”こと“徐暁冬”と“太極大師”こと“雷雷”の“約架(決闘)”試合が公開で行われた。38歳の徐暁冬は中国伝統の格闘技“散打(さんだ)”出身で、自称「中国総合格闘技(MMA:Mixed Marshal Art)の第一人者」。これに対して雷雷は、公称42歳、本名は“魏雷”、“陳家太極拳”と共に太極拳の双璧をなす“楊氏太極拳”の継承者であると自称し、自ら興した流派“雷公太極拳”の創始者である。2人の対決は、太極拳を含む中国伝統武術と西洋格闘技の雌雄を決する一大イベントとして注目を集めた。

 成都市は雷雷の居住地で、北京市を本拠とする徐暁冬は飛行機で成都入りした。半ズボンにサンダル履きで試合会場入りした徐暁冬は、黒色で両肩に赤色を配した半袖シャツと黒色の半ズボンに着替え、赤色の運動靴を履いて入場した。一方の雷雷は、白色の“太極拳服”に黒色の“太極褲(パンツ)”を履き、伝統的な格式を備えている風情を漂わせ、右手の掌で2個の胡桃(くるみ)を擦り合わせながら威風堂々と入場した。入場した雷雷は用意した“功夫茶(中国茶道)”のお茶を決まり通りの小さな茶碗で飲み、自分が太極拳の達人であるということを所作で示そうと懸命の演出を試みていた。

 2人が入場すると、司会者が両者の名前を呼び上げて2人を観客たちに紹介し、それに続いてレフリーが紹介された。レフリーは2人を呼んでルールを説明し、それが終わると2人は握手を交わした後に離れて対峙し、レフリーの試合開始の合図を待った。会場には格闘技の試合で使われる常設のロープを張ったリングはあったが、太極拳に敬意を表した徐暁冬が譲歩してリングを使わず、リング横に格子柄のマットを敷いた床が試合場となった。

最初のジャブから血まみれKOまで、わずか10秒

 レフリーが試合開始を宣言すると、徐暁冬は両拳をボクシングスタイルに構え、雷雷は両手の5本の指を軽く開き、右手を下段、左手を上段に構えて相対した。観衆が固唾を呑んで見守る中、両者はにらみ合いながら試合場を左回りに一周した後、徐暁冬が先制の左ジャブを打ち込み、雷雷がこれを避けようとした刹那、徐暁冬の右フックが雷雷の左顔面に炸裂した。雷雷はパンチを食らって茫然自失となり、この機を捉えた徐暁冬が一気呵成にパンチを浴びせて攻め込むと、雷雷は横向きに倒れ込んだ。徐暁冬は倒れた雷雷の頭部にパンチを連打し、雷雷は身動きできず、レフリーが試合の中断を宣言した。試合開始から試合中断までわずか20秒、徐暁冬の圧勝であり、雷雷は完膚なきまでに打ち負かされた。

 試合中断により立ち上がった雷雷は血まみれの顔面をタオルで拭いながら、苦痛に顔をしかめて立ちすくんでいた。その後、レフリーから試合を再開するかと問われた雷雷は再開を断念する旨を表明し、徐暁冬の勝利が確定した。レフリーを真ん中に右に徐暁冬、左に雷雷が並び、レフリーは徐暁冬の右手を挙げて徐暁冬の勝利を宣言した。徐暁冬が最初のジャブを放ってから、レフリーが試合の中断を宣告するまではわずか10秒だった。それが中国伝統武術と西洋格闘技の雌雄を決する一大イベントの結果であった。「大山鳴動して鼠一匹」とはこのことか、実に呆気ない幕切れだった。

コメント30件コメント/レビュー

民主主義のない中国の武術団体が集金マシンであることは自明で、それを守るために幹部が慌てて権威失墜を阻止しようとするのは当然の行動。本物なんてないだろう。だから、どんなものでも本物が現れると必死に否定して自己の正当性をわめき散らす。共産党の正当性も同様。(2017/08/14 13:51)

「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」のバックナンバー

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「西洋格闘技に20秒で惨敗した中国伝統武術の現実」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

民主主義のない中国の武術団体が集金マシンであることは自明で、それを守るために幹部が慌てて権威失墜を阻止しようとするのは当然の行動。本物なんてないだろう。だから、どんなものでも本物が現れると必死に否定して自己の正当性をわめき散らす。共産党の正当性も同様。(2017/08/14 13:51)

柔道は剣術に勝てない、と聞いてます。棒切れ一本あれば剣士は強い。ボクシングの腕も同じことでは?拳法の技に高速顔面ストレートをよける技はないと思う。つまり、分野が違うだけ。打ちのめせば強い!ということなら雷雷さんの負け。伝統武術のよさは、打ちのめすことだけにあるのではないし、そんな武術なら老若男女が楽しんではいないでしょう。何より、武術は美しいです。(2017/05/22 15:03)

コメントを見ていると、日本には格闘技好きが多いことがわかります。今ある格闘術の多くはショーとして見せるか。スポーツとして楽しむためのものです。そうしないと、教える人(師範?)が収入を得ることができず生活できないからです。この記事で紹介された例も同じだと思います。権力を背景に肩書を得て弟子を集めるか、実際に戦って勝つことで、自らの強さをアピールして弟子を集めるかの違いです。まあ、どうせ教わるなら、肩書より実績のある人の方がよいと考える人が多いとは思います。
△コメント欄で殺人技を継承しているかの議論がありますが、私個人は、まだ生き残っている人はいるのではないかと思います。ただ、継承者が居る可能性は低いです。それは先に述べたように収入が得られないからです。銃などの飛び道具による戦争が一般的になる前は、殺人技は戦士として有用だったので、それを身に着けようとという人も多かったと思われます。しかし、今は、ショーとして見せる以外役に立ちません。ショーとして見せるには派手さが必要ですが、沢山コメントにあるように、実用的なものは地味なはずです。そちらの方が有利ですから。名前は忘れましたが、昔まったく人気がなかったすごく強いプロレスラーが居たそうです。なぜ人気がないかというと、関節技が得意だったからです。関節技は戦いでは強力ですが、見た目は地味そのもの、なぜ相手がギブアップしたかわからないこともあると思います。それではショーにはなりません。
△本当は、伝統的な殺人技の特徴を研究して、今のスポーツ、柔道やレスリングに取り入れることができれば選手強化には役立つのですが、日本のスポーツ界は頭まで筋肉な人が出世することが多いので、あまり望みはないですね。
△一つ補足、殺人技が打撃系という発想は、ボクシングやK-1などショーとしての格闘技に影響された結果だと思います。実際の戦争では、相手を行動不能にして(ここまでが秘技ですかね)、とどめは刃物というのが一般的だったと思います。(2017/05/17 21:45)

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