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「京都ってインドみたいなところなんですね」

「美しい国だワクチン」を接種された日本人

2015年12月4日(金)

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カー:京都ではまったく無関心というか、無関心以下ですからね。「私たちの町並みは古くさいから壊したい」と、深層心理が働いていると僕は思っています。

清野:ウソでしょう。

カー:ウソだと思うなら、こういう写真を客観的に見てください。

三十三間堂と電線 ©Alex Kerr

清野:がーん。私の意識の中では、三十三間堂はすばらしい文化遺産であり、門の前にこんな汚い電線があるわけがない。

カー:そう、「あるわけがない」という思い込み。たとえ見ていたとしても、頭の中でフォトショップを働かせて、そこだけ消し去っているんですよ。僕が『ニッポン景観論』を書いた動機のひとつが、その「意識」に対するものですね。みんな「日本は美しい」という意識を頭の中に持っていて、現実を見ようとしていないんです。景観がヘンになっていることに気付いてない。

清野:確かに三十三間堂の印象から電線は抜け落ちていましたが、でも、ほかのヘンなところは気付いていますよ。花見小路では町並みが崩れる悲しい予兆を感じながら、歩いている人たちがヘンなことも目が付きました。たとえば着物を着た女の子たちがいっぱいいましたが、それが古い町並みに合っていないんです。着物そのものの質から始まって、柄の合わせ方、着方、歩き方、ふるまい方すべてがヘン。界隈の伝統を知る人だったら、絶対にあんな着方はしないだろう、と。

カー:観光用の“着物体験”なんじゃないですか。あれをやっているのは、外国人観光客がほとんどですけど。

「記号」があれば勝手に消費する

清野:そうやって「日本文化」がどんどん違うものとして消費されていく。でも、日本語をしゃべっている子たちも普通にいました。つまり日本女性です。あれ、自分たちの着物姿が作法からはずれていてヘンだ、と気付いてないんですかね。

カー:基本的に気付いていないでしょうね。景観に関しても同じ。「京都の古い町並み」という記号があれば、そこにやってきて勝手に消費する。それがヘンな方法でも平気。

 「アレックスさん、私は『ニッポン景観論』を読んで目から鱗が落ちましたよ!」と、僕のところに言ってくる人が大勢いるんですが、それはつまり、今まではまったく気付いていなかった、ということでしょう。

清野:そう言ってくるのは、日本人ですか。

カー:日本語の本ですから、外国人は読んでないですね。

清野:確かに。

カー:目から鱗が落ちた後は、少しは問題意識を持つかもしれませんが、それまでは「日本は美しい国なんだから」と本当に信じていたんですよ。その意識はワクチンみたいなもので、「日本は美しい国だワクチン」を接種されているから、どんなにひどい景観を見ても、感じなくなっている。

清野:免疫ができちゃっている。

カー:汚い景観に慣れてしまって、景色を見る時でも、「こっちはヘンな看板があるけれど、あっちの田んぼはきれいだ」というふうに脳の中で使い分けているんです。

 たとえばフランスやイタリアに行くでしょう。都会から田舎に向かって車で何時間走っても、景色はずっときれいなままです。でも日本に帰ってきたら、1分もたたないうちに、看板とか電線とか醜いものが目に入ってくる。僕はこのごろ電車で移動する時は、席についてすぐにブラインドを下ろすようにしています。10年前まではまだ残っていた「普通の」「何気ない」風景すら、今ではもうなくなってしまっていて、どこを見ても看板や、景色にそぐわない派手な建物がある。悲しい思いにとらわれてしまうんです。

コメント68件コメント/レビュー

京都に限った話ではなく、たとえば浅草なんかも似ているな、と思いました。浅草寺の仲見世通りには、ここ数年で、明らかに外国人観光客目当ての、安っぽい着物や扇子、和柄の雑貨、模造刀や「闘魂」等と書かれたはちまき、更には嘘くさい金ぴかの仏像まで並んでいる店が増えたように思います。

