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プライシングを武器にできているかを問い直せ

「値決めは経営」と京セラの稲盛名誉会長も説いたその重要性

2015年11月12日(木)

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 中国経済の失速を発端として、世界の経済や市場に負の連鎖が広がった2015年。チャイナリスクはさらに強まり、混乱が拡大するのか。それとも歯止めがかかり、好転していくのか。安倍晋三政権が新たに打ち出した「新3本の矢」を軸とするアベノミクス第2幕の成否は…。

 不透明感が一段と増す中、来る2016年にスタートダッシュを決めるためにどのようなトレンドを押さえておけばよいのか。ボストン コンサルティング グループを代表するコンサルタントたちが「水先案内人」として4つのトピックスを挙げ、留意すべきポイントを解説する。今回は、日本企業の間ではこれまで決して関心が高いとは言えなかったプライシング(価格戦略)を広くとらえ直し、それを実践する上でのチェックポイントを詳しく解説する。

 過去20年間、日本企業の企業価値向上は徹底したコスト構造改善によるスリム化から、新興国市場開拓による成長の取り込み、海外を中心としたM&A(合併・買収)による非連続な成長へと力点をシフトさせてきた。一方でプライシング(価格戦略)は売り上げ拡大・利益率向上の両面で企業価値向上の大きなドライバーとなり得るにもかかわらず、長く続いたデフレ環境下で日本企業の関心が十分に高まらなかった領域であると言える。

 京セラ名誉会長で、日本航空(JAL)再生にも尽力された稲盛和夫氏は、「値決めは経営」とされ、著書『稲盛和夫の実学―経営と会計』(日経ビジネス人文庫)の中で、プライシングの大切さ、難しさについて次のように語っている。

 値決めはたんに売るため、注文を取るためという営業だけの問題ではなく、経営の死命を決する問題である。売り手にも買い手にも満足を与える値でなければならず、最終的には経営者が判断するべき、大変重要な仕事なのである。(中略) お客様が納得して、喜んで買ってくれる最大限の値段。それより低かったらいくらでも注文はとれるが、それ以上高ければ注文が逃げるという、このギリギリの一点で注文を取るようにしなければならない。

 2013年4月の量的緩和の導入以降、デフレ一色だった国内市場の景色は徐々に変わりつつある。今年8月の消費者物価指数は生鮮食品を除く総合指数が2年4カ月ぶりにマイナスに転じたものの、この間に企業側の値上げに対する抵抗感は小さくなっているように見える。2016年からの数年は日本企業がより主体的にプライシングに取り組む転換期になるのではないか。既に欧米企業は過去10年間、プライシングに関わる組織能力(人材・ガバナンス・IT)への投資を続けており、グローバルの競合と伍するためにも自社のプライシングを見直すことは急務である。

 一方で、安易な値上げや値下げで中長期の競争力を失った企業の例も数多く存在する。プライシングは企業価値向上の重要なレバーだが、ひとつ間違えると事業を危機に陥らせかねない。こんな恐怖心が「価格は安易に変えることはできない」「自分たちには価格コントロールの余地がない」という保守的な姿勢につながっているケースも依然多いのではないだろうか。

プライシング(価格戦略)を狭く捉えてはいないか

 そもそもプライシングと言うと、個別商品の店頭価格見直しや、法人顧客に対する値引き率のバラツキ是正などのイメージが強いが、これらはプライシングの構成要素の一部でしかない。中長期的な収益力を高め、大きな価値を創出するにはもっと広い視野でプライシングをとらえる必要がある。ボストン コンサルティング グループ(BCG)では、プライシングを検討する際には(1)戦略目標(2)課金モデル(3)価格設定・コントロール(4)組織能力──という4つの階層を一貫して検討するのが原則だと考えている。

 企業が最初に考えるべきは戦略目標である。個々の商品・サービスにどのような価格を設定するかを考える前に、プライシングを通じて達成したい事業の戦略目標を明確にすることが肝要だ。収益性向上か、市場シェア拡大か。新規顧客獲得か、既存顧客のロックインか。新興チャネルでのプレゼンス拡大か、既存チャネルとの関係維持か。プライシングの目標、方向性を定める必要がある。

 長期の戦略目標に沿ったプライシングを行う企業の一例は、米アマゾン・ドット・コムである。Eコマースのナンバーワン企業でありながら、過去数年にわたり営業利益率1%台の利益水準にとどまっているのは、短期の収益性とは異なる、長期の戦略目標を実現するために価格を設定し続けている結果とも言える。

 2つ目の構成要素は戦略目標を実現するための課金モデルである。飲食店であればコース料理・アラカルト・飲み放題・個室料・サービス料などの選択肢がある。法人向けソフトウェアを開発する企業であれば、ソフトウエアをクラウド経由で提供して、販売・ライセンス・必要な機能を必要な分だけ利用できるようにする、「ソフトウエア・アズ・ア・サービス(SaaS)」などの選択肢があるし、ライセンスの中でも固定フィー・アカウント数連動・一定のアカウント数までは定額とする階段状の課金モデルなどが選択可能だ。

 3つ目の構成要素が価格設定・コントロールで、一般的にプライシングという言葉でイメージされる領域である。価格設定にはいくつかの段階があり、原価に一定のマージンを乗せた「コストプラス」、顧客のスイッチングコストまで勘案した「バリュープライシング」、航空業界などで採用される、需要と供給のバランスをリアルタイムに反映する「ダイナミックプライシング」まで、商品・サービスの特性と企業側のプライシング習熟度によって様々な手法が存在する。

 最後に、プライシングを定期的に見直し、確実に実行するための組織能力が非常に重要となる。組織能力の中にはプライシングの司令塔となるチーム・人材、データ収集・分析を可能にするIT(情報技術)システム、価格決定プロセス、営業職員のインセンティブとのひも付けなどが含まれる。

 この連載の第3回目(本格化する顧客接点革命)でも触れたが、既存の小売企業が店舗ビジネスとEコマースを統合したオムニチャネル戦略が注目を集めている。企業がこれに打って出る場合、従来と全く異なる組織能力を身に付ける必要がある。Eコマースで競争力を維持するには、価格変更の頻度も、収集すべきデータも大きく変わる上に、収益構造も競争相手も全く異なる2つの販売チャネルの価格設定を意思決定するメカニズムも導入する必要がある。

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「プライシングを武器にできているかを問い直せ」の著者

服部 奨

服部 奨(はっとり・すすむ)

BCG パートナー

産業財 、ハイテク・通信、消費財などの業界を中心に、価格戦略、グローバル化戦略 、M&A支援などのプロジェクトを数多く手掛ける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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