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なぜ母親は我が子4人を殺し、服毒自殺したのか

「経済大国」誇る中国、貧困人口2億人の現実

2016年9月23日(金)

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 黄河上流に位置する甘粛省は、2014年の「一級行政区別域内総生産(GRP)ランキング」で全国31省・自治区・直轄市中の第27位にランクされ、そのGRP(0.68兆元≒10.5兆円)は第1位の広東省(6.8兆元≒105兆円)に比べて10分の1に過ぎない。また、2014年の「一級行政区別1人当たりGRPランキング」では、甘粛省は2万6427元(約4万1000円)で最下位の貴州省(2万6393元)を辛うじて上回る30位だった。

 2016年5月11日付で国営の「新華通信社」が報じたところによれば、甘粛省の86の県(市及び区を含む)には、58の貧困地区が集中する県と17の貧困地区が入り混じる県があり、2014年末には依然として417万人の貧困人口が存在しているという。一方、中国政府“国務院”の「貧困扶助開発指導グループ弁公室」が認定している「国家認定貧困県」は、2015年時点で全国に592か所あり、そのうち甘粛省の貧困県は43か所であるという。

 国家認定貧困県の一つである“康楽県”は、甘粛省中南部に位置する“臨夏回族自治州”の管轄下にある。“康楽県”は風光明媚な観光地の“蓮花山”が所在することで知られ、“黄土高原”と“青蔵高原”の境界に位置し、平均して海抜2000mの平坦な土地に23万人が暮らしている。康楽県に属する“景古鎮”は県庁所在地から30kmの距離にあり、1.5万人の人口のうち95%以上が農業に従事する寒村である。

貧困が招いた惨劇

 さて、2016年8月26日にその景古鎮にある“阿姑山村”で、貧困を苦にした母親が腹を痛めた我が子4人を殺害した後に自殺するという悲惨な事件が発生した。この事件は中国社会を驚かせると同時に、中国政府が推進する貧困扶助事業の在り方に大きな波紋を投げかけた。中国メディアが報じた事件の概要を取りまとめると以下の通り。

【1】阿姑山村は全村で191戸の農家で構成されている。事件の現場となった「老斧湾地区」には25戸の農家があり、彼らは木々が生い茂る“阿姑山”の麓に分散して住んでいる。事件を起こした“楊改蘭”の家は四世代8人家族で、その構成は、楊改蘭の祖母の“楊蘭芳”、父親の“楊満堂”、楊改蘭とその夫の“李克英”、そして彼ら夫婦の子供4人であった。事件当日の8月26日には、一家8人のうち李克英だけが近くの土地へ出稼ぎに行っていて不在だった。

【2】8月26日、阿姑山村の老斧湾地区では初秋の青空の下で、いつもと変わらぬ暮らしが営まれていた。その日の午後、楊改蘭が遅い昼食の準備に追われている間、4人の子供たちは家の中庭で遊んでいたし、70歳の楊蘭芳はひさしの下で日光を浴びていた。父親の楊満堂だけが1人で耕作用の牛を連れて、さほど遠くない所にある畑へ土地を耕しに行っていた。午後4時頃に昼食を食べ終わると、楊改蘭は4人の子供を連れて山へ羊の放牧に行くと言って家を出た。

【3】しばらくすると、楊満堂が畑仕事を終えて牛を連れて戻り、娘の楊改蘭が準備した食事を食べた。2杯のお茶を飲み終えた楊満堂は、母親の楊蘭芳に家の牛に水を飲ませたかと尋ねたが、「未だ」という答えを聞くと、牛を連れて水飲み場へ向かった。彼らの家では耕作用の牛の他に、2頭の肉牛を飼育していた。牛の水飲み場までは少し距離があり、牛は引っぱっても歩かないので、牛を後ろから追い立てながら、楊満堂は娘の楊改蘭を探しに山の中へ入って行った。この頃、楊蘭芳も彼女の収入の糧である豚に餌を与えるために立ち上がった。それから間もなくして、楊満堂が大声で叫びながら家へ駆け戻って来た。「大変だ。改蘭と子供たちが路上に倒れている。早く来てくれ」。驚いた楊蘭芳はすぐに身を起こすと、楊満堂に続いて現場への道を急いだ。

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「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」のバックナンバー

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「なぜ母親は我が子4人を殺し、服毒自殺したのか」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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