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北京大学卒業式・張維迎講演はなぜ削除されたか

SNSから即座に消えた「自由は一種の責任である」

2017年7月21日(金)

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7月1日、北京大学卒業式で行われた張維迎教授の講演は、SNSにアップされるや即座に削除された。写真は2011年のダボス会議に出席した張氏(写真:AP/アフロ)

 7月13日、2010年にノーベル平和賞を獄中で受賞した“劉暁波”氏が多臓器不全により亡くなった。劉暁波は2009年12月に“扇動顛覆国家政権罪(国家政権転覆扇動罪)”により懲役11年の判決を受け、遼寧省“錦州市”の“錦州監獄”で服役していた。彼は今年5月に発病したので検査した結果、肝臓がんの末期であることが判明し、特別措置により6月末に遼寧省瀋陽市の“中国医科大学附属第一医院”へ移送されて治療を受けていた。

 劉暁波は2008年に中国に大幅な民主化を求める『“零八憲章(2008年憲章)”』を主体となって起草したことで逮捕され、人生で4回目となる監獄生活を送っていたのだった。劉暁波が零八憲章で提起したのは「自由、人権、平等、共和、民主、憲政」の基本理念であったが、その中で最も重視したのは自由であった。そこには言論、出版、信仰、集会、結社などの自由が含まれていた。

 劉暁波の死亡より12日前の7月1日、中国を代表する“北京大学”で学部に相当する“国家発展研究学院”の卒業式が“北京大学百周年記念講堂”で行われ、教員を代表して著名な経済学者である教授の“張維迎”<注>が「自由は一種の責任である」と題する講演を行った。この内容が国家発展研究学院のSNS“微信(WeChat)”に掲載されると、即座に当局によって削除されたのだった。微信から講演内容が削除された理由は何だったのか。そこには真の愛国者である劉暁波が一貫して主張していた自由の必要性が、経済学者の視点から述べられていたのだった。

<注>張維迎:1959年に陝西省で生まれる。中国の“西北大学”卒業後、修士課程に進み、英国オックスフォード大学で博士号取得。北京大学教授、経済学者。

 14分44秒に及ぶ同講演の模様は、動画サイト「YouTube」でも『“張維迎演講:自由是一種責任”』という題名で配信されているが、非常に興味深い内容を含むので、筆者の翻訳で以下の通り紹介する。

張維迎演講:自由是一種責任

演題:自由は一種の責任である (講演者:張維迎)

 学生諸君 先ず皆さんの卒業をお祝いします。

 “北大人(北京大学人)”は一種の光背であると同時に責任を意味します。それは特に我々のように苦難が深刻で、いやというほど蹂躙された民族に対する責任です。中華文明は世界最古の文明の一つであり、しかも唯一現在まで継続している古い歴史を持つ文明です。古代中国は輝ける発明創造を持ち、人類の進歩のために重要な貢献を行いました。しかし、過去500年、中国は発明創造の分野で取り立てて言うほどの物は何もありません。この点を数字で説明しましょう。

 英国科学博物館の学者ジャック・チャロナーの統計によれば、旧石器時代(250万年前)から紀元2008年までの間に世界を変えた重大発明は1001項目生まれたが、その中で中国が産み出したものは30項目で、全体に占める比率は3%でした。こられ30項目の全てが1500年より前に生まれたもので、1500年より前に世界で生まれた重大発明163項目の18.4%を占めました。その中の最後の1項目が1498年に発明された“牙刷(歯ブラシ)”であり、明代で唯一の重大発明だったのです。1500年から後の500年以上の期間に全世界で生まれた838項目の重大発明の中に中国で生まれたものは1項目も無かったのです。

コメント20件コメント/レビュー

翻訳ありがとうございました。
以前にメリーランド州のカレッジパークで中国人留学生が自由礼賛の内容で卒業スピーチをして、大きく叩かれていましたが、国内で声を上げるのはより勇気と、国を変えていきたいという思いがあってのことだと思います。
言論統制という抑圧の中でも、人の根本的な想像力や思想力を掻き立てていただけたのは、大学卒業生にとっては後々に残る心の宝となるのではと感じました。
日本はある意味全面的には自由ですが、飽和状態とでも言いますか、無制限が無気力を増産してしまったような気がします。即逮捕、即弾圧のような強制力のある統治はもちろん成長を阻むものですが、ある程度の圧力はあっても良いと思いました。
有りすぎる自由は逆に想像力、思想力を阻害してしまうと。
共産主義も民主主義にも長所短所があると思います。
中国は今はまだどうにか国民を統制できていますが、政府への批判が決壊しないとは言い切れませんので、国民に納得のいく妥協点を提示しなければ、昨今の中東のようになっていくのでは。世界に見られる種々の民主主義を照らし合わせて、13億人に合った、中国の強みを活かせる社会になってもらえたらと、淡い期待を抱いております。
若輩者ですがコメントさせていただきました。(2017/09/14 11:37)

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「北京大学卒業式・張維迎講演はなぜ削除されたか」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

翻訳ありがとうございました。
以前にメリーランド州のカレッジパークで中国人留学生が自由礼賛の内容で卒業スピーチをして、大きく叩かれていましたが、国内で声を上げるのはより勇気と、国を変えていきたいという思いがあってのことだと思います。
言論統制という抑圧の中でも、人の根本的な想像力や思想力を掻き立てていただけたのは、大学卒業生にとっては後々に残る心の宝となるのではと感じました。
日本はある意味全面的には自由ですが、飽和状態とでも言いますか、無制限が無気力を増産してしまったような気がします。即逮捕、即弾圧のような強制力のある統治はもちろん成長を阻むものですが、ある程度の圧力はあっても良いと思いました。
有りすぎる自由は逆に想像力、思想力を阻害してしまうと。
共産主義も民主主義にも長所短所があると思います。
中国は今はまだどうにか国民を統制できていますが、政府への批判が決壊しないとは言い切れませんので、国民に納得のいく妥協点を提示しなければ、昨今の中東のようになっていくのでは。世界に見られる種々の民主主義を照らし合わせて、13億人に合った、中国の強みを活かせる社会になってもらえたらと、淡い期待を抱いております。
若輩者ですがコメントさせていただきました。(2017/09/14 11:37)

「自由」という意味が果たして正しく伝わるのか?
勝手気ままに振舞うことを自由と履き違えている輩が非常に多い国ですし。

翻って日本は大丈夫か?という点も含め、妙に不安になる講演内容ですね。(2017/07/27 12:38)

張氏が述べた内容は全部正しいかどうかは別として、
こんなにロジック混乱、結論が成り立たない内容が「素晴らしい」、「正論だ」、「熱い」と
皆に認識されることに不思議しか思いません。

考えられる理由は2つ。
1、大人ですが、自分で物事を考える能力が不健全だ。
2、歴史に対する認識が薄っぺら、複雑な中国に対する認識が薄っぺら。

以上(2017/07/22 10:32)

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三品 和広 神戸大学教授