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東京は「20年前のバンコク」に近づけたか?

お金があるのに発想はプアなまま

2015年12月11日(金)

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「ニッポンの景観テクノロジーを世界へ」。ノートルダム大聖堂(改善案)。ノートルダム大聖堂は、そのままではさみしい眺めです。ですから「ご多幸」「ようこそ」で宗教的なムードを高めましょう。自動販売機も設置され、実に多幸です
©Alex Kerr

 この写真をご覧ください。

 アレックス・カーさんが著書『ニッポン景観論』(集英社新書)の中で使った、ノートルダム大聖堂に日本風の看板をモンタージュした写真です。

 添えられたキャプションのブラックユーモアに、思わず笑ってしまいます。

 ……しかし、笑った後にしみじみ悲しく、情けなくなりませんか。

 日本にはすばらしい歴史的遺産や文化が各地にあります。それらは21世紀の有望産業といわれる「観光業」を支える資源であり、世界に比肩する大いなる資産(レガシー)です。それなのに、現実ではこのモンタージュのような光景がいたるところで繰り広げられ、その価値を損なっています。

 アレックスさんのユーモラスで辛辣な視点から浮き彫りになる、日本の景観が抱える問題点とは何か。それに対する有効な処方箋とはどういうものか。日本の都市とコミュニティについて、多くの取材を手がけてきた清野由美さんが聞き手になって、それらを探っていきます。

清野由美(以下、清野):2014年に出版された、カリフォルニア大学バークレー校の経済学者、エンリコ・モレッティの『年収は「住むところ」で決まる』という本がベストセラーになりました。

アレックス・カー氏(以下、カー):どんな本ですか。

Alex Kerr(アレックス・カー)氏
東洋文化研究者、NPO法人「篪庵(ちいおり)トラスト」理事長
1952年米メリーランド州生まれ。12歳から2年間、父親の赴任に伴って横浜に住む。74年、イェール大学日本学部卒業。在学中に慶應義塾大学国際センターで日本語を研修。その後、オックスフォード大学ベーリオル・カレッジで中国学を修める。77年から京都府亀岡市に居を構え、書や古美術、日本の伝統芸能の研究に励む。90年代に米テキサスを本拠にする不動産ディベロッパー「トラメル・クロー」社日本代表を務め、2000年代に京町家を舞台にした滞在型の宿泊施設を運営する。その後、景観と古民家を核にした地域再生コンサルタンティングを手がけ、徳島県の祖谷、長崎県小値賀町、奈良県十津川村などで、古民家を滞在型宿泊施設に改修するプロジェクトをプロデュースする。亀岡(京都府)、祖谷(徳島県)、バンコク(タイ)の3カ所に拠点を持ち、世界中を回りながら、景観保存活動や講演、古美術品の収集、文化イベントのプロデュースなど多岐にわたる活動を行う。主著書に『美しき日本の残像』(朝日文庫、新潮学芸賞)、『犬と鬼』(講談社)、『ニッポン景観論』(集英社新書、不動産協会賞)など。(写真:楠本 涼)

清野:例えば今のアメリカでは、デトロイトにいる大学卒の人よりも、シアトルにいる高校卒の人の方が年収が高い、という状況があるということで、それを都市経済、地域経済、労働経済学的に読み解いた本です。要するに産業のイノベーションが起こると、その震源地では全体が経済的に底上げされる、ということですね。

 デトロイトは前世紀に自動車産業で儲かった都市なわけですが、その自動車産業の空洞化とともに街全体が荒れてしまった。一方、前世紀にさびれた一地方に過ぎなかったシアトルは、IT産業の興隆とともに、各地から人が集まって、スターバックスコーヒーなど新手の飲食チェーンも誕生した。その結果、街全体が活気を取り戻して、魅力的な場所になった。

カー:ああ、それはよく分かりますね。時代に合った産業を育成できれば、その周辺で飲食業やほかのサービス業も一緒に育っていく。全部、影響を受けます。

清野:それはまさしく、アレックスさんがおっしゃる「観光業のイノベーション(革新)」じゃないですか。

「AからB」の「から」の部分を豊かにすべき

カー:そうなんです。そういう波及効果は必ずあります。

清野:その波及の原理を理解できれば、名所Aと名所Bをスポット的な観光名所にするのではなく、AからBに移動する過程もよくしましょうよ、となっていきますよね。

カー:「AからB」の「から」の部分を豊かにする余地は、日本にたくさんあると思いますね。というか、そこが日本の大きな課題なんです。

清野:アレックスさんが観光業の有望性を感じ始めたのは、何年前からなんでしょうか。

カー:今よりもずっと前です。それこそ『犬と鬼』(2002年)を書くよりも前ですから、20年以上前ですかね。1990年代の日本って、「失われた10年」と呼ばれていたでしょう。でも、世界に目を向けると、先進国は観光でちゃんと潤っていたんですよ。先進国どころか、発展途上の国だって、観光に知恵と資金を投入していました。

 20年ほど前のある日、バンコクのオリエンタルホテル(現マンダリン・オリエンタル・バンコク)で知人と待ち合わせをした時のことは、今でもすごくよく覚えていますよ。

清野:どんな光景だったのでしょうか。

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「東京は「20年前のバンコク」に近づけたか?」の著者

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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