13人の著名経営者たちが語ってきた「俺の100年ヒット論」。連載の最後は、戦略ストーリーの権威、一橋大学の楠木建教授が、ロングセラーを生み出すために要諦を総括する。ヒット商品の誕生を阻む「脳内高度成長」とは?

一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。1964年生まれ。専門は競争戦略とイノベーション。『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)はベストセラーに。企業への助言も数多く手がける。(写真:陶山勉)
これまで、ロングセラー商品を持つ会社の経営トップの方々から、ロングセラーを育てるためには何をすべきか、という話を聞いてきました。これまでの話を踏まえて、改めて楠木先生にロングセラー商品を育てるということはどういうことなのか、お聞きしたいと思っています。
楠木:ロングセラーを育てるということは、どういうやり方を取るにしても、結局、問題の核心はその戦略の軸足がどこにあるのか、ということだと思います。これまでの連載で登場した事例の中で言えば、花王の「ソフィーナ」やカゴメの「野菜生活」などは、ある意味、ぜいたくな悩みとも言えます。
ぜいたくな悩み、ですか。
楠木:はい。つまり、それらはそもそも、過去にロングセラーとしてヒットしてきた商品であるという意味です。日清食品の「カップヌードル」も、その典型でしょう。そして、これまで話の多くは、ロングセラーであり続けるために、どのように商品を展開していくかという話です。新しいカテゴリーにずらしてみたり、コンビニをうまく活用してみたり。
しかし、多くの会社が今、直面している問題は、その1つ前の段階ではないでしょうか。つまり、そもそも商売のもとになるようなロングセラーが、ほとんどの場合ないのです。
そもそもあるヒット商品を生かす戦略の軸の取り方は、いろいろとある。カルビーの「じゃがりこ」みたいに、うまくコンビニを使っていくやり方もあれば、ネスレ日本の高岡社長のように少しコンビニとは距離を置いて、「キットカット ショコラトリー」のようにプレミアム化を進めるという手法もある。でもこれらは、既にもとの商品があって、その後の戦略です。
ですので、ここでは、そもそも何でそういうロングセラー商品が出てこないのかということを考えてみたいと思います。
よろしくお願いします。
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