ただ、町並みの話に関しては、京都などの観光地は、観光地であると同時に、人々が生活している場でもあるわけで、そこに住んでいる人から見れば、自分たちが暮らしている町に、よそ者が大量に押し寄せてきた、となるのではないかと思います。観光地としての景観の美しさより、自分たちの生活の便を取った、更に、大量の迷惑な観光客から自分たちの生活を守るために、注意書きや看板を増やした、となれば、それを外部の人に文句を言われる筋合いはないと思います。誰しも、一時的な訪問者より自分の日々の生活のほうが大事です。便利な物が次々開発され、都会には高層ビルが立ち並ぶ中、古い建物が残っているだけマシだと思います。そういうところも含めて日本だし、そういうところに、ローカルの人々の生活を感じてもらえればいいのではないでしょうか。(2016/12/05 10:48)

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「「京都ってインドみたいなところなんですね」」の著者

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

京都に限った話ではなく、たとえば浅草なんかも似ているな、と思いました。浅草寺の仲見世通りには、ここ数年で、明らかに外国人観光客目当ての、安っぽい着物や扇子、和柄の雑貨、模造刀や「闘魂」等と書かれたはちまき、更には嘘くさい金ぴかの仏像まで並んでいる店が増えたように思います。

ただ、町並みの話に関しては、京都などの観光地は、観光地であると同時に、人々が生活している場でもあるわけで、そこに住んでいる人から見れば、自分たちが暮らしている町に、よそ者が大量に押し寄せてきた、となるのではないかと思います。観光地としての景観の美しさより、自分たちの生活の便を取った、更に、大量の迷惑な観光客から自分たちの生活を守るために、注意書きや看板を増やした、となれば、それを外部の人に文句を言われる筋合いはないと思います。誰しも、一時的な訪問者より自分の日々の生活のほうが大事です。便利な物が次々開発され、都会には高層ビルが立ち並ぶ中、古い建物が残っているだけマシだと思います。そういうところも含めて日本だし、そういうところに、ローカルの人々の生活を感じてもらえればいいのではないでしょうか。(2016/12/05 10:48)

日本の街並みの汚さは電線だけ取り払っても何とかなるレベルじゃない
建物そのものが無機的で安っぽいのが街並みが汚く思える最大の原因(2015/12/31 10:33)

私は科学者ですが、北欧の研究者がある時「俺は日本人の作ったパワーポイントの発表スライドはすぐに分かる」と言ってきました。私は興味を惹かれてどうしてだ?と聞くと、彼の答えは「色が多くてカオスになっている。何故そうなるか分かるか?あれは東京の街並みのカオスと同じなんだ」ということでした。あんたよく理解しているねえ、と感心したものです。つまりに日常的に電線が無神経に張り巡らせれ無秩序なコンクリートのビルを見ていると、それを見る人の美観の基準がそこに合わせられてしまうのだと私は考えています。

逆もしかりで、私の住んでいたオックスフォードの大学の建物は築500年を越えるものもあり重厚で壮大でした。教育機関にここまでお金を掛けるのか、と思いましたが、暮らしているうちに、こういう建物に囲まれていると立派な仕事をしなければいけない気持ちになってくるなと気が付きました。

実は日本の都市景観だけでなく、看板やポスターは勿論、出版物のデザイン、テレビ番組の画面のデザイン、ウェブデザイン、工業デザインなどでも、同じ傾向が出ているのではないかと思います。今、日本の顔であるはずの京都の公共交通機関は車内や駅など至る所が、「萌え少女」の大きなポスター(地下鉄自身の宣伝ポスター)で飾り立てられています。誰が京都の町に萌え少女を期待するのでしょう?私は知らないけど多分そういう方もおられるのでしょうね、きっと。しかし、あえて言いましょう。そこへ水準を合わせてはダメです。萌え少女を楽しみたい方は個人でどうぞ、しかし街なかへそれを持ち込む必要はありません。行政自身がこれですから、景観への意識の改革はまさに急務と言えるでしょう。(2015/12/18 10:15)

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